英雄伝説〜灰の軌跡〜 閃V篇
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その後順調A班同様順調に要塞の攻略を続けていたB班の攻略も終盤に差し掛かっていた。

 

〜グラーフ海上要塞・B班〜

 

「かなり進んできたけど…………天守閣まであとどのくらいかな?」

 

「あともう少しだと思います。こちらは猟兵も見当たりませんし、なんとか無事に辿り着けそうですね。」

 

「ハッ、つまらねぇな。やっぱ主攻に行くべきだったか?」

 

「ふう、だから蒸し返すのは―――」

 

「――――そ、そこに誰かおるのか!?」

つまらなそうにしているアッシュにクルトが注意したその時、ユウナ達の背後にある扉から声が聞こえてきた。

「この声は…………」

 

「ふむ、誰かいるみたいだね。」

扉から聞こえてきた声が気になったユウナ達が扉を開けて広間に入ると、そこにはミリアム同様光の檻に囚われたバラッド侯爵や気絶しているバラッド侯爵の私兵達がいた。

「お、お前達は…………!」

 

「…………バラッド侯。」

 

「あの人がフォートガードの臨時統括領主である例の…………」

自分達を見て驚いているバラッド侯爵を複雑そうな表情で見つめて呟いたアルフィンの言葉を聞いたエリゼは表情を厳しくした。

 

 

「こ、こんな所にいたんだ…………!」

 

「この光の檻は”鉄機隊”が用いていた拘束用の檻だな。」

 

「という事はバラッド侯爵達は鉄機隊に囚われていたようですね。」

ユウナは厳しい表情でバラッド侯爵を睨み、光の檻に見覚えがあるレーヴェの説明を聞いたツーヤは推測をした。

「クッ、何故よりにもよって学生どもにログナーの息女が…………い、いやこの際誰でもいい!とっとと助け出すがよい!」

 

「なんだ、このオッサン。てめぇの立場がわかってねぇのか?」

 

「自分の事しか考えない典型的な三流貴族じゃな。」

 

「ふふ、まあまあ。」

バラッド侯爵の命令に呆れているアッシュとリフィアをミュゼが苦笑しながら諫めようとした。

「一応、解放して差し上げよう。」

そしてユウナ達は光の檻を何とかしようとしたが、何をやっても解けなかった。

 

 

「う〜ん、どうやっても解けないんですけど…………」

 

「檻の中にバラッド侯爵達がいるから、魔術で強引に破壊する訳にもいかないものね…………」

檻が解けない事にユウナとゲルドはそれぞれ考え込んだ。

「ミリアムさんを捕らえたのと同じ拘束術みたいです。鉄機隊を何とかしない限り、解除は難しいかと。」

 

「ハッ、時間の無駄だな。とっとと行くとしようぜ。」

 

「――――同感だな。これ以上あのような愚物の為の無駄な時間を取る必要はない。」

アルティナの分析を聞いたアッシュはバラッド侯爵を見捨てる事を決め、アッシュの意見にレーヴェは静かな表情で頷いた。

「ま、待つがいい!この私を見捨てるつもりか!?この私を―――帝国最大の貴族、次期カイエン公たる人間を!!他の者などどうでもよい―――私を連れて脱出するがいい!」

 

「ど、どうでもいいって…………―――誰のせいでこんなことになってると思ってるんですか!」

 

「ひっ…………!?」

バラッド侯爵のあまりにも愚かな発言に一瞬絶句したユウナだったがすぐにバラッド侯爵を睨んで怒りの声を上げ、ユウナの怒りに圧されたバラッド侯爵は思わず悲鳴を上げた。

「自分勝手な思惑だけで准将さんたちを散々振り回して!挙句の果てに列車砲を奪われて新海都の人達を危機に晒して―――!」

 

「…………ユウナさん。一応、大貴族相手です。」

 

「へえ…………何となくエステルと似ているよね、ユウナって。」

 

「む?言われてみれば確かに…………」

 

「ふふっ、相手の身分に怖じ気ず自分の意見をハッキリ言える所とかはまさにそっくりですよね。」

バラッド侯爵に怒りの声を上げるユウナにアルティナが複雑そうな表情で注意し、その様子を見ていたエヴリーヌの感想にリフィアは目を丸くし、プリネは微笑んでいた。

「――――ユウナさんの言う通りですよ、バラッド侯。自分の身を最優先にしている貴方はカイエン公爵以前に”貴族”として失格ですわ。」

 

「何だと!?よくもこの私に向かってそのような不敬な発言を――――って、ア、アアアアアアア、アルフィン皇女殿下ッ!?な、何故皇女殿下までアンゼリカ嬢達と共に…………!?」

 

「クク、このオッサンでもシュバルツァーのツレになって皇女じゃなくなっているとはいえ、元祖国の皇女相手には強気に出れないようだな。」

 

「フフッ、例え降嫁された事でアルノール家の一員でなくなっているとはいえ、姫様は未だエレボニア皇位継承権をお持ちの上、姫様がエレボニアにとって尊敬すべき皇女殿下であり、ご両親である皇帝陛下夫妻に大切にされ続けている事は変わりませんもの。」

するとその時アルフィンが前に出て真剣な表情でバラッド侯爵を睨んで指摘し、アルフィンの指摘を聞いたバラッド侯爵はアルフィンを睨んで反論しようとしたがすぐにアルフィンの正体に気づくと表情を青褪めさせて狼狽え、バラッド侯爵の様子を見て口元に笑みを浮かべているアッシュにミュゼは静かな笑みを浮かべて答えた。

「―――リィンさんに降嫁した事でアルノール皇家の一員ではなくなり、メンフィル帝国に所属している今のわたくしに貴方達エレボニア貴族を含めた今のエレボニアの政治に口出しする権利はございませんが…………それでもエレボニアの皇位継承権を所有している者の一人として、バラッド侯――――我が身可愛さの為だけに兵達だけでなく、フォートガードの領民達を見捨てようとする貴方には前カイエン公―――クロワール・ド・カイエン同様エレボニアの貴族達を束ねるカイエン公爵家当主の”器”でない事は断言致しますわ!」

 

「う…………っ!?」

 

「皇女殿下…………」

 

「ふふ、さすが姫様ですわ♪」

 

「フム………話によればアルフィン夫人は典型的な”籠の鳥”の皇女との事じゃったが、どうやら評価を改める必要がありそうじゃな。」

 

「ま、2年前の内戦をリィンやエヴリーヌ達と一緒に解決したから、成長くらいはしていると思うよ?キャハッ♪」

 

「もう、お二人とも…………アルフィン夫人に失礼ですよ…………」

威厳を纏って自分を睨んで宣言したアルフィンの宣言にバラッド侯爵は反論できず唸り、クルトは尊敬の眼差しでアルフィンを見つめ、ミュゼは微笑みながらアルフィンを称え、感心した様子でアルフィンを見つめて呟いたリフィアにエヴリーヌが指摘し、リフィアとエヴリーヌの発言にプリネは呆れた表情で溜息を吐いた。

「ま、数々の失態の責任は後日きちんと諮(はか)らせて頂きますから、その点はご安心ください、殿下。――――中断した領邦会議の席上でね。」

 

「ぐっ…………アンゼリカ嬢、そなた…………」

アルフィンの隣に来て答えたアンゼリカの言葉を聞いてある事を察したバラッド侯爵は苦々しい表情を浮かべてアンゼリカを睨んだ。

 

「――――申し訳ありませんが、閣下。自分達には使命がありまして。」

 

「ふふ、必ずや後で解放されるよう取り計らせていただきます。―――それではまた、”後日”。」

 

「へ…………」

 

(あん…………?)

ミュゼの意味ありげな最後の言葉にバラッド侯爵が呆けている中アッシュは眉を顰めたが、すぐに気を取り直してユウナ達と共に広間から出て要塞の攻略を再開した。

 

 

〜A班〜

 

 

「貴様らは…………!」

リウイ達の協力でリフィア達の協力を受けているユウナ達同様破竹の勢いで進み続けているリィン達A班が天守閣へ続く最後の扉に近づいたその時、扉から北の猟兵達が現れた!

「アンタたち…………!」

 

「北の猟兵の主力か…………!」

 

「サラ・バレスタイン―――灰色の騎士に聖竜の姫君!!」

 

「―――そ、それにそこにいるのは…………!?」

 

「――――”英雄王”…………!!」

リィン達を睨んでいた北の猟兵達だったがリウイに気づくと血相を変えてそれぞれ散って武装を構えた。

「チッ…………」

 

「トーゼンこっちにも待ち構えてたみたいだね〜。」

 

「ま、でも北の猟兵の戦力は彼らで最後でしょうね。」

身構えた猟兵達を見たユーシスは舌打ちをし、ミリアムとレンはそれぞれ分析していた。

「…………ふ…………ふははっ…………!!」

 

「まさか…………”英雄王”が直々にここに来ていたとは…………―――故郷が奪われる原因となった戦争を勃発させる事を決めた貴様に、復讐できる日が来るとはな…………!!」

 

「っ…………!!」

 

「…………故郷か。」

 

「確かにノーザンブリアが併合された原因は”七日戦役”も含まれているとは思いますが…………」

 

「そもそも”七日戦役”の勃発原因の一つである北の猟兵達がパパやレン達メンフィルを恨むなんて完全に逆恨みだし、例え”七日戦役”が勃発しなくても、ノーザンブリアはエレボニアに併合されていたでしょうねぇ。」

リウイに対する憎しみの言葉を口にした猟兵達の言葉を聞いたリィンは息を呑み、ガイウスとセレーネは複雑そうな表情をし、レンは呆れた様子で推測した。

「くっ…………やめなさい、アンタたち!そもそもあの戦争はアンタ達が”元凶”の上そんな事したって何も―――」

 

「―――いや、これも俺がつけるべき”けじめ”だろう。」

猟兵達を説得しようとしたサラだったがリウイの制止の言葉を聞くとリィン達と共に驚いてリウイを見つめた。

「我が名はリウイ・マーシルン。元・メンフィル皇帝にしてノーザンブリアが滅ぶ原因の一つとなった前アルバレア公爵に雇われたお前達”北の猟兵”の同胞が起こした”ユミル襲撃”を理由にメンフィル・エレボニア戦争を開戦する事を決めた張本人の一人だ。お前達の悔恨と慙愧、そして憎悪の全てを引き受けてやろう。英雄王が首級(しるし)―――刈り取れるものならば取ってみるがいい!!」

 

「…………!!」

 

「言われるまでもない…………!」

 

「あなた…………」

 

「リウイ様…………」

 

「……………………」

 

「くっ…………!!」

リウイにたきつけられた猟兵達がそれぞれ戦意を高めている中、リウイの猟兵達に対する気づかいに気づいていたイリーナとペテレーネは辛そうな表情でリウイを見つめ、リアンヌは目を伏せて黙り込み、猟兵達を説得できなかったことにサラは唇をかみしめていた。

「邪魔をするなら貴様らもだ!」

 

「北の大地(ノーザンブリア)の名の下に揃って堕ちるがいい…………!」

そしてリィン達は猟兵達との戦闘を開始し、それぞれ連携して猟兵達を戦闘不能に追い込んだ!

 

 

「ぐふっ…………」

 

「こ、これが、英雄王…………紫電に灰色の騎士どもか…………」

 

「よし…………!!」

 

「フン…………何とか制圧したか。」

 

「――――殺せ!!」

猟兵達との戦闘に勝利したリィン達だったが、猟兵の一人が叫んだ信じられない要求にそれぞれ驚いた。

「へっ…………!?」

 

「…………何を…………」

猟兵の突然の要求にミリアムとガイウスはそれぞれ困惑した。

「ここは戦場…………!お前達は勝ったのだ!ここまでした我らに情けなど要るまい…………!?」

 

「……………………」

 

「――――履き違えるな、名もなき猟兵達よ。ここはお前達の”死に場所”ではない。」

猟兵の叫びにサラが辛そうな表情で顔を俯かせている中リウイが意外な言葉を口にして猟兵達を驚かせた。

「俺はお前達の誇りに免じてお前達の故郷が滅ぶ原因の一人としての義理を果したまでだ。そして勝負がついた以上、無為の血を流す趣味はない。」

 

「あなた…………」

 

「リウイ様…………」

リウイの猟兵達に対する心遣いにイリーナとペテレーネは微笑んだ。

「くっ…………!」

 

「…………故郷のみながらず死に場所まで奪われるのか…………」

 

「それならば…………!」

一方猟兵達はリィン達に止めを刺してもらう事を諦めて自ら命を絶つためにそれぞれ懐から取り出した自決用の武器を首筋にあてた。

「ああっ!?」

 

「駄目だ…………!!」

 

「――――オオオッ!」

それを見たミリアムが驚き、ガイウスが制止の言葉をかけたその時鬼の力を解放したリィンが一瞬で猟兵達に詰め寄って次々と猟兵達の自決用の武器を叩き落した。

「ぐっ…………」

 

「がっ…………」

 

(くっ、間に合わな―――)

次々と自決を阻止したリィンだったが最後の一人の自決の阻止は間に合わない可能性が高いとリィンが判断したその時銃声が鳴り響いたが、銃口はいつの間にか猟兵に詰め寄っていたサラによって天井に向けられていた為自決は阻止された。

 

 

「あ…………」

 

「バレス、タイン…………?」

 

「その異名通りまさに”紫電”のような速さでしたね…………」

サラの行動にユーシスと猟兵が呆けている中エクリアは驚きの表情で呟いた。

「――――甘ったれてんじゃないわよ!アンタたちは―――あたしたちは”誇り”のために命を賭けてたんじゃないでしょう!?故郷の貧しさを、誰かの空腹を、ほんの少しの間紛らわせるために…………!子供達を少しでも笑顔にできるそんな二束三文のミラのために…………!―――血と硝煙に塗れたとしてもその生き方を選んだんでしょうが!?っ…………だったら…………だったら最後までその”欺瞞”を貫いてみせなさいよ…………!そうじゃなかったら、大佐が…………パパがあまりにも浮かばれないじゃない…………」

 

「…………ぁ…………」

 

「サラさん…………」

 

「……………………」

サラの怒りと悲痛の叫びに猟兵は呆け、セレーネは心配そうな表情でサラを見つめ、リアンヌは目を伏せて黙り込んだ。

「これも巡り合わせ、か…………」

 

「サラ…………バレスタイン大佐の娘よ。」

 

「お前が来た事を…………女神たちに感謝しよう―――」

サラの説得によって自決を諦めた猟兵達は気を失ってそれぞれ地面に倒れた。

「グスッ…………ふふ、君達にはつくづくみっともない所を見せるわね…………」

 

「フッ、今更だろう。」

 

「故郷を想う彼らの気持ち、わからなくもないが…………」

 

「それでも無駄死になんてやっぱり”哀しい”もんね。」

 

「ああ…………サラさん、お疲れ様でした。」

 

「ふふ…………君達もありがとう。リウイ陛下も感謝します。…………彼らに全力で応えてくれて。」

 

「礼は不要だ。俺は俺の義務を果たしただけだ。時が惜しい―――先に進むぞ。」

 

「ええ…………!」

そしてリィン達は要塞の攻略を再開した。

 

 

〜北ラングドック峡谷〜

 

一方その頃、峡谷での戦闘は佳境に入っていた。

「おらあああっ…………!」

 

「そこだあっ…………!」

 

「まだだぜぇっ!」

アガットとランディ、そしてランドロスの連携攻撃をガレスは次々に回避してアガット達と距離を取った。

「さすがは若…………!”重剣”や”紅き暴君”も若と同等かそれ以上の相当な使い手…………だが、だからと言って”赤い星座”がこれで終わると思ったら大間違いである事を思い知らせてやろう…………!」

ランディ達の強さに感心したガレスだったがすぐに気を取り直してライフルを構えた。

「チッ、お前の古巣、あれはもはや執念の塊のようなものだろ…………!?」

 

「いや全く、申し訳ねぇ…………!―――いい加減にしやがれ、この頑固野郎が!赤い星座は親父に叔父貴、そしてシャーリィ――――――赤い星座を率いていた”オルランド”の一族が全滅した時点でもうとっくに終わってんだよ!」

 

「クク、面白くなってきたじゃねぇか!」

アガットの文句に対して謝罪したランディはガレスを睨んで声を上げ、ランドロスは獰猛な笑みを浮かべて声を上げた。

 

 

「ほらほら、そこだよ!」

 

「させるかよっ…………!」

一方カンパネルラと戦っていたトヴァルはカンパネルラの魔法攻撃に対して瞬時に最高位アーツであるセヴンスキャリバーを発動して相殺した。

「あはは…………!驚くほどの早さじゃないか!さすが”総長どの”に気に入られてるだけあるね!」

 

「だあっ、あいつの名前を出すんじゃねえっての…………!―――法国で起きているのはお前達の仕掛けだな…………!?」

 

「アハハ、エレボニアでの決着を邪魔されたくはないからねぇ…………!」

トヴァルの問いかけに対してカンパネルラは不敵な笑みを浮かべて答えた。更にもう一方、ウォレス准将はカンパネルラの幻術によって現れたマクバーンの幻影と戦っていたが、幻影の様子に変化が現れた事に気づいた。

「むっ…………!?」

 

「―――――――!!」

マクバーンの幻影は声なき咆哮を上げると何と”火焔魔人”と化した!

「まさか幻影まで”火焔魔人”と化するとはな…………―――総員、俺から離れろ!!」

魔人化した幻影を見たウォレス准将が背後にいる部下たちに指示を出した後、幻影は凄まじい炎の攻撃をウォレス准将に向けて放った!

「ウオオオオオオオッ…………!ハアアアアアアッ…………!」

しかしウォレス准将は十字槍を振り回して竜巻を発生させ、何と幻影の凄まじい炎の攻撃を防いだ!

「…………ふう、何とか凌げたか。」

攻撃を防いだウォレス准将は安堵の溜息を吐いた後戦闘を再開した。

 

 

「今だ、かかれ―――!」

するとその時ミハイル少佐の号令が戦場に響き渡るとドラッケンとシュピーゲルがブースターで上昇して列車砲に近づいていた。

「ゼシカ、エルンストさん、お願いします…………!」

 

「ええ…………!」

 

「あたいに遅れんじゃないよ、雛鳥共!」

ブースターによる上昇で列車砲の近くを陣取っている猟兵達に接近したドラッケン達は攻撃を開始した!

「はああっ…………!」

 

「アッハハハハハハッ!」

 

「な………っ!?」

 

「おおっ…………!?」

 

「ハッ、もらったよ…………!」

シュピーゲルとエルンストの牽制攻撃に猟兵達が驚いている所をレオノーラを始めとした戦術科のメンバーとミハイル少佐が背後から強襲して猟兵達を無力化した!

「よし―――次だ!」

 

「イエス・サー!」

そしてミハイル少佐の指示によって戦術科は列車砲を陣取っている猟兵達を圧し始めた。

 

 

「おおっ、やるじゃねえか!」

 

「少佐さんの指揮もだが生徒達もやるねぇ…………!」

 

「…………ハハ…………しごいた甲斐があったか。」

 

「クク、それとオレサマ達による補習の成果も出ているじゃねえか。」

一方列車砲の奪還に気づいたカンパネルラ達が戦闘を中断して撤退した事でそれぞれ戦闘を停止して生徒達の戦いを見守っていたアガット達はそれぞれ感心していた。

「…………ここまでか。」

 

「ふふっ…………後は本命にお任せかな?」

ランディ達とは別の場所で戦いを見守っていたガレスは重々しい口調で呟き、カンパネルラは意味ありげな笑みを浮かべて答えた後転移魔術によってその場から去り、ガレスを始めとした赤い星座の猟兵達も撤退を開始した。

 

 

「列車砲―――!2基とも制圧完了!」

ウォレス准将が幻影を撃破すると同時にミハイル少佐の報告が戦場に響き渡った。

「お疲れ様でした…………!」

 

「ですが、海上要塞が…………!」

 

「わかっている―――これより全軍、グラーフに戻る!第1、2のみ峡谷一体を確保してくれ!第三はオルディスのユーディット皇妃陛下に列車砲奪還の報告をした後、グラーフに戻れ!」

 

「ハッ…………!」

 

(頼むぞ、シュバルツァーにガイウス、新旧Z組の面々…………)

部下たちに指示を終えたウォレス准将は海上要塞がある方向に視線を向けてリィン達の武運を祈った。

 

 

〜同時刻・グラーフ海上要塞前〜

 

同じ頃要塞前に到着したトワ達主計科\組だったが、要塞へと続く大橋の周辺で繰り広げられているファーミシルス達とルトガー達との戦闘があまりにも凄まじく、近づけなかった。

「ひええええええっ!?」

 

「”百日戦役”でエレボニア帝国軍を一方的に蹂躙して勝利し続けた事から”ゼムリア大陸真の覇者”と呼ばれているメンフィル帝国軍の中でも有名な武将達は凄まじい使い手だっていう話は聞いてはいたけど…………」

 

「みんな、信じられないくらい無茶苦茶な強さやで…………!」

 

「ニーズヘッグの猟兵達は既に全滅させられている上、”西風の旅団”の猟兵達まで圧されていますものね〜。」

 

「………まあ、彼らの場合ニーズヘッグを相手にしていたメンフィル帝国の使い手達まで”戦妃”達に加勢しているからというのもあるでしょうけど…………」

 

「と、特に”空の覇者”と名高いファーミシルス大将軍閣下は凄まじ過ぎますよね…………大陸最強の猟兵団の一つである”西風の旅団”を率いる”猟兵王”と一騎打ちで優勢のご様子ですし…………」

距離を取っているにも関わらず感じ続ける戦闘の余波にカイリは思わず悲鳴を上げ、スタークとパブロは信じられない表情で戦闘の様子を見守り、既に討ち取られ、大橋周辺に散乱しているニーズヘッグの猟兵達の死体を見回して呟いたルイゼの感想に続くようにヴァレリーは自身の分析と共に答え、タチアナはおどおどとした様子でルトガーと一騎打ちを続けているファーミシルスの様子を見て呟いた。

「それ以前にあんなにも多くのメンフィル帝国の関係者が介入してあんな大規模な戦闘を繰り広げるなんて話、せめてわたし達にも前もって知らせて欲しかったよ…………ううっ…………」

 

「アハハ…………しかも要塞の攻略には分校長どころかリウイ陛下達まで加勢しているという話ですものね。」

疲れた表情で頭を抱えて呟いたトワの言葉を聞いたティータは苦笑しながら要塞を見つめ

「あの、教官…………本当に私達は加勢しなくていいんですか?」

 

「さっきも言ったように、明らかに実力が離れ過ぎている私達が加勢したらむしろファーミシルス大将軍達の足を引っ張る事になるから、今は決着が見守るまで待つしかないよ……………………」

サンディの問いかけに答えたトワは複雑そうな表情を浮かべてカーリアン達との戦いによって劣勢に陥っているジークフリードを見つめた。

 

 

「それぇっ!白露の桜吹雪!!」

 

「闇に呑まれるがいい――――ティルワンの死磔!!」

 

「うおおおおおおっ!?ガハッ!?」

 

「しもうた!?――――ぐああああああっ!?」

 

「く…………っ…………がああああああっ!?」

ニーズヘッグを殲滅し終えてカーリアン達に加勢したセオビット達の攻撃を必死で対処し続けたゼノ達だったが、猛者揃いの数の暴力はどうしようもできず、徐々に傷つき疲弊し、それぞれカーリアンやディアーネの大技や上位魔術を受けて大ダメージを受けて悲鳴を上げ

「喰らえ―――ラグナドライバー!!」

 

「我が力、思い知りなさい―――暗礁電撃剣!!」

 

「うおっ!?」

一方雷撃を纏わせたバスターグレイブでファーミシルスに襲い掛かったルトガーだったが、暗黒の雷を宿したファーミシルスの連接剣によって弾かれてゼノ達の所へと吹っ飛ばされた。

「団長、大丈夫か!?」

 

「ああ…………だが、参ったねぇ…………以前戦った時よりも遥かに強くなっていやがる。やれやれ、若いモンの成長の速さには年寄りは敵わねぇよ。」

 

「ハハッ、そんな事言える余裕があるんだから、まだまだ大丈夫のようやな…………!」

自分達の所に吹っ飛ばされたルトガーを気にかけたゼノだったがいつもの調子のルトガーの様子に苦笑しながら答えたが

「だが…………こちらの方は本格的に不味くなってきたな…………」

 

「せやな…………ニーズヘッグの連中を殲滅し終えた連中まで加勢し始めたからな…………ただでさえ団長クラスの”闘神”を殺った”戦妃”と”聖魔皇女”が呼んだ使い魔の姉ちゃんに苦戦しているのに、そこに”紅の殲滅姫(クリムゾン・ルインプリンセス)”達まで加勢とか、まさに”絶体絶命”の状況やで…………おい、”蒼のジークフリード”やったか?やっぱ、”オルディーネ”はまだ直ってへんのか?」

 

「…………先月の”イレギュラー”共との戦闘によってオルディーネは機体どころか核(ケルン)まで甚大な被害を受けてしまったからな…………”長”が直々にクロスベルから何とか核(ケルン)を奪還し、その核(ケルン)を元にオルディーネを一から作り直している為、オルディーネの復活は”星杯”が現れる予定日にギリギリ間に合うといった所だ。」

厳しい表情を浮かべているレオニダスの分析に表情を厳しくして頷いた後ジークフリードに訊ね、訊ねられたジークフリードは静かな表情で答えた。

「かといってここで”ゼクトール”を呼んだ所で、クロスベルの二の舞になりそうだから、”ゼクトール”を呼べばむしろ状況は悪化するだろうな。要塞に侵入して、要塞内を逃げ回って連中の目を掻い潜って要塞から撤退する方法もあるが…………問題はここから要塞へ向かっても、”空の覇者”を含めた向こうの飛行戦力がすぐに追いついて挟み撃ちになる危険性があるからな…………さて、どうやってこの状況を切り抜けるか…………」

 

「「……………………」」

そしてルトガーが現在陥っている自分達の危機的状況を切り抜ける方法を考えていたその時、ゼノとレオニダスは決意の表情を浮かべて互いに視線を交わして頷いた後ルトガーにとって驚きの提案を口にした。

「……………………”蒼のジークフリード”、団長を連れて”転移”で撤退する事は可能か?」

 

「可能だが…………元々一人用であるこの転移の魔導具で更に一人加えて転移魔導を発動させるには少々時間がかかる。」

 

「その時間は具体的にはどのくらいや?」

 

「さすがに専門外の為、5分―――いや、せめて3分ほどあれば可能とは思うが…………」

 

「おい、お前達まさか…………」

ジークフリードに問いかけたレオニダスとゼノの問いかけを聞いてある事を察したルトガーは血相を変えて厳しい表情でゼノとレオニダスを見つめた。

 

 

「ああ…………その”まさか”や。」

 

「俺達はここに残って団長達が撤退する時間を稼ぎ、俺達自身は自分達の力で血路を開いて撤退するつもりだ。」

 

「…………短い間やったけど、団長とまた一緒にいれて、楽しかったで。…………ま、最後にフィーと会えなかったことはちょっとした心残りやけど…………サザ―ラントで再会できてんから、それでよしとするか。」

 

「フィーには遊撃士として成功する事を俺達は祈っている事を伝えておいてくれ。―――さらばだ、団長。」

 

「おい、待て、ゼノ、レオッ!!」

ゼノとレオニダスはルトガーの制止する声を無視してファーミシルス達へと向かい

「くっ…………早まった真似をしやがって、あの馬鹿野郎共が…………!来な――――『長の指示を破るつもりか?』…………てめぇ、俺に古巣の戦友達を見捨てさせるつもりか?」

それを見たルトガーはサザ―ラントでリィン達に見せた紫色の騎神らしき存在―――ゼクトールを呼ぼうとしたが、ジークフリードに銃口を向けられると呼ぶのを中断してジークフリードを睨みつけた。

「重ねて言うが”地精”はこれ以上の”イレギュラー”が起こる事を望まない。―――ましてや”相克”どころか、”終焉”すらも始まっていない状況でゼクトールの”起動者”たる猟兵王、お前を失う訳にはいかない。…………お前にも何か目的があり、我ら”地精”に雇われたのではないか、猟兵王?」

 

「…………ッ!馬鹿野郎共が…………ッ!」

ジークフリードに図星を突かれたルトガーは唇をかみしめた後ファーミシルス達に向かって行くゼノ達の背中を辛そうな表情を浮かべて見つめた。

 

 

「あら?猟兵王と仮面の男は突撃してこないようだけど、なんのつもりかしら?」

 

「大方、突撃してくる二人は”猟兵王”と”蒼のジークフリード”が転移による撤退をする時間を稼ぐための”捨石”といった所でしょうね。」

 

「ほう?自ら殺されに来るとはバカな連中だ。ならばその望み通りにしてやらないとな!」

 

「ええ、父様達の敵を確実に殺せる機会を逃すわけにはいかないわ!」

一方突撃してくる二人を見て首を傾げているカーリアンにファーミシルスが自身の推測を答え、ファーミシルスの説明を聞いたディアーネとセオビットは凶悪な笑みを浮かべた。

「フウ………この人数でタコ殴りをして殺すとか、弱いもの苛めをしているようで正直、気が進まないんだけど……………………リウイ達から連中の”雇い主”が”幻燐戦争”みたいなことを起こしてそれにイリーナ様とようやく再会できたリウイを含めたメンフィルを巻き込もうとしている事を知った以上、リウイ達の為にも連中の戦力を削れる時には削っておかないとね……………ファーミはお目当ての”猟兵王”を見逃してもよかったのかしら?」

疲れた表情で溜息を吐いたカーリアンだったがすぐに目を細めてジークフリードを見つめた後ファーミシルスに訊ね

「ええ、未来の並行世界から来た新Z組の情報によると猟兵王も”星杯”で彼らを阻んだとの事だから、猟兵王との決着はそこでつけるつもりよ。」

 

「あら、そうなの。―――だったらその時は私も猟兵王と殺り合わせてもらうわよ―――!」

ファーミシルスの話を聞いて目を丸くしたカーリアンは口元に笑みを浮かべてファーミシルス達と共に自分達に向かってくるゼノとレオニダスとの戦闘を再開した!そして数分後、ルトガーとジークフリードは転移の魔導具によってその場から撤退する事ができたが、ファーミシルス達に向かって行ったゼノとレオニダスは既に絶命したニーズヘッグの猟兵達同様ファーミシルス達に討ち取られ、それぞれ最後はファーミシルスとカーリアンに首を刈り取られて絶命した!

 

 

「ま、こんなもんね。さてと…………こっちは終わった事だし、そろそろ私達もリウイ達の後を―――」

 

「あ、あの、お久しぶりです!」

ゼノとレオニダスの絶命を確認したカーリアンはファーミシルス達を促して要塞に突入しようとしたが、自分達にとって聞き覚えのある娘の声に呼び止められると振り向いた。

「あら、貴女は…………」

 

「ティータじゃない!懐かしいわね〜、会うのは”影の国”以来だから…………4年ぶりくらいかしら?」

自分達を呼び止めた娘―――ティータを見たセオビットは目を丸くし、カーリアンは懐かしそうな様子でティータに声をかけた。

「えへへ……カーリアンさん達と会うのはそれくらいになりますね。まさかこんな所で会えるとは思いもしませんでしたけど…………」

 

「フフ、それに関しては私達も同じよ。その制服って確かリィン達が派遣されているエレボニアの士官学院の学生服でしょう?まさか技術者見習いだった貴女が軍人見習いになるなんて、世の中わからないものね〜。」

 

「えへへ…………色々と事情はありますけど、第U分校に誘ってくれたオリビエさんのお陰でとても充実した学生生活を送らせてもらっています。」

カーリアンの言葉にティータは嬉しそうな表情をしながら答えた。

「ふふっ、それにしても士官学院で鍛えられた影響なのかわからないけど、随分と度胸がついたみたいね?あれ程の数の死体を目にしても動揺していないのだから。」

 

「言われてみればそうね…………確か分校長が転生したシルフィアだって話だから、シルフィア――じゃなくてリアンヌのお陰で度胸がついたのかもしれないわね♪」

ファーミシルスの指摘を聞き、ティータが自分達の背後にあるゼノ達の死体を目にしても動揺していない様子に気づいたカーリアンは目を丸くした後興味ありげな様子でティータを見つめた。

「あ……………………あのあの…………さっきカーリアンさん達が討ち取った”西風の旅団”の猟兵の人達の事で気になっていたんですけど…………どうしてカーリアンさんとファーミシルスさんは”らしくない事”―――自分達よりも実力が下の相手をみんなでよってたかって攻撃して殺したんですか…………?」

二人の会話を聞いて複雑そうな表情でゼノ達の死体に視線を向けたティータはカーリアン達に訊ねた。

「あら…………」

 

「…………詳しい事情は答えられないけど、連中はリウイ様達―――メンフィルにとって後の”災厄の種”になりうる組織に雇われていたから、”結社”の残党同様殺す機会があれば確実に殺す必要があったから、殺しただけよ。」

ティータの指摘にカーリアンが目を丸くしている中ファーミシルスは静かな表情で答えた。

「そう、ですか…………その、今グラーフ海上要塞を占領している元・北の猟兵や結社の”鉄機隊”の人達もやっぱり殺すんですか…………?」

 

「…………エレボニア政府との取り決めの件もあるから少なくてもリウイ様達は元・北の猟兵に関しては積極的に殺すつもりはないわ。”鉄機隊”に関しては…………リアンヌ次第と言った所でしょうね。」

そしてティータの質問に静かな表情で答えたファーミシルスはグラーフ海上要塞の天守閣に視線を向けた。

 

その後、その場をトワ達\組に任せたファーミシルス達はリウイ達の後を追う為に要塞に突入して、リウイ達の後を追い始めた――――

 

 

-2ページ-

 

という訳でV篇のゼノとレオニダスはここであっさり退場です。

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第90話
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