その体験は、連載漫画化されてゆく
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その体験は、連載漫画化されてゆく

 

 

 

「まんが描くの手伝ってくれてありがとうね、千代ちゃん。すっごい助かってるよー」

「ううん、私、元の世界でもこういうことやってたから、むしろ懐かしくて安心できるよ」

「へーっ、もしかして、千代ちゃんもまんが家さん?」

「あっ、そうじゃなくてね。友達……うん、友達が少女漫画家で、ベタ塗りとか手伝ってて。元々、少女漫画が大好きだったから、すっごくそれが楽しくて」

「そうだったんだ!そのせいかな?千代ちゃんがベタ塗ってくれる時、すごい気合が入っているっていうか、まんが好きだなー、って気持ちが伝わってくるよー」

「そ、そう?そんなにわかりやすいかな……」

 私がこの世界、エトワリアに召喚されてから一週間ぐらい。

 なんとなく“私の居場所”は小夢ちゃんたち、漫画家の子たちのところに決まってきていた。

 よくわからない。本当によくわからないことに、私はこの異世界に召喚されてしまった。それも、普通は何人かまとまって召喚されるはずなのに、私一人。

 なんとなく事情を聞いていると、私の周りの“キャラの濃い人”が主に男子だったのが原因な気がするんだけど。

「(結月はカウントから漏れたのかな……。後、鹿島くんも)」

 何はともあれ、たった一人で異世界に放り出されて、これから上手くやっていけるのかな、と不安だったんだけど、そんな中でまさか少女漫画を描いている子と知り合いになれるなんて。

「ところでさ、千代ちゃんの好きな少女まんがのヒーローって、どんな人?」

「えっ、突然だね。そうだなぁ……」

 なんとなしに小夢ちゃんの原稿を見ながら考える。いや、本当はもう決まっているんだけど。

「思ったんだけど、小夢ちゃんの漫画のヒーローってちょっと中性的な感じだよね。小夢ちゃんの好みなの?」

「あばっ!?う、うん、そう、だけどっ……」

「なんでそこで赤面!?というか、微妙にかおすちゃんみたいになってるし!」

「だ、だって、そのっ……理想の人をモデルにしちゃってるから……」

「へぇ、小夢ちゃんの理想の人って……」

 う、うん……?よく見るとこの髪型とか、体つきも……現実で見たことがあるような。いや、間違いない。小夢ちゃんの漫画家仲間の……翼ちゃん?

 な、なるほど……彼女も中性的な感じだけど、あの子をモデルにしていたからこういう感じに……。

「え、えっと、それで私の好みだっけ。ちゃんと答えないとね」

 小夢ちゃんが教えてくれたんだから、私も正直に答えないと。

「背が高くて、こう、昔はバスケ部やってそうなぐらいの体型でね。見た目はちょっとぼーっとした感じというか、それで目がこう、三白眼って言えばいいのかな。そういう感じのヒーロー、かな?」

「えぇっ、そういう人でいいの?」

「だ、ダメかな……?」

「好みは人それぞれだと思うけど、前に担当さんが、三白眼のヒーローはダメって言ってたから……」

「えぇっ!?た、確かに、少女漫画のヒーローでそういう人って見ないけど……」

「えっ、じゃあ今挙げたキャラって……?」

「な、なんでもない!なんでもないから、忘れて!!」

 そ、そうだった。野崎くんは少女漫画家であって、少女漫画のヒーローじゃないし。というか、ああいうヒーローが出る訳ないし……でも、好みのタイプはというと……。

「こ、小夢ちゃん。今日のことは誰にも話さないようにしようね」

「そ、そだね。それより、せっかくだから千代ちゃんの世界の人のこと、話してくれないかな?」

「今、十分言ったのに!?」

「えっ!?」

「こ、こほん……そ、そだね。えっと、これは漫画にも活かせるかもなんだけど、みこりん……御子柴くんっていう友達がいたんだけどね」

 こういう時に真っ先に話すのがみこりんで、なんかごめん……!でも、誰かに話す時はこれ以上がないほど盛り上がりそうな話になっちゃうから……!

「わぁ、すごいね、その人!すっごくまんがになりそう!!」

「もうなってるんだよ……」

 まあ、男の子は基本的に召喚されないみたいだし、許して、みこりん。一人だけ例外がいるとは聞いたけど、女の子みたいに可愛い子が大丈夫なら、逆に男の子みたいな女の子はどうなんだろう……鹿島くん、そこに引っかかってるのかな。

「後、女友達だとね、結月って言って――」

 なんかもう、こっちは作品の雰囲気(?)に合わないから来ない気がするから、話題に出しちゃった。なんというか、割りとみんなほんわかしている感じなのに、ここに結月が来たら色々と台無しになっちゃうって言うか、少女漫画に火炎放射器持ったヒャッハーが登場するみたいな……。

「何それ、すっごい気になる!少女まんがにできるよ!」

「もうなってるんだ……」

「へー、すごいんだねー、その野崎くんって。でも、好きなまんが家さんにサインもらって、そのままアシスタントになっちゃなんて、すっごいことだよね!私もそういうの憧れるけど、自分がもうまんが家になっちゃったから」

「そっちの方がすごいよ!でも、野崎くんみたいな漫画家って珍しいと思ったけど、小夢ちゃんの周りにはいっぱいいるんだね。それも、少女漫画だけじゃなくて、バトル漫画とか、4コマ漫画とか、後、そういうのとか」

 というか、一応はその、エッチなものと思うんだけど、いいのかな、色々と……。

「そういえば、怖浦先輩も来てくれたら楽しいのに、まだなんだよね。その先輩はホラーまんが描いてるんだけど」

「ホ、ホラーの人もいるんだ。でも、漫画家寮かぁ。ほとんど野崎くん家がそういう風になってる感じだけど、憧れるなー」

「だったら、せめてこっちにいる間はここでゆっくりしていってね!」

「うん、そうさせてもらうね。こっちで起きたことの記憶とか、持って帰れる訳じゃないんだろうけど、やっぱり漫画描いてるのって楽しいし!」

「えへへー、少女まんが好きに会えて私も嬉しいよー。ゲームが好きな子とか、イラスト描くのが好きな子は結構いるけど、意外と少女まんがが大好きー、って子は召喚されてないんだよね」

「こんなに女の子がいるのに、確かに意外だよね。まあ、女の子だからってみんな好きってものじゃないだろうけど。でも、私も小夢ちゃんに会えてよかったよ」

「ねね、もっと千代ちゃんのこと、詳しく教えてくれない?少女まんが家の男の子と、そのファンからアシスタントになった女の子のまんがとか、描いてみたくなっちゃった!」

「え、ええっ、そういうのはいいよ……!」

「ヒーローの見た目も、できるだけ千代ちゃんの好みに近づけてみるからね!」

「だから、私の理想のヒーロー像は現実とは何の関係もないからぁ!!」

説明
次の長めのきらファン小説の布石的な小説なんで、初投稿です
全く意識はしていませんでしたが、3月3日は小夢ちゃんの誕生日ということで、おめでとうのアーイ

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