聖ビーストテイマー・ナタ25
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結局、ゲイザーは断りきれず、物置で埃を被っていた、髑髏が描かれた真っ赤なリュートを引っ張り出して来ました。リビングで音の調整をしています。

 

「ゲイザー様、また音楽を始めるのですか?」

 

「声が出ないと思う。生演奏では口パクでごまかすわけにもいかないし、どうしたものか…」

 

とりあえず初作曲したステーキの唄を練習し始めます。

 

「久しぶりに聴きましたが、あの頃より更に重低音が響く感じで素敵になってます」

 

「それなら良いのですが、昔のファンをガッカリさせたくありませんからね…」

 

「グロリアも喜ぶと思います。教えてあげなきゃ」

 

「グロリアさんとは今でも仲が良いのですね」

 

「ええ、いつも人には言えない悩みを聞いてもらってます」

 

「そう言う存在は大切なので大事にしてください」

 

ローラとジュリーが部屋から出て来ました。初めて聴く曲にローラは驚いています。ジュリーもうっとり聴き入っていました。

 

「お父さん、ロックなんか歌えたの?しかも上手いし、意外…」

 

「ダンディーで素敵な声…。かすれ具合が堪らないわ」

 

「ふむ、若い女性の率直な意見が聞けて良かったです。フラウはお世辞しか言わないから…」

 

「私はお世辞なんか言いませんよ!」

 

メサイアの復活コンサートのチケットはあっという間に完売してしまい、フラウは特別席にグロリアを招待する事にしました。

 

「劇場を貸し切って十五年ぶりにコンサートをするって聞いて行きたいと思ってたんだけど、裏でチケットは売買されてるけど、一万ジェニーのチケットが十万ジェニーになってるのよ?流石に専業主婦の私には手が出ないわ…」

 

「チケットの転売は禁止されてるのに…。転売目的の人が買うから、本当に欲しいファンが買えなくて困るのよね…」

 

「それだけ需要があるって事でもあるんだけどね。レコードも復刻版が生産追い付かなくて、転売されて一枚五千ジェニーのレコードが五万ジェニーになってるの」

 

「家で本人の生歌が聴ける私は幸せ者ね」

 

「フラウのおかげで特別席からコンサートを観られる私も幸せ者だわ」

 

「ふふ、いつも私の悩みを聞いてくれてるお礼よ」

 

…つづく

説明
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第25話。
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