左利きの魔剣士11
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一年後、ジンは左手で騎士科卒業試験を受けたので、散々な結果に終わったけど、なんとか騎士の資格を取得出来ました。右手で戦うと対戦相手を丸焼きにして殺してしまうからです。落第点ギリギリだったので、ジンの応援席にいる女子生徒の見る目も冷ややかでした。

 

「この一年間で貯めたお小遣いが結構あるから旅に出ても大丈夫だな」

 

アカデミーを卒業したジンはセルフィーユ王国を目指して旅立ちます。クレスは診療所の窓からそれを見送っていました。クレスの肩にはルリがちょこんと止まっています。

 

「ジンの奴、一人で旅立ったんだ?脳みそ筋肉で出来てる馬鹿なのに大丈夫なのかな…」

 

「付いて行きたいんじゃないのか?ルリ」

 

「別に!うるさい奴がいなくなって清々してるよ」

 

「この一年間、一緒にいてわかった事だが、君は人間のルリと思考パターンがそっくりだからね。本当はジンの事が心配なのだろう?」

 

「先生はボクがいなくなっても良いの?」

 

「ハハハ!ルリと同じ質問をするんだね」

 

「ボク、先生の事、大好きだから、ずっとそばにいたいよ」

 

「僕もルリが大好きだから一緒にいたいよ。でもただベタベタくっ付いてるだけが愛情ではないと思うんだ。人間のルリにも遠くで女医の勉強を頑張って欲しかった。僕はどんなに遠くにいてもルリを愛し続けるから…」

 

「ふーん、ボクにはまだよくわかんないや…」

 

「むしろ離れている時の方が愛情は強くなると僕は思う。そばにいる時よりも離れている時の方が相手の事を考えてしまうからね」

 

「じゃあボクがそばにいない方が先生はもっとボクの事を好きになるの?」

 

「そうだね…。きっと毎日ルリの事を思い出して会いたくなると思う」

 

「わかった!ボク、ジンの旅に付いて行くよ。先生もボクがジンと一緒にいた方が安心できるよね?」

 

ルリは窓から飛び立ってジンの跡を追いかけて行きました。クレスはルリが生きていた頃の事をなんとなく思い出します。

 

「僕の見たところ、ルリには回復魔法の才能があるかもしれない。ここは田舎のアカデミーだから普通科と騎士科しかないから、魔法科のあるセルフィーユに行くと良いよ」

 

「嫌です。私はここで薬草学の勉強を頑張ります」

 

「魔法科で回復魔法を習得して置けば、女医としての箔も付くよ?チャービルで開業してもやって行けるだろう。こんな辺境の田舎村で燻っていては、せっかくの才能も無駄遣いだよ?」

 

「私、十年前に先生に命を救ってもらった時から、ずっと…先生の事が好きでした」

 

…つづく

説明
昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第11話です。
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