聖ビーストテイマー・ナタ68
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マルヴェールの闘技場には噂を聞きつけたアカデミーの生徒も来ていました。ルークの応援席にはローラとジュリーも来ています。控え室の小窓から覗きながらルークは呟きました。

 

「この試合、勝つわけにはいかないけど、あまり無様な姿はローラには見せたくないし、カッコ良く負ける為には相手が強くないとダメだ」

 

ルークはいつも勝つ為にどうするか考えて行動していましたが、この日は上手く負ける方法を必死で考えていました。

 

「普通に考えたらスピードの速いヴィッキーが有利だ。詠唱中に間合いに入られたら厄介だからな…」

 

ヴィッキーはウォーミングアップの為か控え室の外で素殴りの練習をしています。寸止めされた拳圧だけで、レンガの壁が凹んでいました。

 

「あんなもん、まともに喰らったら大怪我では済まないぞ?下手したら死ぬかも…」

 

ヴィッキーが控え室に入りました。気合は十分のようです。手加減しなくても負ける可能性が高いので、ルークも本気で行く事にしました。

 

「ジュリエッタを賭けて勝負を挑んだ挑戦者はルーク・マルヴェール!あのルシファー・マルヴェールの一人息子で、魔術武闘大会の成績はなんと無敗です」

 

プレジダンが選手の名前を呼び、控え室から一人ずつ出てお辞儀をします。

 

「対するはヴィクトール・マルヴェール!あのフォン・マルヴェールの一人息子で、体術武闘大会の成績はなんと無敗です。両者、向き合って?礼をしてください」

 

「手加減はしないよ?本気で来てね」

 

「望むところだ!お前をギタギタに叩きのめしてやる」

 

「ラッサンブレサリューエ!アレッ」

 

ルークが詠唱中、あっと言う間にヴィッキーが間合いに踏み込んで来ました。ところが目の前に見えない壁のような物が現れて、ヴィッキーの拳はルークまで届かずに止められてしまいます。

 

「くっ!結界を張ったか…。一発も攻撃が当たらない」

 

「悪いけどまともに喰らいたくないんでね?」

 

「魔術師が相手だとやりにくいな…」

 

「教科書通りだと武闘家の方が魔法使いよりも有利だよ?僕の勝ち目は薄い…」

 

「それは負けた時の言い訳のつもりか?」

 

「言い訳じゃない…。事実をありのまま述べてるだけさ?」

 

「わざと負けようなんて考えるんじゃないぞ?ジュリーの為にお前も本気を出せ!」

 

「ローラの為なら本気出すんだけどなぁ」

 

「ジュリーはお前がわざと負けようとしてるって言ってた…」

 

「あはは!バレてたんだね…」

 

…つづく

説明
一応、新シリーズだけど本編の第3部・第68話。
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