左利きの魔剣士7 |
老婆になったルリは、その日の真夜中に息を引き取りました。ルリの両親にはどう説明したら良いのかわからず、暗闇の中でランプの灯りを頼りに、診療所の裏庭に穴を掘って、遺体を埋めました。ルリの墓の前でジンは泣きながら謝っています。
「俺のせいで…うぐっ…ルリを死なせちまって…おえっ…本当にごめん…ずずっ」
その夜は一睡も出来ず、ジンは自分の部屋で泣き続けていました。右腕を見つめながら呟きます。
「ルリが命と引き換えに治してくれた、この右腕…。嘘みたいに綺麗に治ってる。擦り傷一つ付いてねぇ」
朝になってカーテンの外が明るくなって来たので、日課の剣の素振りをする為に東の森の方へ行きます。一振りした瞬間、剣は炎を纏って、木々を薙ぎ倒しました。
「何だ、これは!?まさか…この右腕にはメリッサの魔力が宿っちまったのか」
ジンはその足で盗賊団のアジトへと向かいました。紅い兄弟たちは酒盛りをしています。
「おい、あれを見てみろ?こないだの坊やが来たぜ…」
「右腕をちょちょ斬ってやったのに綺麗にくっ付いてやがる?腕の良い医者がいたのか」
「坊や、さっさと帰んな?オレたちは優しいから命だけは見逃してやるぜ」
「しかしあの女は良い体してたよなー。まだバージンだったようだが、ヒーヒー言って悦ぶから、興奮しちまったぜ」
「黙れ!悪党ども。お前ら全員、皆殺しにしてやる…」
「坊や、そいつは聞き捨てならないな…」
「あーあ、せっかくあの女のおかげで兄貴の機嫌が良かったのに、怒らせちまった」
「お前、もう生きて帰れねぇぜ?可哀想に…」
ところがジンが腰の鞘から剣を引き抜くと、剣が炎を纏っているので、盗賊団はどよめきました。
「ま、魔剣士だったのか!そんな話、聞いてねぇよ?」
「まさか魔剣士があんなにあっさり負けるわけねぇだろ!何かの間違いじゃ…」
ジンはまるで鬼のような形相で、紅い兄弟たちをあっという間に皆殺しにしてしまいました。怒りに我を忘れており、人を殺したのに罪悪感も芽生えません。
「これが魔剣士の力か…。恐ろしい力だ」
右手を見つめながら、ジンは恐怖に襲われました。
「こんな事をしてもルリは帰って来ない…。あの時に戻れるなら、もう一度やり直したい…」
診療所に戻るとルリの墓の前に行きました。涙が止めどなく溢れて来ます。
「ルリ…生き返ってくれ!お前がいないと俺はもう生きて行く意味がない」
その時、墓の前に見た事もない美しい花が咲いているのに気付きました。花の蕾が開くと、中からルリと瓜二つな顔をした妖精が現れて、思いっきり欠伸をします。ジンは驚きながらも妖精に見とれていました。
「ふぁーーーっ、よく寝た!ん?お兄さん、誰なの…」
「ル、ルリ…なのか?でもルリにしては胸がぺったんこだな…」
…つづく
説明 | ||
昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第7話です。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
158 | 158 | 0 |
タグ | ||
リュートさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |