真・恋姫†無双〜江東の花嫁達・娘達〜(姉妹と主従) |
・オリジナルキャラクター紹介
孫登(そんとう)・・・・・・一刀と蓮華の娘で真名は尚華(しょうか)。
次期呉王として期待されており、本人もその自覚はあった。
だが、自分から見て立派な父親と母親のようになれるのか現在模索中。
誰からも愛され優しくて相手を労われる心を持ち姉妹から大切にされる。
甘述(かんじゅつ)・・・・・・一刀と思春の娘で真名は莉春(りしゅん)。
母親同様に将来王となる尚華を姉妹としてではなく臣下として接しようとする。
本当は誰よりも尚華のことが気になり、大切な姉妹だと思っている。
姉妹と主従という二つの関係に悩み距離を置いている。
母親同様、一刀に対してはツンデレを発揮中。
(姉妹と主従)
「はぁ」
呉王孫権こと蓮華の第一子にして将来の呉王である孫登こと尚華(しょうか)は大きなため息をついた。
「どうしたんだ、尚華?」
隣に座っている一刀は愛娘のそんな様子が気になっていた。
「何か悩み事でもあるの?」
一刀と反対側に座っている蓮華も気になって仕方なかった。
せっかくの親子水入らずで出かけて今も一刀と孫登が作ったお弁当を食べていたところだった。
「父上様、母上様」
「うん「どうしたの」?」
「私は莉春に嫌われているのでしょうか?」
甘寧こと思春の娘である甘述こと莉春(りしゅん)のことで悩んでいた。
幼い頃はよく一緒にいて何をするにも二人は一緒だったが、最近になって莉春はどこか尚華を避けるような行動をしていた。
母親は違えど同じ父親を持つ姉妹としてなぜそのような態度をとられるのか尚華にはよくわからなかった。
「莉春ともっと一緒にいたいのですが、どうしてか避けられてしまうのです」
屋敷内ですれ違う時も姉妹とは思えない態度をとり、決して自分から話そうとはしなかった。
そればかりか尚華のことをまるで主人であるといわんばかりの行動が目に付いていた。
「氷蓮姉上様に相談をしても何もいい方法が思い浮かばないのです」
「なるほどね」
一刀は何となく莉春がなぜそのような態度をとるのか大体の想像がついた。
「母上様」
「どうしたの?」
「私は将来、母上様の跡を継いで王になるのですよね?」
「ええ。それがどうしたの?」
「もしそのことで莉春に避けられているのであれば私は王になどなりたくありません」
それよりももっと大切な莉春と仲良くいるほうが彼女にとって価値のあるものだと考えていた。
蓮華も同じような気持ちの時があった。
思春とは主従でありながらも友として接して欲しいと思ったことが何度もあったが、ほとんどそのような態度をとったことはなかった。
一刀と結ばれてもその関係は変わることはなかった。
「そうね。尚華の気持ちは痛いほど分かるわ」
自分ではよい案が思いつかない蓮華は一刀の方を見て何かないかと訴える。
「莉春は思春に似ているからな。説得するのは大変だと思うぞ」
「やはりダメでしょうか?」
落ち込む尚華に蓮華は慌てて一刀に無言で怒った。
一刀は蓮華をなだめつつ、落ち込んでいる愛娘の声をかける。
「尚華」
「はい」
「俺は大変だとは言ったけど無理だとは言っていないぞ」
一刀の言いように不思議そうな表情を浮かべる二人。
「でも俺が言って納得させても何も解決しない。だから尚華がきちんと話が出来る環境は整えてあげるよ」
「私が莉春とお話をするのですか?」
「そうだよ。大丈夫だって、莉春だって本当は尚華といつも一緒にいたいと思っているはずだよ」
態度が変貌したといっても影ながらいつも尚華を見守っている莉春を何度も見かけたことのある一刀にとって姉妹であることに間違いないと感じていた。
「父上様」
「うん?」
「私はきちんとお話が出来るでしょうか?」
「出来るさ。なんたって俺と蓮華の娘だぞ。自信持っていくんだ」
傍から聞けばなんの説得力もないように聞こえるが、それを聞いた本人は大いに勇気を持つことが出来た。
「思春には俺から話をするよ。こればかりはさすがにきちんと話をしておかないとだめだから」
「私も一緒に話をしてもいいかしら?」
「そうだな。同じ親だからそのほうが俺としては嬉しいよ」
同じ家族なのだから一緒に話をする方がいいと一刀と蓮華は思った。
そんな二人を見て尚華は凄いなあと思っていた。
「尚華?」
「どうかしたの?」
「いえ、なんだか父上様と母上様のようになれたらいいなあと思いました」
まだまだ子供の自分にとって二人は目標でもあり憧れだった。
「尚華は蓮華のように優しくて美人だし、それにみんなから好かれているから俺達よりも立派な人になるよ」
「び、美人って……一刀ったら」
頬を紅くする蓮華は手に持っていたおにぎりを一気に食べていき、見事に喉に詰まらせた。
「れ、蓮華、何してんだよ」
背中をさすりながらお茶を飲ませていく一刀。
「あ、あなたが変なこと言うからじゃない」
「変なことなんか言ってないぞ?本当にそう思っているからそう言っただけだ」
二度の不意打ちに蓮華は小声で「バカ」と言いながらも無条件降伏をした。
そんな二人を見ていた尚華は将来、自分にも同じような光景があって欲しいと願った。
その後、いつも通りの雰囲気に戻った三人は街の中を散策して夕暮れになる前に屋敷に戻った。
そして夕餉の準備を終えて尚華が妹達を呼びに廊下に出た時だった。
目の前から莉春がやってきて尚華に気づくと恭しく礼をとった。
「莉春……」
声をかけるがそれはどこか弱々しく風と共に流れていった。
それでも勇気を出して言葉を続けた。
「夕餉の準備が出来ましたから他のみなさんを呼びに行こうと思うのですが、一緒にきてもらえないでしょうか?」
きっかけなどなんでもいい、とにかく莉春と少しでも会話をしたい尚華。
それに対してどことなく表情が硬い莉春。
「申し訳ございません、尚華様。少しやることがあるので私はいけません」
姉妹のはずなのに他人行儀の莉春に尚華は寂しさを感じさせた。
「それでは失礼します」
礼をして尚華の横を通り過ぎていく莉春。
声もかけられずにただその後姿を見送ることしかできなかった尚華は落ち込み、廊下を力なく歩いていく。
(父上様、私は莉春ときちんと話すら満足にできません……)
今までなかった出来事なだけにどうしたらいいのか、余計にわからなくなってきている尚華は何か柔らかいものにぶつかった。
「尚華?どうかしたのですか?」
そこに立っていたのは彩琳だった。
来年には国試を受けるため毎日のように試験勉強に励んでいる彩琳は浮かない表情をしている妹を不思議に思った。
「彩琳姉上様……」
尚華は姉に抱きつき今の自分の苦しみから少しでも逃げ出そうとした。
「何かあったのですか?」
そんな妹を優しく撫でる彩琳。
「今日は蓮華様と父上の三人でお出かけしたはずですよね?何かそこであったのですか?」
彩琳の胸に押し付けている顔を横に振り、それは違うと訴える。
「では何があったのですか?」
「…………」
「何かあったのですね」
今にでも泣き出しそうな尚華に彩琳はとりあえず庭に行こうと勧めた。
それに逆らうことなく尚華は彩琳から離れて一緒に庭へ向かった。
「あら?」
そこへ彼女達の姉である氷蓮が通りかかり、こっそり二人の後をついていった。
庭に置いてある木のベンチに座る二人。
「ここならばお話できますね?」
「……はい」
尚華は何があったかを包み隠さず全て彩琳に言った。
途中で話を折ることをせず最後まで聞いた彩琳は軽くため息をついた。
「莉春らしいといえばらしいですね」
莉春の母親を知っている者ならばその娘がどのように育つのか理解できていた。
「思春様もお人が悪いですね。今から臣下の真似事などしても仕方ないはずですよ」
「で、でも、私が王になれば莉春だけではなく、彩琳姉上様達も同じようになってしまうのだと聞いたことがあります」
姉妹だからといって王と対等などまずありえないことだった。
「そうですね。私達は仕官すればいずれこの国を任されるはずです。貴女が王になり私達はその臣下になります。でも、それは公務の時であってこうしているときは貴女は私や氷蓮お姉様にとって大切な妹に変わりないですよ?」
だが莉春はどうだろうか。
姉のいうように公私をはっきりと分けているのであれば、なぜ今、自分を姉妹としてではなく未来の王として接するのかわからなかった。
「私は私なんかよりも氷蓮姉上様のほうが王にふさわしいと思います。いっそう、姉上様にそうお願いしようかと思ったりするんです」
自分よりも明るく、そして誰からも愛されている氷蓮が羨ましかった。
「姉上は自分よりも尚華のほうが王にふさわしいと思っていますよ。正直なところ、姉上では不安すぎて困っていますから」
雪蓮に似て破天荒な行動が目立つ氷蓮がじっと政務をこなしている姿の想像が彩琳には難しかった。
「莉春はきっと思春様からこう言われたのでしょうね。いずれ貴女は呉の国の王になる。だから公私をはっきりさせよと」
姉妹だからということで権勢をほしいままにすれば国は傾き再び戦乱の火種になりかねない。
そのことを懸念しているのだと彩琳は思った。
「私達が莉春に言ってもいいのですが、それでは根本的なものが解決しませんからね。尚華が思っていることを莉春にぶつけてみてはどうですか?」
ただ声をかけるのではなく、思い切って自分の思っていることをぶつければ何らかの反応をするだろうと付け加えた。
「姉上様はもし氷蓮姉上様とこのようなことが仮にあったらどうしますか?」
「私と姉上がですか?そうですね、まず逃げ道をしっかりと塞いで逃がさないようにして、それから納得がいくまで話をしますね。もっともそうなる前に、勘のいい姉上は逃げるでしょうけどね」
そう言いながら後ろを見ると、そこには氷蓮と莉春が立っていた。
「あんたの小言を聞いていると夢に出てきそうだわ」
「それは嬉しいですね」
「あんたね…………。まぁいいわ。今はこっちのほうが問題だから」
そう言って氷蓮は俯いている莉春の背中を押して二人の方へ進ませた。
「莉春……」
「…………」
何ともいいがたい空気が二人の間に流れる。
「尚華」
「はい」
「私は貴女が王になることを望んでいるわ。なぜならば私以上にみんなから好かれているからよ」
氷蓮は二人の前に歩いていき、地面に座り込んだ。
「いつだったけ、みんなでぴくにっくに行った時に脩里がつまずいて膝を擦りむいて泣いたら一番に駆けつけて慰めたでしょう?それに明怜が大事にしているお人形をなくしたときも一緒になって探してあげたでしょう?」
結局、ほつれていた部分があって月が直していたことがわかったとき、優は一番に一緒に探してくれた尚華に感謝の言葉を述べた。
「みんな、それだけ貴女のことが大好きだし、頼りにしているのよ」
「で、でも姉上様だって私達には凄く優しいです」
「それは私にとって大切な妹だもん。一人も例外なくね」
ベンチの後ろから動かない莉春の方を見ながら氷蓮は答えた。
「莉春」
「……はい」
「言いたいことがあるのなら言いなさい。思春様に言われたことなんて気にしないで自分の言葉できちんと伝えなさい」
「それは命令ですか?」
「命令するほど私は偉くないわよ。これは姉としてお願いしているの」
正直なところ、これ以上二人の微妙な関係を見るに耐えなかった。
「姉上、これは尚華と莉春の問題だと思いますけど?」
「あら、可愛い妹達が些細なことですれ違っているのにそれを見て見ぬフリなんてできるわけないわ」
裏のないはっきりとした口調でそう言い放つ氷蓮。
そこには長女である彼女の強さが感じられた。
「彩琳、そこに莉春を座らせなさい」
「わかりました」
こうなると主導権を完全に掌握している氷蓮に逆らうのは無駄だとわかっていた彩琳は立ち尽くしたままの莉春を優しく諭しながらベンチに座らせた。
「二人ともしっかり話し合いなさい。納得するまで夕餉も抜きよ」
育ち盛りの彼女達にとってそれはかなりいたいことだったが、それ以上に状況が状況なだけに妥協など許されるはずもなかった。
「貴女達が話し終わらないと私や彩琳も夕餉抜きだからそのつもりでね」
「え?私もですか?」
「当たり前でしょう?この子達と夕餉のどっちが大事なのよ?」
そう言われるとここで妹達を見捨てて自分だけ夕餉をとることなどまずありえなかった。
しかし問題の妹二人はどちらから声をかけるわけでもなくただ黙って俯いていた。
「ほら、黙っていても夕餉は食べられないわよ」
「姉上、それでしたらお先に食べに行ってください」
「私がいないとあんた達が話しないでしょう?」
ツンとする莉春に氷蓮は呆れてしまう。
「姉上様、すいません。私と莉春だけにしてもらえませんでしょうか?」
このままでは姉達にも迷惑をかけかねないだけに尚華は二人っきりにさせて欲しいと願った。
「いいの?」
「はい」
少し考えてから氷蓮と彩琳はその場から離れることにした。
それを確認してから尚華はほんの少し自分と莉春との間を縮めた。
「莉春、ごめんなさい」
「……なぜ謝るのですか?」
どちらかといえばその言葉は自分が言うべきなのだと思いつつ、莉春は尚華の次の言葉を待った。
「だって莉春ときちんとお話をしないといけないと思っていたのに、姉上様達や父上様がいなければ何もできませんでした」
「…………」
決して相手のせいになどせず、常に自分に非があるのではないかと思っている尚華だけあって、その言葉はどこか弱々しかった。
「私は莉春が大好きです」
「えっ?」
突然の告白にわずかばかり驚きを覚えた莉春。
「いつも傍にいてくれて一緒に遊んでくれて凄く嬉しいです。私が将来、王になってもそれは変わらないものだと信じています。莉春はどう思っていますか?」
勇気を出して尚華は莉春の方を見た。
「私は…………尚華…………様が大好きです」
呼び捨てにされなかった尚華は寂しそうな表情をする。
「莉春、どうして私に『様』だなんてつけるのですか?私達は姉妹のはすです。それなのになんだか変です」
「それは貴女が将来、王になられるからです。母にも言われました。尚華様とは姉妹だけど主従という関係を忘れてはならないと」
「そんなの間違っています」
「どこがですか?」
尚華を守るために武芸を磨き、学問も出来る限り頑張っている。
それなのに否定されるとは思いもよらなかった莉春は思わず尚華の方を見てしまった。
その表情は寂しさと悲しさが雫となって目から溢れていた。
「しょうか…………」
最後まで声が続かず尚華から視線を外せない莉春。
「彩琳姉上様が言っていました。いずれ自分達は公では臣下になるけれど、こうして今の時は姉妹でいてくれると。それなのに莉春は姉妹として接してくれないのですか?」
母は違えど同じ姉妹には変わりないだけに尚華はいつだって莉春と笑顔で話をしたかった。
「私は…………」
「凄く寂しいです」
「えっ?」
「だって幼い頃はいつも一緒にいてくれた莉春が今は遠くに感じてしまうのです。どんなに近づこうとも離れていくばかりでとても悲しいです」
一刀が忙しくてなかなか戻ってこれなくて寂しさで泣きそうになった時も、怖い夢を見たときも一晩中、一緒に起きていろんな楽しい話をするときも常に莉春がいた。
それだけで一刀に会えない寂しさが少なくなっていた。
感謝してもし足りないぐらい、尚華は莉春の存在が大きかった。
「私は母上様に言ったのです。莉春とこのまま元通りにならなければ王になどなりたくないと」
「尚華様……」
「だって莉春がいてくれないと辛いんです」
そっと莉春の手を取って両手で包み込む尚華。
「それでもダメですか?」
今にでも声を上げて泣き出しそうなほど尚華は心苦しかった。
「どうして……」
「どうしてって……」
「どうしてそんなに優しくなれるの?嫌な思いをさせたのに私を許そうとするの?」
敬語が消えてもとの姉妹の会話に戻った莉春はそのことに気づかなかった。
「だって、私達は姉妹ですから」
「バカだよ。尚華は大バカ者だ」
「うん。私はバカだと思います。でも、莉春とこうして話がいつもしたいのはずっと思っていることです」
尚華にとって話せるということが大事だった。
王になるにはまだまだ未熟でありそれまでの時間は多く残されていた。
その中でも少しでも長く一緒にいたいという尚華の紛れもない本心。
「思春様の言われることは確かに主従としては正しいかもしれません。でも、今の私達は同じ父上様を持つ大切な姉妹です。誰一人と例外なく」
将来はどうあれ今までもそしてこれからも自分達が姉妹であることには変わりなかった。
「だから以前のように仲良くして欲しいのです。姉妹として」
それ以上何も望まない。
尚華の気持ちに莉春はこれまで自分がとってきた態度を思い返した。
「しょう…………か」
「はい」
「ごめん……」
「はい」
自分は何かを勘違いしていたのではないかと莉春は思った。
目の前にはこんなにも自分のことを考え、悩み、悲しみ、寂しさを与えてしまったことが申し訳なくなっていった。
「許してくれる?」
「もちろんです。だって莉春ですから」
過去がどうあれこれからまた元の関係に戻れるのならば、これまで感じた寂しさなど吹き飛んでしまった尚華の表情に笑顔が戻った。
「あ、ありがとう……尚華」
「はい」
二人は笑顔を見せ合う。
「正直に言うと、私も尚華と一緒にいろんな話をしたり遊んだりしたいと思っていたの。でも、自分は臣下になるんだって思うとそれすらしてはならないような気がしたから」
「莉春は思春様に似ているのですね」
「似ている?」
「はい。凄く真面目で何をするにも一生懸命。それでいて大切な人をしっかりと見守っているんです。莉春にも私が王になったらそうしてほしいと思います」
それはあくまでも王としての立場であり、姉妹としてはまた違うことを思うであろうと尚華は思った。
「もちろん。尚華は私がずっと守る。誰であろうとも尚華を泣かせる者は容赦しないから」
「じゃあパパが泣かせても容赦しないわけ?」
頃合を見計らって戻ってきた氷蓮の言葉に莉春ははっきりと答えた。
「当然です。父であろうとも容赦などしません」
「だって、パパ」
そう言って後ろに声をかけるとなぜか半泣きの一刀が立っていた。
「こんなにも大好きなのにそれは無いだろう?」
「父といえどもそれとこれと話は別です」
娘に強烈な一言を浴びせられ氷蓮に泣きつく一刀。
「氷蓮、莉春が……莉春が……」
「はいはい。パパ、あとでたくさん慰めてあげるから泣かないの」
心の中でニヤリと笑みを浮かべる氷蓮。
「情けない父です」
容赦ない言葉をぶつける莉春だが、さすがに言い過ぎたと思った。
「でも父が尚華をたくさん可愛がってくれるのであれば問題ありません」
「もちろんだよ!」
急に笑顔に戻って尚華と莉春を抱きしめた。
「もちろん、莉春もたくさん可愛がるさ」
「父、暑苦しいです」
「父上様♪」
なんだかんだと言いながら喜んでいる二人だった。
夕餉が終わり順番に湯に浸かってから一刀は庭のベンチで思春と話をしていた。
「なるほど。そんなことがあったのか」
自分の言い方がまずかったせいで危うく子供達の関係を崩しかねなかったことを申し訳なく思っていた思春に一刀は優しく肩を抱いた。
「親というものは難しいものだな」
「そうだな。でも、元通りになってよかったと思っているよ。それに」
「それに?」
「今回は子供達だけで解決した。俺や思春、雪蓮に蓮華、それに冥琳に頼ることなくね」
それだけでも子供達が成長していっているということだった。
「一刀」
「うん?」
「私は莉春にとって良き母親なのだろうか?」
自分の教育のせいで娘である莉春の将来を不安定なものにさせているのではないかと、この一件を通して感じていた。
蓮華や雪蓮達のように母親らしいことをしようにも上手くいかないことが多かった。
「思春はいいお母さんだよ」
「そうなのか?」
「だってそうだろう。あんなにいい子なんだから」
嬉しそうに答える一刀。
「相変わらず根拠がわからない言い方だな」
「だってそれ以外の言葉なんてあるか?」
自分達の血を受け継いでいる莉春は二人に良く似ていた。
優しくもあり不器用なところもある。
「思春」
「なんだ?」
「俺と結婚したことを後悔している?」
「後悔しているのであればこのように一緒にいるはずがないだろう?」
思春はぶっきらぼうに言うと一刀の肩に頭をもたれさせた。
「誰かのせいで腑抜けになるのではないかと心配はしているがな」
「誰だよそれ?」
「決まっているでしょう?」
そこへ蓮華が夜着を身につけて思春と反対側に座って同じように肩に頭をもたれさせた。
「まったく酷い言われようだな」
「事実なのだから仕方あるまい」
「そうよ」
二人の愛妻がどことなく甘えてくるため一刀は苦笑せざるおえなかった。
同じ頃、尚華と莉春は仲良く同じ寝台に入りたくさんの話をしていた。
しばらくの間、こういった時間を持たなかっただけに話すネタは尽きなかった。
やがて自分達の父親のことになった。
「それにしても父のあの過剰な反応には困ったものだと思う」
「そうですね。少し控えていただければいいのですが」
呉きっての親バカぶりを発揮している一刀。
時にはそれが娘達にとって自重をして欲しいと思うときがあった。
それば別に嫌っているとかではなく、彼女達としてはもっと甘えたいというのが本音だが、誰かが見ているところでは控えて欲しいということだった。
「母は父のどこが好きなのか聞いてみたのだけど、もう少し大きくなったらわかると言われた」
「私もです。どういう意味なのでしょうか?」
「この前、音々音様と詠様にボコボコにされていたのを見たのだけど、アレを見ていると父が情けなく思える」
「でも私達のことを大切にしてくれます」
怒る時は怒るが優しい時はどこまでも優しく、彼女達もその笑顔が大好きだった。
「今回のことも父上様から自分で解決しなさいって言われたのです」
「自分で?」
「はい。だから勇気を出してみたらうまくいきました」
尚華は嬉しそうに話していると、不意に莉春は身体を起こした。
「莉春?」
「尚華、私はこれからも尚華のそばにいてもいいのか?」
「もちろんです。逆にいてもらわないと困ります」
尚華はそう言うと眠気に誘われたのか瞼が閉じていく。
「莉春」
「なに?」
「これからもずっと……いっ……し……で……ぅ」
穏やかな表情で眠りについた尚華を見下ろす莉春はそっとその頬に手を添えた。
「言われなくてもずっと一緒だから」
そう言って身体を倒して仲良く手を重ねて眠りについた。
しばらくしてその様子を見に来た一刀達は娘達が元通りになったことを確認して一安心した。
「さすがは二人の娘だな」
「あら、それは違うわよ」
「うん?違う?」
「ええ。だって私達の娘だから」
そこには一刀も含まれていることは言わなくてもわかっていた。
「じゃああの子達に負けないように俺達も仲良くしようか」
嬉しそうに一刀は蓮華と思春の肩を抱くと、仕方ないなといった感じで二人は一刀に寄り添って歩いていった。
「ちちうえさま…………ありがとうございました…………」
夢の中で尚華は自分に勇気を与えてくれた大好きな父親にお礼を言った。
そうしてまた呉の国は夜が更けていった。
(座談)
水無月:第二弾は蓮華と思春の娘達のお話でした。
雪蓮 :主従関係ねぇ。私と冥琳はあまり問題はなかったわよね?
冥琳 :さんざん振り回された記憶しかないのは気のせいか?
雪蓮 :あれは特別よ。と・く・べ・つ。
冥琳 :特別がそう何度もあるとは思わないが?
雪蓮 :もう冥琳ったらそんな事をいつまでも覚えているから小姑になるのよ?
冥琳 :誰が小姑かしら?
水無月:ある意味ピッタリな言葉かもしれませんね。
冥琳 :ほう〜。どうやらお仕置きをされたいみたいだな?
水無月:まて、落ち着け!早まるな!
雪蓮 ;そういうわけだから次回も娘編第三弾よ。今度は誰かしらね♪
冥琳 :いいかげんあの二人をきちんと出さないと本気で怒るぞ?
水無月:それはまさに天のみが知るです。
一刀 :え?俺?
説明 | ||
娘編第二弾は蓮華と思春の娘のお話です。 将来の王とそれを守る影。 幼いながらも考え悩みを抱えています。 それでも自分の想いを伝える事が出来たならばそれらも解決できるのだろうなあと思った作品です。 最後まで読んでいただければ幸いです。 |
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コメント | ||
かわいいなぁ(ロックオン) 村正様>もう少しツンでもよかったかなっと思ってたりします。(^^;)(minazuki) HIRO様>母親に似ており父親の優しさを持っています。(^^)(minazuki) kanade様>ほのぼの親子話です!(minazuki) jackry様>オリジナルの真名だと大変ですね。なんとか分かりやすくできるように次回から考えてみます。(minazuki) 刀様>まったくもって一刀は果報者ですね。(minazuki) munimuni様>ありがとうございます!(minazuki) フィル様>真面目であり優しさをもった子達です。(^^)(minazuki) キラ・リョウ様>親バカ全開中です♪(minazuki) 思春似の娘さんですね。ほのぼのしました(´∀`)(温泉まんじゅう) みんな母親に似ていますね。ほのぼのしていてよかったです。(HIRO) むむ・・・なんていい話なんだろう・・・・・(kanade) 今度の作品もほのぼの〜しててイイ!!このような娘をもてる一刀達は幸せ者ですw(刀) どっちも生真面目ないい子ですねw しっかり"母"親の背中をみて育っているのが分かりますwww(フィル) いい話ですね。 一刀の親馬鹿っぷりはすごいですねwww(キラ・リョウ) クォーツ様>ありがとうございます。(><)次回はあの子達です!(ぇ)(minazuki) 龍威旋様>( ゜▽゜)ニヤ(minazuki) まーくん様>子供の成長は親の喜びですね。(^^)(minazuki) kayui様>みんな良い子ばかりですね〜。(^^)(minazuki) 志築 刀麻様>かいてて思うのですが何人いるんだとうとふと思うことがあります。(笑)(minazuki) nanashiの人様>誤字報告ありがとうございます。(><)(minazuki) st205gt4様>もう一刀の親バカは止まりません♪(minazuki) ハイドラ様>誤字報告ありがとうございます。(><)(minazuki) 凄く善い話でした。次は誰だ?! 次作期待(クォーツ) おもわずニヤニヤしてしまいました。(龍威旋) なんというツンデレ母娘wそして親たちは子供達の成長を喜びまた子作りに励むとwww(まーくん) ほのぼのとしてます。いいな〜一刀。将来こんな娘たちが欲しいですww(kayui) 続々と娘たちが登場してきたので、これからの展開が楽しみです。更新、頑張ってください。(石川カナタ) とてもらしい話ですごくよかったなぁ 2P 話が出来るの→の× でも俺が言った→言って 姉妹であることは間違いと→間違いないと? 自身持って→自信 (nanashiの人) いい話です・たしかにありそうだ・・一刀の親ばかぶり笑えるな(st205gt4) |
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