剣の終わりへ |
「ここは……?」
気付くとアシュレーは見たことも無い宇宙のような空間に寝かされていた。
そっと起き上がるとアシュレーは他の仲間を探しだした。
「ブラッド……リルカ! どこにいるんだ!?」
大声で叫んでもこの宇宙のような空間は自分の木霊すら聞こえてこなかった。
アシュレーは嫌な嫌悪感を感じ、焦ったように走り出した。
「みんな……いったい、どこに?」
『どこにもいない』
突如、聞こえた……
いや、頭の中に響いてきた男の声にアシュレーは驚いたように首を左右に振った。
「誰だ!? どこにいる?」
アシュレーの叫びに男の声はあざ笑うように笑った。
『気付かぬか……我は今までお前と一緒に戦ったものだ』
「一緒に戦った……もしや!?」
アシュレーは気付いたように目を見開いた。
この声は聞いたことがあった。
いつも、内なるものから感じた嫌な感覚……
それはいつも自分の中にいた。
『その通り……我が名はロードブレイザー、焔の災厄呼ばれた悪魔よ』
その瞬間、アシュレーの身体から真っ赤な焔が溢れ出し、悪夢を形作るように一体の魔人が現れた。
それこそ、遥か昔、焔の災厄といわれた悪の権化、ロードブレイザーそのものであった。
『感謝するぞ……アシュレー・ウィンチェスター。我を蘇らせてくれて?』
自分を見下すロードブレイザーにアシュレーは堰を切るように叫んだ。
「僕がお前を蘇らせただと!?」
『その通り、数多くの戦いを経て、人間のマイナスの力を吸収した我はついに実態を手にいれることに成功した……全てお前のおかげだ?」
ニヤッと笑みを浮かべるロードブレイザーにアシュレーは信じられない顔で叫んだ。
「ふざけるな! 今度こそ、お前を倒してやる!」
ガチャっと銃剣を構え、アシュレーは引き金を引いた。
バァンッと銃剣の銃口から爆発するような爆音が響き渡った。
しかし、アシュレーの銃剣の弾はロードブレイザーに直撃する瞬間、片手で弾き返されてしまった。
「なに!?」
「その程度か……?」
ロードブレイザーは両手を振り上げ、焔の災厄と呼ばれた悪夢を撃ち放った。
「ネガティブフレア!」
「クッ……!」
襲い掛かる炎を前にアシュレーは拳を握り締め、大声で叫んだ。
「アクセス!」
爆風に辺りが包まれ、アシュレーの身体が大地に何度も叩きつけられた。
「ガハッ……」
黒くよどんだ血を吐き出し、アシュレーは掠れた声でいった。
「変身できないだと?」
「バカな奴め……ナイトブレイザーは我の邪の力とアガートラームの聖の力が奇跡的な均衡を保てて始めて変身できるのだ。今のお前は何の力も無いただの人よ!」
ロードブレイザーは目をニヤッと緩め、身体全体にエネルギーをためた。
「英雄で無い自分を呪うんだな……そして、貴様も剣の聖女のところに連れてってくれる!」
全身にためたエネルギーを爆発させるようにロードブレイザーは大爆発を起こした。
「ヴァーミリオンディザスター!」
「っ!?」
業火の炎がアシュレーに襲い掛かってきた。
僕は死ぬのか……
アシュレーの脳裏に今まで出会った人たちの顔が浮かび上がってきた。
今まで犠牲になってきた人たち……
自分達と一緒に戦うことを誓ってくれた人たち……
そして、大切な幼馴染の顔が……
(英雄がいない……? 違う、必要ないんだ! 僕は……)
ギュッと拳を握り締め、アシュレーは気付いたら叫んでいた。
「一人じゃない!」
爆炎に飲み込まれ、ロードブレイザーは愉快そうに笑い出した。
「残念だ……貴様には我の中で永遠に生きてもらうつもりだったのにな?」
ハハハッと笑い続けるロードブレイザーに鋭い女性の声が飛んできた。
『そうはいかないわ……』
突如、渦を巻いて消え去さる焔にロードブレイザーは驚いた顔をして叫んだ。
「貴様は剣の聖女!?」
そこには聖剣アガートラームを大地に突き刺したアナスタシアの幻影がいた。
そう、ここにいるアナスタシアには実体がなかった。
それは彼方と此方の世界から一時的にやってきた幻影に過ぎない……
だが、身体を持たずともアナスタシアは気丈な目でロードブレイザーを指差し、叫んだ。
『ロードブレイザー……私たちはあなたを倒す!』
かつて自分を封印した忌まわしき聖女の姿にロードブレイザーは忌まわしい口調で叫んだ。
「なにを世迷言を……身体を持たぬ貴様になにができる?」
ロードブレイザーの言葉にアナスタシアはそっと目を瞑り、静かに呟いた。
『確かに私一人じゃ無理よ……でも!』
アナスタシアの身体が光の粒子となりアシュレーの身体へと吸収されていった。
アシュレーはカッと目を見開き、目の前に刺さったアガートラームを見つめいった。
「アガートラームは兵器じゃない!」
ガシッとアガートラームを握り締め……
「生きたいと願う人々の心なんだ!」
アシュレーの身体が光の中へと消えていった。
「こ、これは……まさか!?」
光が弾け飛び、アシュレーの姿が剣の聖女を映し出す、伝説の剣士……
「まさかそのすがたは!?」
剣の英雄へと生まれ変わった。
アシュレーは全身に感じる人々の思いに胸を押さえつけ叫んだ。
「感じる……みんなの思いが! みんなの生きたいと願う気持ちが!」
バッと剣を振り上げ、アシュレーは全てのファルガイアの住人に向かって叫んだ。
「僕にあなた達の力を分けてくれ! 生きたいと願う全ての人たちの願いを!」
『アシュレー』
アシュレーの剣を握った手を誰かが優しい手つきで包み込んでいった。
「アナスタシア……」
一つは剣の聖女、アナスタシア……
そして、もぅ一つは……
「マリナ……」
そっとアシュレーに頷き、マリナは願うようにいった。
『大好きだよ、アシュレー……でも明日のアシュレーはもっと好き、だから!』
アナスタシアも目を細め、静かに微笑んだ。
『そう……アガートラームはみんなの生きたいと願う心そのもの、だから生きて帰りましょう』
「マリナ……アナスタシア……」
アシュレーは剣に集まった全ての光をロードブレイザーにぶつけるように撃ち放った。
「アークインパルス!」
「こんなもの!」
襲い掛かる光の波動にロードブレイザーは語気を荒げ叫んだ。
「弾き返してくれる!」
『無駄よ! あなたにこれを跳ね返す力なんて無い!』
アナスタシアの言葉にロードブレイザーの身体から力が消えていった。
「バ、バカな!? 我の力が通じないだと!?」
迫り来る光の粒子にロードブレイザーは信じきれず叫んだ。
「バカなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
光に飲み込まれ、消滅していくロードブレイザーにアシュレーは静かに目を瞑った。
「これが生きたいと願う、人々の強さだ!」
「ば……か……な……」
消滅したロードブレイザーを見つめ、アシュレーはアガートラームを大空に掲げた。
「みんな……勝ったぞ!」
アシュレーの大声が大空に響き渡り、辺りが真っ白な空間に包まれた。
気付いたらアシュレーは、なにも無い真っ白な世界に連れてこられていた。
「ここは……?」
「アシュレー?」
アシュレーは目の前の女性を見て驚いた。
「マリナ……なぜ、ここに!?」
「私が呼んだのよ……」
カツカツと真っ白な空間から霧のように現れた女性を見てアシュレーは叫んだ。
「アナスタシア!?」
光の奥で淡く輝くアナスタシアを見てアシュレーは状況が飲み込めず叫んだ。
「ここはどこなんだ……アナスタシア?」
アナスタシアはふと笑みをこぼした。
「ここは私が作った、あなた達と最後の別れの場所……」
「別れの場所……?」
アナスタシアはそっと二人を見つめ、語りかけた。
「これからも私は彼方と此方の世界であなた達を……」
アナスタシアは首を横に振った。
「人間を見守り続ける……もぅ、逢わないことを願って」
アナスタシアの頬に涙が伝い、彼女は懸命に笑った。
「さよなら、アシュレー……大好きだったよ」
「アナスタシア……」
手を伸ばそうとするアシュレーの手をマリナは強く引っ張った。
「……」
そっとマリナの肩を抱き寄せ、アシュレーはなにも言わず彼女から背を向けた。
「ありがとう……君のことは忘れない」
「ええ……私も」
アシュレー達の姿が光へと消え、アナスタシアは寂しそうにまた泣き出した。
これが最後の別れと信じて……
それから数ヵ月後……
赤ん坊の元気な産声の聞こえ、アシュレーは大喜びで騒ぎ出した。
「やったぞ、マリナ! 双子の兄妹だ!?」
赤ん坊の一人を抱きかかえ、アシュレーは今にも泣き出しそうな顔でマリナを見た。
「よく、頑張ったね……マリナ、ありがとう!」
「うん……」
マリナも出産の疲れでヘトヘトとなった顔で必死に笑顔を浮かべた。
「名前、どうしようか?」
マリナの言葉にアシュレーは赤ん坊を彼女の横に寝かせ、嬉しそうに微笑んだ。
「もぅ、決めてあるんだ……このファルガイアを誰よりも愛した兄弟の名前を……」
アシュレーは勿体つけるようにいった。
「それは……」
子供の名前を聞いて、マリナも嬉しそうに微笑んだ。
それは未来を担う子供達に希望を託すように……
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ワイルドアームズ セカンドイグニッションのラストをスーサン流に解釈アレンジした作品です。 なんだか、もぅ、定番ぽくなってるような? |
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いやいや……元ネタは知らないけど、それは絶対無いと思います!?(スーサン) | ||
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