裏ビーストテイマー・ナタ69
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サルバドールは無言で朝食のパンをかじっていました。目は虚ろで焦点が合わず、どこを見ているのかわかりません。

 

「可哀想に…。母親が死ぬところを見てしまって心を閉ざしてしまったようですね」

 

「この子、すごく可愛いから、うちの子にしちゃう?」

 

「サルバドールを養子縁組なさるのですか?」

 

「だって身寄りがないんでしょ?こんな可愛い男の子が欲しかったの」

 

「本人の意思を確認してみないと…」

 

「サルバドール、うちの子になりたい?」

 

サルバドールはコクリと頷きました。

 

「ナターシャ様に懐いてるようですね。私にはどうしても懐いてくれないですが…」

 

「決まりね!養子縁組の書類もらってくるー」

 

フラウの耳にもリズが亡くなった事はすぐに入りました。フラウはあまりアラヴェスタ・タイムスには目を通さないのですが、幹部の者から報告があったからです。

 

「リズさんが亡くなったなんて…。テオドールがゲイザー様の命と引き換えに守った命だと言うのに」

 

「アーク様がリズの息子であるサルバドールを引き取ったようです。事件後、養子縁組されたとの報告をアラヴェスタ幹部の方から受けました」

 

「はぁ…、どんどん人が亡くなって行くわね。ゲイザー様がおられた頃はこんな事はなかったのだけど…」

 

「あれからどんどん歯車が狂って行きました。ゲイザー様がもし生きておられたら、どうなっていたのでしょうか…」

 

「この世界にはもうゲイザー様は戻って来ないわ。別の世界で生きておられるとは思うのだけど、その世界は平和でしょうね」

 

フォンに呼び出されて、アークは謁見の間に来ていました。フォンはアークの姿を見るなり、眉を顰めています。純白だった翼の色が漆黒に染まっていたからです。

 

「その翼はどうした?」

 

「レジスタンスのアジトを襲撃した際に返り血を浴びてしまいまして、血染めの翼が変色してしまいました…」

 

「やはりあれはお前がやった事だったのか…」

 

「申し訳ありません!リズの説得は上手くいったのですが…レジスタンスの者がリズを手にかけて…」

 

「あまりにも悲惨な現場を見て、アラヴェスタ騎士団の者が震え上がっておる。お前がやった事は隠しておくように」

 

…つづく

説明
本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第69話。
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