英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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〜川蝉亭〜

 

「―――アリシア女王達にもお伝えしましたように、私は異世界の大国との外交問題等の現代のゼムリア大陸の政(まつわりごと)に介入する”権限”はありませんし、そのつもりもありません。――――そしてその気持ちは今も変わりません。」

「そ、そんな……女神様はエレボニアの人々を見捨てるのですか……?」

「……エレボニアの人々は平和を願って、貴女に祈り続けているのに何故エレボニアを見捨てるのでしょうか?」

目を見開いて静かな表情で答えたエイドスの非情な答えに表情を青褪めさせたトワは身体を震わせながら尋ね、ガイウスは複雑そうな表情で尋ねた。

「見捨てるとは人聞きが悪いですね。単に”国が滅ぶだけ”で多くの戦う力を持たない人々―――民間人はせいぜい、戦争に巻き込まれるだけでエレボニア帝国の軍人達のようにメンフィル・クロスベル連合に意図的に傷つけられたりはしないのでしょう?”戦争で国が滅ぶような些細な事”は今までの歴史で繰り返され続けています。」

「……そうね。そして人々は争いをいずれ忘れて生きて行き、いつかまた争いを始め、争いが終わればまた忘れて生きて行く……という繰り返しをし続けて行くのでしょうね……」

「クレハ様……」

「………………」

エイドスの答えに悲しそうな表情で同意したクレハをノイは辛そうな表情で見つめ、ナユタは複雑そうな表情で黙り込んだ。

 

「く、”国が滅ぶ事が些細な事”って……!」

「確かに直接傷つけられる事はないと思いますけど……心に傷は負うと思いますよ?」

エイドスの非情な答えにアリサは信じられない表情をし、アンゼリカは真剣な表情で問いかけた。

「そうですね。ですがそれも一時的な傷。10年、20年と長い年月と共に人々はやがて祖国が滅んだという記憶を忘れ、平和な暮らしに満足するでしょうね。一応私も現在の世界情勢をある程度ワジさん達から聞いています。確かエレボニア帝国の内戦勃発の原因となった今のエレボニア帝国の宰相も実際にそれを行った結果、エレボニア帝国に呑み込まれた小国や自治州は”過去”を忘れて平和に過ごしているのでしょう?」

「そ、それは…………」

「例え両帝国が戦争を仕掛ける相手であるエレボニアの民達を傷つけるつもりはなく、平等に扱うつもりでも、それがエレボニア帝国が滅びていい理由にはならないと思われるのだが!?」

エイドスの指摘に反論できないマキアスは言葉を無くしている中ユーシスは厳しい表情エイドスに意見した。

 

「というかアンタの話を聞いてからずっと気になっていたんだけど、そもそも”権限”がないってアンタは言ってるけど、その”権限”ってどういう意味なのよ。」

「セ、セリーヌ。お願いだからもっと、丁寧な言い方で尋ねて……」

目を細めてエイドスを睨むセリーヌにエマは冷や汗をかいて指摘し

「口調の事で私は気にしていないので心配無用です。―――セリーヌさんの疑問についてですが………私もそうですが、お父様達やナユタさん達の存在について皆さん、色々と気になっていると思いますが…………私達は”この時代に生きる者達ではありません。”そのため、”この時代の存在ではない私にこの時代の事を決める権限はありません。”」

「め、女神様達が”この時代に生きる者達ではないって”…………」

「まさか…………アンタ達は”時を超えてこの時代にやってきた”っていうの!?」

エイドスの答えを聞いたエリオットが戸惑っている中、事情を察したセリーヌは信じられない表情でエイドス達に訊ねた。

 

「―――はい。私達が私達にとっての”未来”であるこの時代の出来事をどうやって知った事や”時を超えた方法”については先程ワジさんも仰ったように、おいそれと教える事はできませんので、それらについての質問は受け付けませんが…………―――そもそも今回のエレボニア帝国とメンフィル帝国との戦争勃発の原因はどう考えてもエレボニア帝国にあって、メンフィル帝国は戦争を回避する機会を”3度も”与えたとの事ですのに、エレボニア帝国はその機会を全て無視したのでしょう?にも関わらず、今更その戦争を回避しようだなんて、あまりにも虫が良すぎる話ではありませんか?」

「それは……………………」

「1度目と2度目に関しては私達も知らなかったですし、そもそも内戦の最中であったエレボニアが他国との交渉をするような余裕はなかったんです!それに”3度目の要求内容”は最初と2度目の要求と比べるとあまりにも理不尽な内容だった為、オズボーン宰相を含めた帝国政府の人達はその要求を受ける訳にはいかなかったんです!」

エイドスの正論に対して反論できないオリヴァルト皇子が複雑そうな表情で答えを濁している中アリサが悲痛そうな表情を浮かべて反論した。

「―――そういう事は明日交渉するメンフィル帝国の大使に言ってください。そもそもこのゼムリア大陸は私が没した後は女神である私に縋ることなく、滅びの道を歩まず今もなお発展し続けている世界に至っているのですから、幾ら偶然現代のゼムリア大陸に私達がいるとはいえ、”女神を利用して自分達の希望通りの内容に変更する事を戦争相手の国に承諾してもらって戦争を回避するという例外”をエレボニアだけが作るなんて、エレボニア(あなたたち)は一体何様のつもりですか?」

「め、女神様を僕たちが利用しようとしているって…………」

「お待ちください!我々はゼムリア大陸の多くの人々が崇める御身を利用するといった恐れ多い事は毛頭考えておりませんし、今回の戦争は我が国に全面的な非がある事は承知していますから、本来でしたらメンフィル帝国側の要求を全て承諾する事が”筋”である事は理解しています!ですが、エイドス様はご存知かどうかわかりませんが、メンフィル帝国が我が国に貴族連合軍による2度に渡る”ユミル襲撃”に対する賠償として求めてきた”3度目の要求内容”は内戦を終結したばかりのエレボニアにとっては、国の存続すらも危ぶまれる内容なのです…………!」

目を細めて指摘したエイドスの指摘に対してエリオットが不安そうな表情をしている中、ラウラは必死の様子で反論した。

 

「メンフィル帝国による”3度目の要求内容”の件でしたらアリシア女王達が嘆願しに来た時に教えてもらっていますが…………今より遥か昔に起こった混迷と戦乱に満ちたゼムリア大陸も知る私からすれば、”相当穏便な要求内容”だと思ったくらいですよ?」

「あ、あんな理不尽な要求内容が女神様にとって”相当穏便な要求内容”って………!」

「”空の女神”が知る混迷と戦乱に満ちた古のゼムリア大陸…………か。一体どんな世界だったんだ、その頃のゼムリア大陸は…………?」

「ま、”空の女神”が生きている時代は戦乱と混迷に満ちた”暗黒時代”よりも遥かに昔のゼムリア大陸なんだから、それこそ現代のゼムリア大陸にとっては”理不尽で不幸に満ちた世界”だったんでしょうから、そんな時代を生きてきたアンタからすれば、確かにあの要求内容も”穏便”と思えるような内容かもしれないわね。」

エイドスの答えに仲間達と共に血相を変えたマキアスは信じられない表情をし、考え込みながら呟いたガイウスの疑問に静かな表情で答えたセリーヌは複雑そうな表情でエイドスを見つめた。

 

「ちなみに”空の女神”はあの要求内容が”穏便”って言っているけど、もし”空の女神”の時代で同じことが起こったらどんな内容になるの?」

「そうですね…………―――例えばユミル襲撃に関わっていた”戦犯”やその関係者、その襲撃が起こった原因である皇女の件についての第一項に関してでしたら、犯罪者に関しては本人だけでなく三親等―――その者の親、伴侶、そして子供も全員”処刑”されるでしょうし、皇女に関しては”奴隷落ち”した後その奴隷落ちした皇女を引き取った主人にもよりますが、最悪の場合一生過酷な労働を強いられるか、その皇女自身の身体を犯され続ける事になるでしょうね。」

「ど、”奴隷”って…………!」

「し、しかも”戦犯”は本人だけでなく親や伴侶、それに子供まで処刑されるなんて…………!」

「…………今の時代でそんな人権を完全に無視した事を行えば大問題でしょうけど、遊撃士協会も国際法も存在していない大昔のゼムリア大陸だったら、まさにそんな理不尽な事すらも”常識”なのかもしれないわね…………」

「ハハ…………という事は、もし私達が生まれた時代が違って同じことが起これば、私やユーシス君もメンフィル帝国の処罰対象になっていたのか…………」

「……………………」

フィーの質問に答えたエイドスの答えに仲間達と共に驚いたアリサとエリオットは表情を青ざめさせ、サラは複雑そうな表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情で呟き、ユーシスは辛そうな表情で黙り込んでいた。

 

「エイドス様の仰っている通り、我々のエイドス様への嘆願は道理の通らないことである事は理解しています。ですが、今回の件とは無関係のエレボニアの平民達までその煽りを受けて苦しみ、傷つくことになるでしょう。どうか我々の為ではなく、民達の為にお力をお貸し願えないでしょうか?」

「―――そう、”それ”についても私はもう懲り懲りしていて、私の時代で起こったゼムリア大陸の危機を救った後夫と共に”普通の人として”生きる事を決めた時から、人同士の争いによって起こった戦争には2度と関わらないと決めたのです。」

アルゼイド子爵の嘆願に対してエイドスはジト目で答えた後呆れた表情で溜息を吐き

「”それについても懲り懲りしている”の”それ”って、もしかして人々を救う為に女神様に頼る事ですか…………?」

エイドスの答えを聞いたトワは不安そうな表情で訊ねた。

 

「はい。―――皆さんもご存知のように私は”女神”ですから、こう見えても私は”見た目通りの年齢ではありません。”」

「エイドス様の若々しいそのお姿通りの年齢ではないという事は、エイドス様もリウイ陛下達のように数十年…………いえ、数百年以上生きておられるのでしょうか…………?」

エイドスの答えを聞いてある事を察したエマはエイドスに確認した。

「―――”4024歳”。それが今の私の年齢と言えば、私が途方もない年月を過ごしてきた事がわかるでしょう?」

「よ、”4024歳”って事は女神様は4000年以上も………!」

エイドスの年齢を知ったアリサは仲間達と共に驚いた後信じられない表情でエイドスを見つめた。

(ようやく実年齢を言ったわね…………私達の事を”年寄り”呼ばわりするくせに、私が睨んでいた通りやっぱり私やシグナよりも遥かに年を取っているじゃない…………!)

(ク、クレハ。僕達が”先祖”だからエイドスさんにからかいの意味も込めて”年寄り”呼ばわりされている事を気にしていた君の気持ちはわかるけど、今気にするべきところはそこじゃないと思うんだけど…………)

(やっぱりクレハ様が段々エイドスやエステルの悪影響を受けているの…………)

一方ジト目でエイドスを見つめて小声で呟いたクレハにナユタは冷や汗をかいて指摘し、ノイは疲れた表情で頭を抱えた。

 

「4000年以上”女神”として生きてきたのですから、当然途方もない年月の間に皆さんのような状況に陥り自分達の過ちを後悔した国や組織が私に”救い”を求め、その”救い”に応じる事にした私は幾度も”救って”きましたが…………時が経ち、世代が変われば過去の過ちを忘れて同じ事を繰り返すという私や当時の人々がやった事を全て無駄にするという虚しい結果ばかりでした。その事に虚しさや”神である私自身の存在の恐ろしさ”を思い知った私は夫や仲間達と共に当時のゼムリア大陸を救った後、”女神としての最後の務め”として『”神”の判断にゼムリア大陸の人々が左右される事や”神”や”奇蹟”に縋る事で人々が堕落する事を恐れ、”神”や不確かな”奇蹟”に頼らずに自分自身で”選択”して”本当の幸せ”を掴みとって欲しいと願い』も込めて、当時の人々に”七の至宝(セプト=テリオン)”を授けたのです。」

「……………………」

「ハハ…………まさかこのような形で、空の女神”が人々に”七の至宝(セプトテリオン)”を授けた”真実”を知ってしまうとはね…………七耀教会も今の事実を知った時、さぞ驚いたんじゃないのかい?」

エイドスの話を聞いたアリサ達がそれぞれ言葉をなくして絶句している中、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子はワジとルフィナに訊ねた。

「当然教皇猊下も含めて教会(ウチ)の上層部はみんな驚いていたよ?何せ滅多な事で動じないあの”総長”ですら心底驚いていたくらいだからね♪」

「へミスフィア卿、今はこの場を茶化すような発言をするべきではないかと。」

口元に笑みを浮かべて答えたワジにルフィナは静かな表情で指摘した。

 

「―――ま、そういう訳だから教会としては、過去の偉業を果たしてそれぞれ平穏な生活を過ごしていたにも関わらずクロスベルの”異変”の解決の為に時を超えて”異変”の解決に協力してくれた”空の女神”とその一族には『一度も揃った事がない家族全員で自分達にとっての未来であるゼムリア大陸がどのように発展し、変わったのかを自分達の目で確認し、体験したい』―――ま、要するに”家族旅行”だね。僕達七耀教会は”空の女神”の希望通り、”空の女神”達がそれぞれ元の時代に帰還するまで全力で”空の女神”達の”家族旅行”をサポートする事にしたのさ。」

「そしてそのサポートの中には遥か昔からゼムリア大陸の多くの人々が崇め続けてきた”空の女神”であるエイドス様とその一族の方々の威光を政治利用しようとする輩から守る事も含まれています。ですから、エイドス様達がエレボニア帝国とメンフィル・クロスベル両帝国との戦争に関わる事に対して拒否の意志を示した以上、お引き取り願います。」

(フフ、私達の場合は平穏な生活を過ごしているとは言えませんけどね。)

(アハハ…………それについては反論できないな。)

(フフ、”冒険”が大好きなアドルさんには”平穏”という言葉とは無縁ですものね。)

そして真面目な顔に戻ったワジはルフィナと共にオリヴァルト皇子達からエイドスを庇うようにエイドスの前に出てオリヴァルト皇子達に宣言し、エレナの小声に対してアドルとフィーナはそれぞれ苦笑していた。

 

「ま、待ってください…………!わたし達は女神様達を政治利用する等と言ったそんな恐れ多い事は考えていません!メンフィル帝国との交渉の際に”第三者”として意見してくださるだけでいいんです…………!」

「いや、”第三者として意見する”だけでも、今回のエレボニアとメンフィル・クロスベル連合との戦争に政治介入している事になるから、君達のその嘆願はどう考えても教会やエイドス達からすればアウトの類の嘆願だよ。」

トワが必死の様子で意見をしたがワジが呆れた表情で指摘し

「あの…………!女神様自身が無理でしたら、女神様のご両親や先祖の方々―――フィーナ様かクレハ様のどちらかが私達にご協力していただけないでしょうか…………!?」

「―――申し訳ございませんがその件に関しては私達もエイドスの意見と同じですので、エイドス同様今回の戦争に限らず、現代のゼムリア大陸の政(まつわりごと)に介入するつもりは一切ありません。」

「遥か昔からゼムリア大陸の人々が崇め続けてきた”空の女神”の一族が持つ権力はエイドスに頼もうとしている貴方達も気づいているようにこの世界にとっては絶大な権力よ。そんな権力をたった一国―――それも自分達の過去の所業で自業自得の状況に陥った国の為だけに振るう訳にはいかないわ。」

「そ、そんな…………」

エマの嘆願に対してフィーナとクレハは冷酷な答えを口にし、それを聞いたエリオットは悲痛そうな表情をした。

 

「というか、さっきそこの守護騎士(ドミニオン)が言ったようにエイドス達はわたし達の国が滅茶苦茶困っているにも関わらず”家族旅行”なんていつでもできる暢気な事をよく平気でしていられるよね。」

「言い過ぎだ、フィー!すぐにエイドス様達に謝罪するべきだ!」

厳しい表情でエイドス達を睨んで文句を言うフィーにラウラが注意をしたその時フィーの足元から真紅の魔法陣が突如現れた!

「!?…………っ!」

突如現れた魔法陣に気づいたフィーは間一髪のタイミングでその場から飛びのくと炎の柱が発生した後大爆発を起こした!

 

「あら、今のを避けるなんて中々すばしっこいですね。」

「エ、エイドス…………」

「幾らあちらの女の子の言葉に怒ったからと言っていきなり予備動作すらもなく無詠唱でアーツを撃つのはさすがにどうかと思いますよ?」

「というか屋内で炎のアーツを使うなんて危険過ぎですよ…………火事になったらどうするんですか…………」

「まあ、エイドスの事だから火事になっても一瞬で消火できると思うの。」

フィーの回避能力にフィーにアーツ―――サウザンドノヴァを放った人物であるエイドスが感心している中、アドルは冷や汗をかき、エレナは疲れた表情で指摘し、呆れた表情で指摘したナユタの推測にノイが疲れた表情で答えた。

 

「フィーちゃん、大丈夫ですか!?」

「ん…………ギリギリ回避できたから、特にダメージは受けていない。」

「今のアーツは確か”サウザンドノヴァ”だったわね。最高位アーツをオーブメントも使わないどころか、無詠唱かつ予備動作すらもなく放つなんてさすがは”空の女神”と言った所かしら。」

「という事は先程のアーツは”空の女神”がオーブメントも使わずに放ったのか…………」

「アーツを戦術オーブメントも使わずに放つとか非常識な…………」

「フン、そもそもあの女神自身が”非常識な存在”だろうが。」

「やれやれ…………まさかこんな形で”空の女神”の力の一端を見せられる事になるとはね…………」

エマに駆け寄られたフィーは平気な様子で答え、目を細めてエイドスを見つめて呟いたセリーヌの分析を聞いたガイウスは呆け、疲れた表情で呟いたマキアスにユーシスは呆れた表情で指摘し、アンゼリカは疲れた表情で呟いた。

 

「も、申し訳ございません、女神様…………!私達の仲間が女神様に失礼な事を…………!」

「別に私はそれ程怒っていない為、先程の”お仕置”で勘弁してあげていますから、そんなに気にする必要はありませんよ。」

「”お仕置き”で予備動作すらもない最高位アーツを撃つとか、十分怒っている証拠じゃない…………」

アリサの謝罪に対して静かな表情で答えたエイドスの発言に仲間達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたサラは疲れた表情で指摘したが

「コホン。私達の件はともかく、そもそも”ハーメル”の”償い”すらも行っていないエレボニアに最初から協力するつもりはありませんから、お引き取りください。」

「な――――――――」

「!!」

「それは……………………」

エイドスが呟いたある言葉を聞くと絶句し、オリヴァルト皇子は目を見開き、アルゼイド子爵は複雑そうな表情を浮かべた。

 

「ハ、”ハーメル”…………?」

「一体何の事なんだ…………?女神様は”償い”って言っていたけど…………」

「そういえば”煌魔城”でも教官は”ハーメル”の言葉を口にしていたが…………」

「事情を知っていそうなサラ教官達の反応からすると、少なくてもエレボニアにとってはとんでもないスキャンダルである事は間違いなさそうだね…………」

初めて聞く言葉にトワとマキアスが困惑している中、ガイウスは考え込み、重々しい口調で呟いたアンゼリカはサラ達に視線を向けた。

「ハハ…………ここでまさか”ハーメル”の話が出てくるとはね…………フィーナさん、もしかして貴女が”ハーメル”の件を?」

「ええ…………教育の一環として”影の国”で知る事ができた”ハーメル”についても教えました。レーヴェさんではありませんが私の時代のエイドスが将来成長して第二、第三の”ハーメル”を生み出す事は女神として阻止して欲しいと思いましたので。」

疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の問いかけにフィーナは静かな表情で答えた。

 

「そうか…………―――エイドス様達が家族揃って現代のゼムリア大陸に滞在していられる貴重な時間を長らく取ってしまい、申し訳ございませんでした。私達はこれで失礼しますので、エイドス様達はエイドス様達にとっては貴重な”家族旅行”をエイドス様達が帰還する時が来るまで堪能する事を心より願っております。」

そしてオリヴァルト皇子は頭を下げて退室の言葉を口にし

「そちらこそ、わざわざ無駄足を踏ませてしまい、申し訳ございませんでした。月並みな言葉になって申し訳ございませんが、異世界の大国との交渉、頑張ってください。」

オリヴァルト皇子の言葉に対してエイドスは静かな表情で答えた。

 

こうして…………エイドス達との交渉に失敗したアリサ達は翌日のパントとの交渉に向けた話し合いを行った後アリサ達を含めたトールズ士官学院の関係者達はアリシア女王達の好意によってグランセル城で一晩泊まる事になり…………翌日、アリサ達を乗せた”カレイジャス”とクローディア王太女を乗せた”アルセイユ”は王都からロレント市へと向かい、ロレント市に到着してからは徒歩でメンフィル帝国の大使館に向かった―――

 

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今回の話でようやく判明したこの物語のエイドスの実年齢はお気づきの方達もいるかと思いますが、運命が改変された〜の閃2篇の幕間2でエイドスの話に出てきた仲間達の原作を参考にしていますww

説明
第20話
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コメント
匿名希望様 まあ、同じ作者が書いていますのでw 完全ROM専様 確かにリウイ達だったら下手したらその場で処刑でしょうね(汗) 黄泉様 ”何かが起こる事”は確実です(ガタガタブルブル)(sorano)
……はぁ。多分メンフィルの大使館に行ってもこの様子じゃぁ相手を怒らせるだけですね…何人がその交渉に参加するのかわかりませんが絶対何かおこりそうな予感…(黄泉)
ラストのフィーの発言は、いくら自分が困っているとはいえ、[頼み込んでいる相手]に対する発言にしては勝手が過ぎる(ユーシスの発言もヤバいと言えばヤバいが・・・)。 今回はエイドスだったから、まだよかったものの、リウイ、シルヴァン、レン等のメンフィルの偉い人に言ったりしたら、普通は[出て行け]では済まされないはず(完全ROM専)
相変わらず、ひねりも無い。自分本位の物言い(匿名希望)
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