聖ビーストテイマー・ナタ22 |
ユリアーノの葬儀が厳かに執り行われました。フォンが友人代表で喪主になっています。隣にユリアーノの娘のジュリーが立っていました。
「我が同胞のユリアーノは、妻のミネルヴァに先立たれ、男手一つで愛娘を立派に育て上げ、七十六歳の若さで亡くなった…」
ユリアーノの遺影は妙に若い肖像画でしたが、若返りの桃で若返っていたから、実年齢は七十六だったのです。フォンもスキンヘッドの眼帯をした、人間の男に変身しています。フォンの息子も葬儀に参列していて、ガタイの良い厳つい男でした。
「若返りの桃は残りの寿命を半分縮める。六十歳の時に食ったから、本来なら九十二歳まで生きられたはずだったのに…。禁断の果実を食ったわしもあと何年、生きられるかわからんがわしの忘れ形見である息子がいる限り、死など恐るるに足らん!」
サラもフォンによく似た息子の隣に立っていましたが、ここで涙ぐんでしまいました。フォンが死ぬ日の事を考えてしまったからです。
「ユリアーノの娘はゲイザーが引き取る事になっている。ユリアーノの遺言書に記載されていた。自身の死後に財産は全てゲイザーと娘に半分ずつ譲ると…」
ユリアーノの娘のジュリーは、凛々しい顔つきの金髪の美女でした。正反対で黒髪のローラの隣に移動します。
「ユリアーノが天国へ旅立つ事を祈っている」
最後の言葉で締めくくられて葬儀が終わると、ジュリーはゲイザー邸にやって来ました。ルークの部屋は片付けられて、ジュリーの部屋になっています。
「私、ずっとお姉ちゃんが欲しかったの」
「私も妹が欲しいと思っていたのよ」
「ルークは最近なんかおかしくなっちゃって、すぐ変な事しようとするから、話しててもつまんなくなって…」
「ふふ、あのくらいの年頃の男の子は大体、そう言うものよ?」
「お父さんにもルークの事で相談したけど、そのくらい普通だって言って、何にもしてくれないし…」
「ルーク君は何をして来たの?」
「いきなりキスして来たりして、嫌がってるのにやめてくれないし…」
「あら?きっとルーク君はローラの事が好きなのね…」
「私はルークの事、友達としか思えないの…。ずっと一緒に暮らしてたから家族みたいな感覚だし…」
「離れて暮らしていたら少しは感じ方が変わってくるかもしれないわね…」
「正直、ルークがいなくなってホッとしてる」
その頃、アラヴェスタの集合住宅に引っ越したナタとアークとルークは慣れない部屋で溜息をついていました。
「自分の家にいるって気がしないわ」
「そのうち慣れるだろう?僕はアラヴェスタ城が近くなって、出勤がラクになったから助かるよ」
「ローラがいない家なんて…。ローラは僕がいなくなって、寂しいと感じてるのだろうか?」
…つづく
説明 | ||
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第22話。 | ||
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