英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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3日後、ルーファス・アルバレア率いる領邦軍と正規軍のエレボニア帝国軍が貴族連合軍の旗艦であった”パンダグリュエル”を中心とした飛行艦隊がクロスベル侵攻の為にクロスベルへと向かい、対するクロスベルは連合を組んだメンフィルと共に魔導兵器製の飛行戦艦――――”ヴァリアント”と”フォーミダブル”を二艦ずつとその周囲に”ルナ=ゼバル”を十数機ずつ滞空させた状態でエレボニアとクロスベルの国境門であるベルガード門の遥か高度でエレボニア帝国軍が侵攻してくるのを待ち構えていた。そしてメンフィル帝国軍に所属したリィン達も”ヴァリアント”の中で迎撃作戦が始まるまで準備をして、準備を終えた後ヴァリマールに会いに行った。

 

 

1月12日、同日AM10:50――――――

 

 

〜メンフィル帝国軍・魔導戦艦”ヴァリアント”・格納庫〜

 

「こうして実際に会って話すのは10日ぶりになるな、ヴァリマール。今まで心配をかけてしまってすまなかったな。」

「気ニスルナ。ソレヨリモメンフィルノ紋章ガ刻マレタソノ軍服ヲ身ニ纏ッテイルトイウ事ハ、”Z組”トノ決別ノ覚悟ヲ決メタノダナ?」

リィンに話しかけられたヴァリマールはメンフィル帝国軍の軍服を身に纏ったリィン達を見て、リィン達がどういう決断をしたのかをすぐに悟った。

「ああ…………悩んだ末、俺達の”目的”を果たす為にはメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア帝国征伐に参加するのが、エレボニアの滅亡を防ぐ唯一の手段だから、俺達はエレボニア帝国と戦う事を決めた。…………今後戦争で活躍するためには内戦の時とは比べ物にならないくらいヴァリマールを頻繁に運用する事になると思う。」

「ソウカ。戦デ起動者(ライザー)デアルオ前ト共ニ剣ヲ振ルウ機会ガ頻繁ニアル事ハ、”騎神”デアル我ニトッテハ腕ガ鳴ル話ダ。」

「フフ、心強いお言葉ですわね。」

「…………改めて兄様の事、よろしくお願いします。」

ヴァリマールの言葉を聞いたセレーネは苦笑し、エリスはヴァリマールに会釈をした。

 

「それにしても…………話には聞いていたが、まさかエリゼが本当に俺と同じ起動者(ライザー)になっていたとはな…………」

「それもエレボニア帝国の機甲師団を壊滅に追いやった結社の”神機”ですものね…………」

「確かそちらの”神機”―――ヴァイスリッターさんは姉様が名付けられたのですよね?」

「ええ。”至宝”の加護は受けていませんから、さすがに当時程の戦闘力はありませんけど、それでもスペックは機甲兵よりも数段上ですし、障壁にグレネード、それに霊力の集束砲も搭載していますからヴァリマールさんを操縦する兄様の助けになると思います。」

リィン達はヴァリマールの隣に待機している”白の神機”ヴァイスリッターに視線を向け、エリスの問いかけに頷いたエリゼはリィンを見つめて答えた。

「ありがとう、エリゼ。ヴァイスリッターもよろしくな。」

「我ノ主タルエリゼガ、オ主ノ力ニナルト決メタ以上、我ハ主ノ意志ニ応エルダケダカラ、礼ハ不要ダ。」

「―――話には聞いていましたが、まさか”神機”に”騎神”のように自我がある所か、起動者(ライザー)まで存在した事には驚きましたわ。」

リィンの言葉にヴァイスリッターが答えるとリィン達にとって聞き覚えのある娘の声が聞こえ、声が聞こえた方向にリィン達が視線を向けるとデュバリィ、アイネス、エンネア―――結社の”鉄機隊”全員がリィン達に近づいてきた。

 

「あ、貴女方は…………」

「…………結社の”鉄機隊”の方々ですわね。」

デュバリィ達の登場にエリスは目を丸くし、セレーネは複雑そうな表情で呟いた。

「結社の前に”元”がつきますわよ、アルフヘイム。マスターが結社と決別して”英雄王”―――メンフィル帝国に所属する事を決めた以上、マスターに仕える事を至上としている私達もマスターの意志を組んでメンフィル帝国に所属し、メンフィル帝国からも正式に認められていますわ。」

「とはいっても、この間まで我々はメンフィル帝国にとっての”敵”である”結社”の所属であったのだから、一部の者達は我々の事をあまり歓迎していないがな。」

「まあ、”新参者”である私達が隠居の立場とは言え、”英雄王”と”聖皇妃”直属の独立護衛部隊なんていう親衛隊とは別の部隊として配属されたのだから、私達の事を面白く思っていない人達がいるのは仕方のない事だとわかっているから、早く新しい組織であるメンフィル帝国軍に馴染む為にも貴方達同様私達もこの戦争で活躍する事を決めたのよ。」

セレーネの指摘にデュバリィは静かな表情で答え、アイネスとエンネアはそれぞれ苦笑しながら自分達の現状を伝えた。

 

「…………貴女達が結社からメンフィル帝国軍に所属を変えた事も話に聞いている。”神速”――――いや、デュバリィさんとは内戦では色々あったが…………今は味方同士の関係になったのだから、改めてよろしく頼む。」

「別に私は貴方とよろしくするつもりはありませんが、私も鬼ではありませんから、”戦場”で窮地に陥っていたところに私がいれば、救援くらいはしてさしあげますわ。」

静かな表情で自分達を見つめた後に握手をする為に利き手を差し出したリィンに対してデュバリィは握手をせずにリィンから顔を背けて答えた。

「フフ、いくらかつて刃を交えた関係とはいえ、今は味方同士なのだから握手くらいしても罰は当たらないと思うぞ?」

「クスクス、きっと”灰色の騎士”が言った”色々”が関係しているのではないかしら♪」

「関係していませんから!勝手な憶測をしないでください!」

苦笑するアイネスの後にからかいの表情で指摘したエンネアの指摘にデュバリィは必死に否定し、その様子を見ていたリィン達は冷や汗をかいて脱力した。

 

「え、えっと………訊ねるのが遅くなりましたけど、お二人がデュバリィさん以外の残りの”鉄機隊”の方々でいいんですか?」

「うむ、名乗るのが遅れてしまって失礼したな。”鉄機隊”が隊士、”剛毅のアイネス”だ。」

「同じく”鉄機隊”が隊士、”魔弓のエンネア”よ。”守護の剣聖”とも実際に会うのはこれが初めてになるわね。」

「…………そうですね。私はセリカ様達と共に”月の僧院”側を担当していましたから、”星見の塔”にいた貴女方とは会う事もありませんでしたね。」

セレーネに訊ねられたアイネスとエンネアはそれぞれ軽い自己紹介をした後エンネアに視線を向けられたエリゼは静かな表情で答えた。

 

「そういえばエリゼはクロスベルをディーター・クロイス元大統領による独裁から解放する為に、ディーター・クロイス元大統領に抵抗する勢力に加勢したんだったな…………」

「はい。クロスベルを覆う結界の解除の為に”星見の塔”に向かったロイドさん達―――”特務支援課”の方々の話ではデュバリィさんを含めた”鉄機隊”の方々も”星見の塔”で阻んだとの事です。」

「そうだったのか…………あれ?そういえばオーロックス砦で戦った時は最初からやけに疲労している様子だったが…………」

「もしかしてその”特務支援課”という方々との戦いの直後だった為、疲労していらっしゃったのですか!?」

エリゼの話を聞いてある事に気づいたリィンとセレーネはそれぞれ驚きの表情でデュバリィを見つめ

「フ、フン!今頃気づくなんてまだまだ未熟な証拠ですわね!」

二人の推測にデュバリィは否定することなく鼻を鳴らしてリィン達に指摘し、デュバリィの態度にその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。

 

「コホン。…………それよりも、”灰色の騎士”。貴方までメンフィル・クロスベル連合による”エレボニア帝国征伐”に加わった理由は人伝で聞いていますが…………貴方、本当に”それでよろしいんですの?”」

気を取り直したデュバリィは複雑そうな表情でリィンを見つめて問いかけた。

「?一体何の事を聞いているんだ?」

「とぼけないでください!”エレボニア帝国征伐”に参加すれば、貴方の仲間である”Z組”と刃を交える日もそうですが、彼らの関係者をその手にかけるかもしれない日が必ず来るとわかっていて、何故”エレボニア帝国征伐”に参加したのですか!?」

「デュバリィさん…………」

デュバリィが真剣な表情でリィンに問いかけている中、デュバリィのリィンに対する気遣いに気づいて驚いたセレーネは目を丸くした。

「そうだな…………貴女の言う通り”Z組”の関係者―――子爵閣下やシャロンさんはわからないが、エレボニア帝国軍に所属しているクレイグ将軍やナイトハルト教官、それに”Z組”の関係者ではないけどログナー侯爵やハイアームズ侯爵、そして今から行われるエレボニア帝国軍の迎撃戦でルーファスさんを”斬らなければならない事になるだろう。”そしてそれらの出来事によって、俺は”Z組”を含めた”トールズ士官学院の仲間達”の恨みを買う事になる。――――だけど、俺は”それら全てを承知の上でここにいる。”」

「…………っ!」

「「兄様…………」」

「既に覚悟は決まっている、という事か。」

「ひょっとしたら”灰色の騎士”の方がNo.U―――”剣帝”よりも”修羅”の道を歩むことになるかもしれないわね…………」

決意の表情を浮かべたリィンの答えにデュバリィは息を呑み、エリゼとエリスは辛そうな表情でリィンを見つめ、アイネスとエンネアは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「フ、フン!その覚悟がエレボニア帝国征伐が終わるまで続けば、一人前であることを認めてあげますわ!で・す・が、このエレボニア帝国征伐で最も活躍するのは私達”鉄機隊”です!それをお忘れなきよう!」

「ああ…………―――ありがとう、デュバリィさん。俺の事を気遣ってくれて。」

「な、な、な…………っ!?」

我に返ったデュバリィは鼻を鳴らして答えた後真剣な表情でリィンを指差して宣言し、デュバリィの宣言が遠回しに自分の事を気遣ってくれている事に気づいていたリィンは感謝の言葉を述べ、リィンの言葉を聞いたデュバリィは口をパクパクさせた。

「ハハ、面白い若者だ。」

「ふふ、デュバリィがよろめくのも無理ないかもしれないわね。」

「気遣ってもいませんし、よろめいでもいません!」

リィンの答えにアイネスが感心している中、エンネアはデュバリィをからかい、デュバリィは必死に反論し、その様子を見ていたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。

 

「ああもう…………何故私ばかりがこのような目に…………それはともかく。リィン・シュバルツァー。先ほどパンダグリュエルに潜入している諜報部隊による報告が回ってきたマスターの話によりますと、”黒兎(ブラックラビット)”もパンダグリュエルにいるようですわよ。」

「え…………その方は確か…………」

「…………ユミルでアルフィン皇女と共にエリスを拉致した”黒の工房”のエージェントね。」

「はい…………”オライオン”の名前といい、あの黒い傀儡といい、ミリアムさんと何らかの関係があるようですが…………」

デュバリィが口にした情報にエリスは目を丸くし、エリゼは厳しい表情を浮かべ、セレーネは不安そうな表情で呟いた。

「…………そうか。”煌魔城”の件を考えると彼女もオズボーン宰相達と繋がりがあるようだから、彼女も同行していてもおかしくはないな…………」

「マスターの話では”英雄王”達としては”黒兎(ブラックラビット)”に関してはルーファス・アルバレアを始めとした敵将達と違って”捕縛”が望ましいとの事ですわ。彼女がまだ幼い少女である事もそうですが、”黒の工房”についての情報を持っている可能性がある貴重な存在との事ですから。」

「そうなのか…………でも、どうしてそんな貴重な情報を俺達に?」

ある人物―――かつて内戦で何度か戦った事がある黒の工房のエージェントにしてミリアムとも何らかの関係がある少女―――アルティナ・オライオンを殺す必要がない事に安堵の溜息を吐いたリィンはデュバリィに自分達にアルティナの件を伝えた意図を訊ねた。

 

「貴方方は戦場での戦功を狙う私達にとって、一番の”好敵手”になりそうですから、教えただけですわ。勝負は公平に行うべきですので!―――それでは私達はこれで失礼しますわ。」

リィンの疑問に対して答えたデュバリィはその場から去りかけたが

「ふふ、あんな事を言っているけど、デュバリィはエレボニア帝国征伐に”灰色の騎士”まで参加する事になった原因は自分も関わった内戦が関係していたから、そのせめてもの”お詫び”としてまだメンフィルの上層部しか知らない最新の情報を伝えたのよ。」

「それとエリス・シュバルツァーの拉致監禁の件もそうだな。我ら”鉄機隊”の中でも最も”外道”な真似を嫌うデュバリィの性格を考えると、女学生の一人として平穏な生活を過ごしてきたエリス・シュバルツァーの拉致監禁を行った事には内心想うところはあっただろうしな。」

「エンネア!アイネス!何を吹き込んでいるのか知りませんが、これ以上”灰色の騎士”達に勝手な憶測を吹き込まないで、とっとと行きますわよ!」

エンネアとアイネスが残ってリィン達にある事を伝えている所に気づくと立ち止まった後振り返って声を上げて二人にその場から離れるように指示し

「はいはい。」

「―――それでは我らもこれで失礼する。お互いにとっての”初陣”…………お互い無事に生き残って戦功を稼げるといいな。」

デュバリィの指示を聞いた二人はデュバリィの後を追ってその場から去っていった。

 

「フフ、内戦の時から薄々感じてはいましたが、やはり他の”執行者”達と違って悪い方ではありませんでしたわね。」

「…………そうね。兄様を心配してくださっていた事や情報の件もそうだけど、わざわざ挨拶までしてくれたものね。」

「ああ…………それを考えると結社が崩壊したのは彼女たちにとっていい契機だったかもしれないな。」

デュバリィ達が去ると微笑みながら呟いたセレーネの意見にエリゼとリィンは頷いた。

「挨拶といえば…………兄様、私達と同じ小部隊に配属される他の二名の方達にまだ挨拶をしていないのですが…………」

「そうだな…………そういえばエリゼ。俺達と同じ小部隊に配置されることになった二人の事は連絡が来てから知ったが、二人とも俺にとっては顔馴染みなんだが、もしかしてエリゼがゼルギウス将軍閣下かシグルーン副長に進言とかをしたのか?」

「いえ、私は部隊の編制の際は私とエリス、そしてセレーネを兄様と同じ部隊にして頂く事しかリフィア達に頼んでいません。お二人の配置を決めたのはゼルギウス様とシグルーン様の判断かと。」

「お兄様はわたくし達と同じ小部隊に配置されるお二人をご存知なのですか?」

エリスの疑問に答えたリィンはエリゼにある事を訊ね、訊ねられたエリゼは静かな表情で答え、リィンとエリゼの会話を聞いてある事が気になったセレーネはリィンに訊ねた。

「ああ、実はその二人は――――」

「フフ、久しぶりですね、リィンさん。」

「おーおー、少し見ない内に綺麗所を侍らすようになるなんて、随分と成長したじゃねぇか。」

そしてセレーネの疑問にリィンが答えかけたその時、貴族の令嬢のような雰囲気を纏った黒髪の女性騎士と軽そうな雰囲気を纏った金髪の青年騎士がリィン達に近づいて声をかけた。

 

「ステラ、それにフォルデ先輩も。―――お久しぶりです。」

「え…………」

「兄様はそちらのお二人とお知り合いなのでしょうか?」

親しげに二人の騎士に声をかけたリィンの様子を見たセレーネは呆け、エリスは不思議そうな表情で訊ねた。

「ああ。女性騎士の方はステラ――――俺の訓練兵時代、”パートナー”として組んでいた訓練兵時代の俺の同期だ。」

「―――メンフィル帝国軍リフィア皇女親衛隊に所属しているステラ・ディアメルと申します。以後お見知りおき願います。」

リィンの紹介に続くように女性騎士―――ステラは軽く会釈をして自己紹介をした。

 

「お兄様の”パートナー”、ですか?それは一体どういう…………」

「…………メンフィル軍は訓練兵を指導する方法として、まずグループごとに指導する担当教官が存在して、更にそのグループ内で二人一組のペアを組ませて、ベアごとに既に一人前の軍人として務めているメンフィル帝国軍の人達が指導する事になっているのよ。」

「で、その二人を指導した”先輩”が俺―――フォルデ・ヴィントだ。よろしくな。」

セレーネの疑問にエリゼが答えると、フォルデは自己紹介をした。

「兄様の訓練兵時代の…………―――リィンの妹にしてエリゼの双子の妹のエリス・シュバルツァーと申します。この度(たび)未熟の身ではありますが”義勇兵”という形で、兄様と共にエレボニア帝国征伐に参加する事になりましたので、もし私に至らない点があればその時はご指摘して頂けると幸いです。」

「わたくしはお兄様―――リィン・シュバルツァーの”パートナードラゴン”のセレーネ・L・アルフヘイムと申します。わたくしもお兄様を支えるために”義勇兵”の一人として今回の戦争に参加する事になりましたので、エリスお姉さま共々よろしくお願いしますわ。」

二人の事を知ったエリスとセレーネもそれぞれ自己紹介をした。

 

「おう、よろしくな。ま、俺は細かい事にいちいち口出しするような堅苦しい軍人じゃないし、ステラはリィン同様クソ真面目だがキツイ性格って訳でもないから、安心していつも通りのかる〜い雰囲気でいこうぜ。」

「”戦場”に軽い気持ちで挑むのはさすがに問題はあるかと思いますが………訓練兵時代にお世話になったリィンさんの”身内”であるお二人とは、エリゼさんのように親しい仲になれることができればいいと思っていますので、もし何かわからない事があれば遠慮なく訊ねてください。」

「は、はい。あの…………ステラさん、”ディアメル”と名乗っていらっしゃっていましたが、もしかしてステラさんはエレボニア帝国貴族の…………?」

フォルデと共に親しげに話しかけたステラの言葉に頷いたエリスは自身の疑問を遠慮気味にステラに訊ねた。

「ふふっ、やはり気づかれていましたか。エリスさんの仰った通り、私はかつてエレボニア帝国貴族―――”ディアメル伯爵家”の一員でしたが、”ディアメル伯爵家”の一員であり続ける事が嫌になってメンフィル帝国に亡命、そしてメンフィル帝国軍に入隊したのです。」

「ええっ!?それじゃあステラさんはエレボニア帝国の貴族の方だったのですか…………」

「ちなみにステラの実家―――”ディアメル伯爵家”は”四大名門”に次ぐエレボニア帝国の名門貴族の一角なんだぜ〜?」

ステラの話を聞いて驚いているセレーネにフォルデはからかいの表情でステラの説明を補足した。

 

「フフ、それを言ったらフォルデ先輩もエレボニア帝国では”武”の名門貴族として有名な貴族の家系の出身ではありませんか。」

「俺の場合は遠い先祖がそうだっただけで、昔から”平民”だし、”本家”の連中とも特に交流とかはないぜ?」

「え…………フォルデさんがエレボニアでは”武”の名門貴族として有名な貴族の家系、ですか?」

「…………フォルデ先輩とフォルデ先輩の弟で俺と同期のメンフィル帝国軍に所属している軍人―――フランツの先祖は”ヴァンダール家”なんだ。」

ステラの指摘に反論したフォルデの話が気になったエリスの疑問にリィンは静かな表情で答え

「え…………」

「ええっ!?それじゃあ、フォルデさんがアルノール皇家の守護役である”アルノールの懐刀”と呼ばれている”ヴァンダール子爵家”と縁戚関係にあたる方なんですか…………!?」

リィンの説明を聞いたエリスは呆け、セレーネは驚いた。

 

「遠い先祖がそうだっただけで、俺やフランツは”ヴァンダール”の連中とは会った事もないぜ?ま、そんな事よりもリィン。エレボニアでは色々と大変だったらしいな。」

「いえ…………セレーネも含めて多くの大切な人達との貴重な出会いができましたから、オリヴァルト殿下の頼みを承諾したリウイ陛下の指示によってトールズ士官学院に留学した事は後悔していません。」

「お兄様…………」

フォルデの気遣いに答えたリィンの様子をセレーネは静かな表情で見つめ

「シグルーン副長から説明がありましたが、そちらの灰色の機体がエレボニアの伝承で出てくる”巨いなる騎士”なのですか?」

「ああ…………―――紹介が遅れてすまない。彼はヴァリマール。トールズ士官学院の旧校舎の地下の奥深くで眠っていたエレボニアの伝承の”巨いなる騎士”―――”灰の騎神”だ。ヴァリマール、二人は俺達と同じ小部隊の一員だから、今後の戦いで共に戦う事になる仲間だ。」

「フム、トイウ事ハリィンヤ我ニトッテノ新タナル”戦友”カ。」

ヴァリマールに視線を向けたステラの疑問に答えたリィンはヴァリマールにステラとフォルデを紹介し、ヴァリマールは目を光らせて答えた。するとリィン達が持つメンフィル帝国軍から支給された戦術オーブメント――――ARCUS特有機能であった”戦術リンク”と”リンクアビリティ”が搭載されている改良型のENIGMA(エニグマ)―――”ENIGMA(エニグマ)R(リメイク)”が光を放ち始めた!

 

「え…………」

「この光は…………!」

それぞれ光を放ち始めたオーブメントに気づいたエリスは呆け、リィンが驚いて仲間達同様戦術オーブメントを取り出すとそれぞれの戦術オーブメントのリンクはヴァリマールと繋がった。

「戦術リンクがヴァリマールさんと繋がったという事は…………!」

「まさか…………エリゼ達も”準起動者”として認められたのか?」

「ウム、ドウヤラソノヨウダ。ソレニ、ヴァイスリッタートノ繋ガリモ感ジル為、ヴァイスリッターニモ効果ガアルダロウ。」

「…………ヴァリマールトノリンクヲ把握。準起動者ノ機能―――”EXアーツ”ノ発動モデキル。」

ヴァリマールとリンクする様子を見てすぐに察しがついたセレーネは驚き、信じられない表情で問いかけたリィンの推測にヴァリマールとヴァイスリッターはそれぞれ答えた。

 

「…………一体どうなっているんだ?エリゼ達はアリサ達と違って、俺と一緒に旧校舎での”試し”を受けていないのに…………」

「…………もしかしたら、お兄様―――起動者(ライザー)にとっての”戦友”と認識されれば、”準起動者”として認められるのでは?実際、サラ教官という実例がありますし…………」

困惑しているリィンの疑問にセレーネは自身の推測を答え

「…………なるほど。―――何にせよ、準起動者がセレーネ以外にも増えた事はありがたい事だな。今回の戦争ではセレーネ以外の準起動者達―――アリサ達の協力は無理だろうしな…………」

「兄様…………」

「…………私では”Z組”の方々の代わりにはなれませんが、それでも”Z組”の皆さんのように”準起動者”に認められた事は嬉しいです。兄様がヴァリマールさんを駆って戦う時も支える事ができるのですから…………」

静かな表情で呟いたリィンの言葉を聞いたエリゼが複雑そうな表情をしている中、エリスは真剣な表情でリィンを見つめて答えた。

 

「ハハ、”代わり”だなんてそんな寂しい事を言うな。エリスは誰の”代わり”でもない俺にとって大切な妹の一人で、将来を共にすることを決めた伴侶の一人なのだから…………」

「に、兄様…………セレーネやステラさん達がいる目の前で子供扱いするのは止めてください…………!」

微笑みながら優しく頭をなでてきたリィンに対してエリスは頬を赤らめて答え

「フフ、さすが双子の妹だけあって、そういう所もエリゼさんとそっくりですね。」

「というかリィン、マジで恋人を作ったみたいだな〜?それもその口ぶりだと複数だから、お前のハーレムメンバーにはエリゼちゃんもそうだがセレーネもそうなのか?」

リィンとエリスの様子をステラは微笑ましく見守り、フォルデはからかいの表情でリィンに問いかけた。

 

「そういう言い方をしてほしくはないんですが…………まあ、否定はしません。それと将来を共にすることを決めた女性は後二人―――俺の使い魔として協力契約を結んでいる女性達もそうです。」

「ほ〜…………5人も侍らすとは、”娼館”に誘っても必死に拒否したあのリィンが成長したもんだね〜♪」

リィンの答えを聞いたフォルデは口元をニヤニヤさせながら指摘し

「ちょっ、先輩!?」

「…………やっぱり娼館に誘われた事があるのですか。」

「…………兄様?今の話はどういう事なのか、詳細な説明をして頂きたいのですが。」

(なんだかクロウさんと似ている方ですわね…………)

フォルデの指摘にリィンが慌て始めるとエリゼとエリスはそれぞれ膨大な威圧を纏って微笑み始め、セレーネが苦笑している中それを見たリィンが冷や汗をかいて表情を引き攣らせたその時格納庫に放送が入った。

 

―――これよりエレボニア帝国クロスベル侵攻軍の迎撃並びに殲滅を開始する。パンダグリュエル突入組に選ばれた部隊は10分以内に甲板に集合し、整列せよ。なおヴァリマール並びにヴァイスリッターは出撃し、迎撃開始と共に戦闘を開始せよ。繰り返す―――

 

「―――時間のようですね。」

「ああ…………先輩、合流するまではエリスとセレーネの事、お願いします。」

「任せときな。お前は内戦で受けた鬱憤を思い切り晴らしてきな!」

「兄様、姉様、ご武運を…………!」

シェラの声による放送を聞いたステラは表情を引き締め、リィンの言葉にフォルデは静かな表情で頷き、エリスはリィンとエリゼに応援の言葉を送り、二人はエリスの言葉にそれぞれ頷いた後それぞれヴァリマールとヴァイスリッターの中へと入り、格納庫のハッチの一部を開閉させるスイッチの場所までエリス達と共に移動したフォルデがスイッチを押すとハッチが開いた!

「出るぞ、ヴァリマール!」

「行きましょう、ヴァイスリッター!」

「「応――――!!」」

そしてヴァリマールとヴァイスリッターはそれぞれ”戦場”に向かう為にハッチから飛び出した――――

 

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という訳でまずリィン側はフォルデとステラがパーティーインし、エリゼもメンフィル帝国軍による作戦の際は常にパーティーキャラとして同行する事になっています(まあ、この物語は今までの軌跡シリーズと違ってリィン側の行動のほとんどは戦争に関連する作戦活動ばかりの予定ですけどね(苦笑))それとリィン達のオーブメントはARCUSではなくレンちゃん達の改造によって生まれた戦術リンクやリンクアビリティもある特殊なエニグマになっているという設定です。また、準起動者は他にも増える予定でそのキャラは今の所アルティナ、アルフィン、ミュゼ、クルトを予定しています。それと次から作戦が終わるまでのイベント兼フィールド兼戦争BGMは閃1の”Atrocious Raid”、閃3の”solid as the Rock of JUNO”、碧の”To be continued!”、VERITAの”衝突する魂”、魔導巧殻の”不退転の決意を以って”のどれかだと思ってください♪

 

説明
第5話
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