魔術士オーフェン異世界編J〜精霊魔術の脅威〜
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病室からの外出許可が出たキリランシェロは、久しぶりに機動六課の男性寮にある自室に向かおうと歩みを進めていると―――

「ん・・・?なんだろう、あれ」

男性寮の入り口を遠巻きに囲んで、戦闘・非戦闘員たちが何やらざわめいている。その中に見知った顔を見つけてキリランシェロは近づいて行った。

「なのは、どうしたの?」

「あ、キリランシェロ君」

キリランシェロに気がついたなのははぱたぱたと近寄って行った。彼女の手にはなにやら古めかしい羊用紙が握られている。

「これ、何だかわかる?」

彼女がキリランシェロに渡した羊用紙には見るからに難解な文字が描かれており、そうとう古代の文字であることが分かる。

「なんか、相部屋の若い隊員同士がこの紙の所有権のことでケンカして一方が『出てけ!』って言ったらいきなり寮内中の家具とか食器とかが動き出してみんな叩き出されちゃったんだって。しかも家具たちが喋っていたなんていう目撃証言もあるんだよ」

年上の同僚である金髪の少女・フェイトが、こちらに近寄って事情を説明する。

「・・・それ、かなり厄介な事態だよ」

恐れを含んだ彼の呟き。キリランシェロは2人に告げた。

「これはフェアリー・ドラゴンの精霊魔術だよ」

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「この世界では―――」

機動六課のブリーフィングルームで、キリランシェロは八神はやて隊長以下、部隊長及びスターズとライトニングの面々を相手にドラゴンに関する講義を行っていた。

「『ドラゴン』って聞くと思い浮かべるのは、フリードみたいな生き物を想像すると思うけど、僕の世界―――特に魔術士は一般的に『ドラゴン』っていうと六種のドラゴン種族のことを示すんだ。そしてこのドラゴン種族は一種類たりともフリードのような姿をしていない」

彼は一息つくと、続ける。

「六種のドラゴン種族は、それぞれ馬・狼・獅子・穴熊・サイ、そして―――人間の女性の姿をしている」

「えぇっ!?ドラゴンなのに人の姿してんの!?」

「ちょっとスバル、黙ってなさいよ!」

驚いて大声を出したスバルをティアナが口を塞いで黙らせ、「続けなさい!」と目で促してくる。

「まぁ、女性の姿をしたドラゴンについては今は関係ないから飛ばすけど、今回男性寮で発生したのはドラゴン種族の一つ、獅子の姿をしているといわれているフェアリー・ドラゴン種族の精霊魔術だと僕は考えている」

「精霊魔術?キリランシェロの魔術とは何の違いがあるんだ?」

ヴィータが頬杖をつきながら質問をしてくる。

「僕達人間の魔術士は呪文、つまり声を媒体として魔術を行使するんだけど、これは音声魔術と呼ばれるんだ。これに対してフェアリー・ドラゴンの精霊魔術は『契約』を媒体として魔術を行使するんだ。そしてなのはが持っているその羊用紙が多分その契約書だ。僕には読めないけど、そんなに危険な物じゃないって事は分かる」

「えっと・・・どうしてですか?」

「それはエリオ、男性寮内にいた人たちが生きている事さ。精霊の力は絶大だ。それこそ、契約の内容が強力で、契約者の力量がそれに見合えばあの寮どころかここら一帯を壊滅させる契約を結ぶ事だって容易な事なんだから」

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「さて」

一行は再び男性寮の入り口まで戻ってきた。ギャラリーはいまだ遠巻きに眺めており、一部の男性職員は突入しようとしたのだろうか、髪の毛がクシャクシャになっている者もいた。

「ホントにやるの、スバル?」

キリランシェロは半眼で自分の隣で屈伸運動をしているスバルを見やった。

「モチロン!早いところ精霊の契約とかいうのを終わらせてみんなに睡眠を提供しないといけないからね!」

オオー・・・と男性職員から感嘆の声が上がる。

「それじゃ、いってきまーす!」

勇ましい声とともに入り口に向かい、扉を引いて開けると―――

「わぁぁぁぁぁ!?」

スバルは建物内からの突風に吹き飛ばされて、ゴロゴロと転がされてしまった。しかし即座に立ちあがり、「まだまだぁ!」と再度突入を試みる。

「たぶん『出てけ』って言ったから、この建物の中に人を入れないつもり・・・かな?」

「おそらくそうではないか?・・・そろそろ私は眠たいのだが・・・」

再び転がされるスバルを眺めて小首をかしげるなのはのとなりで、シグナムは口を押さえて大アクビ。そろそろ夜の11時が終わろうとしていた・・・

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結局精霊の契約期間であったらしい、朝の7時までスバルは精霊に支配された男性寮突入に挑戦した。

説明
第11弾です。
この作品は作るのが一番難しいです・・・
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