左利きの魔剣士14 |
クレスは人間のルリに抱き付かれて泣かれてしまいました。ルリの涙を拭うように、クレスはほっぺにキスしました。
「どうしてキスしたの?こんなに好きにさせておいてフルなんて先生は酷い…」
「僕はルリの事を愛してる。だけど結婚するならセルフィーユの魔法科に二年間通って、二十歳で受けられる第一級魔術師試験を受ける事が条件だ」
「私がその試験に受かったら、結婚してくれるんですか?」
「第一級魔術師試験はとても難しいから二十歳で一発合格する者はほとんどいないよ。僕は六年間頑張っても無理だったから、諦めて田舎に戻って来た」
「六年も頑張ったのに、先生みたいな優秀な人にも無理なら、私には絶対に無理です…」
「僕は優秀なんかじゃない。ここには医者がいなかったから、僕みたいなヤブ医者でも患者は来るからね」
「先生はヤブ医者なんかじゃないです!十年前にチャービルの医者から匙を投げられた私の病気を治してくださったじゃないですか?」
「あれは気休めで薬を渡してただけなんだよ。治る見込みはなかったが、君が自然治癒力で回復しただけだ。むしろ君が自分のポテンシャルを引き出して、病気を治したとしか思えない」
「だとしても私のお母さんは先生に感謝してました。チャービルの医者は誰も診てくれなかったのに、先生だけは最後まで諦めずに治療を続けてくれた」
「君が亡くなった時の言い訳を一晩中、考えていたよ?最善を尽くしたが無理だったとでも言うつもりだった」
「先生が調合してくれたお薬を飲んだら、本当に苦しくなくなって治ったんです…」
「それはただのプラシーボ効果だよ?これを飲めば治ると思い込んで、飲んだから治ったと勘違いしたんだ…」
「先生の薬草学は不治の難病も治せるんです!先生は素晴らしい人です…」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、僕が君に処方したのは、ただ栄養価の高い健康補助サプリだよ?」
「それでも本当に治ったんだから、先生はすごい医者なの」
「君がどう思おうと勝手だが、君の病気を治したのは君自身だ。僕がやったんじゃない」
「先生に会いたくて仮病を使って来てる女性患者が多いのは気付いてますか?」
「ああ、あれは心の病だな…。君にもプラシーボ効果のあったあの健康補助サプリを彼女たちにも処方しているよ?」
…つづく
説明 | ||
昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第14話です。 | ||
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