英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜 |
〜アルスター〜
「お待たせ、みんな!」
「エステルさん…………!」
(フッ、”真打ち登場”か。)
マリーニャ達が機甲兵達と戦闘を繰り広げている所に駆けつけたエステル達に気づいたテトリは明るい表情を浮かべ、サエラブは静かな笑みを浮かべた。
「貴様は…………!」
「遊撃士協会史上初ランクSSにして”剣聖”の娘、”ブレイサーオブブレイサー”…………!」
「そらに”黄金の百合”に漆黒の牙まで…………!」
「恐れるな!例えランクA以上の遊撃士が集まろうと、幾ら何でも機甲兵相手に生身では敵うまい…………!」
一方エステル達の登場に機甲兵の中にいる猟兵達が警戒している中、猟兵の一人が仲間達に鼓舞をした。
「”リベールの異変”や”クロスベル動乱”を経験したあたし達からしたら、”輝く環(オーリオール)”と一体化した教授や”碧のデミウルゴス”と比べたらよほど楽勝な相手だけどね。」
「いや、比較対象が色々とおかしいから。」
「アハハ、比べるんだったらせめて、”パテル=マテル”や”トロイメライ”にしてあげた方がいいんじゃないかな?」
ジト目で答えたエステルの言葉にヨシュアは呆れた表情で、ミントは苦笑しながらそれぞれ指摘し
「舐めやがって…………!」
「我らニーズヘッグの依頼を邪魔するに飽き足らず、多くの仲間達を殺してニーズヘッグに甚大な被害をもたらせた貴様らだけは絶対に許さん…………!」
「この町を貴様らの墓標にしてやる…………!」
「あんた達がそんな事になったのは、全部自業自得でしょうが!――――――出番よ、クーちゃん、カファルー!!」
機甲兵の操縦席にいる猟兵達の自分達に対する憎悪の言葉を聞いたエステルは怒りの表情で声を上げた後心強き仲間達を召喚し
「ク――――――ッ!!」
「グオオオオオオオオ――――――ッ!!」
「ハァァァァァァ…………グオオオオオオオオ――――――ッ!!」
「なあっ!?」
「りゅ、竜に幻獣らしき大型の魔獣だとぉっ!?」
召喚されたクーとカファルーは咆哮を上げ、ミントは竜化し、それを見た操縦席にいる猟兵達は驚いていた。
「カファルー、シュヴェルトライテ、クーちゃんとミントはそれぞれ一人で銃を持った機甲兵の相手をして!あたしとヨシュア、パズモとテトリの4人で”ヘクトル”の相手をするわ!マリーニャさんとメティサーナ、ミルモは近接戦闘用の”ドラッケン”の相手を――――――」
「――――――いや、お前達が相手をするあの一番図体の大きい奴は俺達がもらう。」
エステルが仲間達に指示をしていた時、その場に仲間達と共に駆け付けたジェダルがエステルにある事を申し出た。
「へ…………っ!?」
「貴方達はさっきの…………」
ジェダル達の登場と加勢の申し出にエステルは呆け、ヨシュアは呆けた表情でジェダル達を見つめた。
「うわあ…………何なの、あの大きい人形の軍団は…………もしかしてリリカの親戚とかじゃない…………よね?」
「あ、当たり前ですよ!あんな可愛さが全くないものと私を一緒にしないでください!――――――というか私は今はこんな姿ですけど、元々人間なんですからあんな存在と親戚である訳がないでしょう!?」
「遺跡等を守護するゴーレムの類でしょうか…………?」
「んー…………どっちかというと”先代史文明”の戦闘兵の方に似ているかもしれないけど…………ま、どうせ壊しちゃうんだから、どうでもいいよ。」
呆けた表情で機甲兵の軍団を見つめて呟いたフィアに訊ねられたリリカは疲れた表情で反論し、ユリーシャの疑問に考え込みながら答えたフルーレティだったが、すぐに考える事を止めて凶悪な笑みを浮かべ
「お前達に加勢する”対価”は”情報”だ。――――――行くぞ!」
エステル達にある事を伝えたジェダルはリリカ達と共にヘクトルへと向かっていった。
「ちょ、ちょっと!?あーもう…………!悪いけどマリーニャさん達はあたし達と一緒にドラッケンの相手をして!さっさと倒していきなり乱入してきたあの人達の加勢をするわよ!」
「了解!」
「みんな、行くわよっ!!」
「おおっ!!」
ジェダル達を制止しようとしたエステルだったが、ジェダル達は既に戦闘を始めていた為止める事を諦めてマリーニャ達と共にドラッケンの相手をする事を決めた後号令をかけて仲間達と共に機甲兵の軍団との戦闘を開始した。
「纏めて潰れるがいい!」
「散開しろ!」
ヘクトルの重い一撃に対して仲間達に指示をしたジェダルは仲間達と共に散開して回避した。
「滅します――――――光焔!!」
「行きますよ…………!―――青月光!!」
敵の攻撃を回避したユリーシャとリリカはそれぞれ詠唱時間の短い神聖魔術で反撃したが、魔法攻撃にも耐性がある装甲でできている機甲兵にはあまり効果がなかった。
「魔法攻撃に対しては耐性があるようだが…………物理攻撃の方はどう…………だっ!!」
「うおっ!?クソッ!」
「!」
ヘクトルに一気に詰め寄ったジェダルはクラフト―――禍汲斬(ガルベリオ)で両足の関節部分を攻撃し、関節部分が攻撃された事で一瞬怯んだヘクトルはジェダルに反撃をし、ジェダルは後ろに跳躍して回避した。
「…………やはり見た目通り、物理攻撃に対しての防御力も中々のものか。だが、どうやらあの人形は”人”の姿を形どっているだけあって、関節部分は他の装甲比べると防御が薄いようだな。」
「”人”みたいに関節部分が弱いんだったら、頭の方はどう…………かなっ!」
「グアッ!?しまった、センサーが…………っ!」
ジェダルの解析を聞いたフィアはクラフト―――精密射撃でヘクトルの頭目掛けて正確無比な狙撃をし、フィアの狙撃によってセンサー部分が破壊された事でヘクトルの操縦席にいる猟兵は驚いた。
「フフッ、それだけ図体があるんだからこのくらいは耐えられるよね?――――――イルレスの氷柱!!」
「ガアッ!?なあああああああっ!?」
そこにフルーレティが発動した魔術によってヘクトルを中心に地面から現れた巨大な氷柱がヘクトルを貫き、他の機甲兵よりも厚い装甲に覆われているヘクトルが氷柱に貫かれている事を見た猟兵は信じられない表情で声を上げた。
「大地の力よ、今ここに集え――――――メテオグレイブ!!
「月女神リューシオンよ、裁きの鉄槌を今ここに――――――神槍の流星!!」
「天の光よ、あらゆる穢れを浄化して――――――天界光!!」
「グウッ!?」
リリカ、ユリーシャ、フィアが放った最上位クラスの魔術によるダメージはさすがのヘクトルも防ぐ事ができず、ダメージを受けると共に怯んだ。
「セイッ!!」
「邪魔ッ!!」
「グアッ!?しまった―――ガッ!?」
そこにジェダルが人間離れした跳躍力で、フルーレティが転移魔術でそれぞれ操縦席があるヘクトルのヘッド部分へと襲い掛かって同時に強烈な攻撃を叩き込んだ。するとヘクトルはヘッドに強烈な衝撃が与えられた事でバランスが崩れて地面に仰向けに倒れた!
「一気に決めるぞ、フルーレティ!」
「フフ、”アレ”をやるんだよね?いいよ、ジェダル…………!」
仰向けに倒れたヘクトルの様子を見て好機と判断したジェダルに呼びかけられたフルーレティは頷いた後その場でジェダルと共に集中した。するとヘクトルを中心に広範囲に広がる漆黒の波動が現れた!
「「共鳴紋瘴!!」」
「ぐぎゃあああああああっ!?……………………」
極限まで同調させた漆黒の波動で周囲を押しつぶすジェダル・フルーレティの協力技(コンビクラフト)――――――共鳴紋瘴はヘクトルを原型すら残していない姿へと押しつぶし、二人の合体技によって操縦席ごと押しつぶされた猟兵は絶命した!
また、ジェダル達がヘクトルとの戦闘を終える頃にはエステル達もそれぞれが相手をする機甲兵を撃破していた。
「終わりだ――――――神極突聖槍!!」
「ガフッ!?ク、クソッ…………何故貴様らのような化物が揃いも揃って遊撃士共に…………っ!」
シュヴェルトライテは凄まじい聖なる魔力を纏わせた神槍で常人には見えない凄まじいスピードで銃を持つシュピーゲルの操縦席があるヘッドの部分目掛けて突撃してヘッドの装甲を破壊しながら操縦席に座る猟兵の身体に大きな穴を開けて猟兵を絶命させ
「グオオオオオオオオ――――――ッ!!」
「ク――――――ッ!!」
「隕石石化大地震撃(メテオペトロアースクエイク)――――――ッ!!」
「「「うあああああああああ――――――ッ!?」」」
カファルー、クー、ミントはそれぞれ全てを焼き尽くす灼熱の炎のブレス、どんな存在をも完全に凍り付かせる絶対零度のブレス、どんな強固な装甲であろうと破壊する大地のブレスでそれぞれが相手をしていたドラッケン達を滅すると共に操縦していた猟兵達を絶命させ
「これで終わりだ――――――ッ!」
「ぁ――――――」
メティサーナは全てを滅する大鎌の一撃を放つSクラフト――――――魂ヲ切リ離ス鎌斬で操縦席にいる猟兵ごとドラッケンを一刀両断して滅した!
「皆さん…………!」
「わーい、みんな、勝ったです〜!」
エステル達の勝利に結界の中から見守っていたシュリとサリアは明るい表情を浮かべ
「あら?ふふっ、どうやら私達の加勢は必要なかったみたいだね。」
「ん…………教会守っているフェミリンス…………知らせる…………」
更に教会での戦いを終わらせてエステル達の加勢にやってきたリタとナベリウスもエステル達の勝利を確認した。
「よし、こっちは片付いたから後はいきなり乱入してきたあの人達が相手をしているヘクトルを―――って、へっ!?」
「どうやら彼らには加勢の必要はなかったみたいだね。」
一方自分達が相手をしていたドラッケンの撃破を確認したエステルはジェダル達の加勢をしようとしたが、ジェダル達がヘクトルを破壊する様子を見ると驚きの声を上げ、ヨシュアは苦笑した。
「あら?フウ………来るんだったら、もう少し早く来て欲しかったわ。」
その時何かに気づいたマリーニャは疲れた表情で溜息を吐き
「それってどういう意味、マリーニャさん?」
「ママ、領邦軍の人達もこっちに到着したみたいだよ!」
「あ…………」
マリーニャの言葉の意味がわからなかったエステルだったがマリーニャ同様機甲兵の軍団―――”黄金のシュピーゲル”を先頭にした領邦軍がアルスターに近づいている事に気づいたミントが声を上げ、ミントやマリーニャが見つめている方向を見つめて領邦軍を確認したエステルは呆けた声を出し
「”黄金のシュピーゲル”という事は操縦しているのは”黄金の羅刹”オーレリア将軍だから、ようやく領邦軍が到着したみたいだね。」
ヨシュアは安堵の表情で呟いた。その後アルスターに到着したオーレリア将軍率いる領邦軍は戦後処理をしていた。
「―――お初にお目にかかる。ラマール領邦軍―――いや、”貴族連合軍の残党”を率いる”将”たるオーレリア・ルグィンだ。このような形で其方達と邂逅する事になるとはこれも”空の女神”による導きかもしれぬな、かの”剣聖”の子供達よ。」
部下達が戦後処理をしている中エステル達に近づいてエステル達と対峙したオーレリア将軍は自己紹介をし
「アハハ、エイドス本人はその言葉、滅茶苦茶嫌がっているから、あんまり言わない方がいいと思うわよ?―――初めまして、遊撃士協会所属SS級正遊撃士のエステル・ファラ・サウリン・ブライトです!」
「同じくA級正遊撃士ヨシュア・ブライトです。」
「ミントはママ達の娘で、S級正遊撃士のミント・ルーハンス・ブライトです!」
オーレリア将軍が名乗るとエステル達もそれぞれ名乗った。
「フフ、アルスター襲撃の報を受けて急いで軍を編成して向かってみれば、まさか既に襲撃した猟兵達を殲滅した上、アルスターの民達を守り切るとは正直驚いたぞ。」
「アハハ、あたし達だけじゃ多分アルスターの人達は守れなかったわよ。今回は多くの協力者の人達の手を借りて守れたようなものだし。」
オーレリア将軍の称賛に対してエステルは苦笑しながら答え
「フッ、その多くの者達の協力を取り付ける事ができる其方の”器”である証拠なのだから、謙遜する必要はあるまい。」
エステルの答えを聞いたオーレリア将軍は静かな笑みを浮かべたがすぐに表情を戻して話を続けた。
「さてと。一応確認しておくが”手筈通り我らは保護をしたアルスターの民達をクロスベルに送り届け、その後はクロスベルが用意した護衛と其方達が引き続き護衛する形でアルスターの民達を匿う場所へと護送する事でよいのだな?”」
「あ、はい。えっと、一応あたし達も自分達だけでクロスベルに戻る手段はあるけど、できればあたし達もそっちの飛行艇に乗せてもらえるとわざわざ合流する手間が省けるから助かるんだけど…………」
「フフ、別にその程度の些事等お安い御用だ。其方達は私の専用艇でクロスベルまで送って行こう。」
「ありがとうございます。」
「う、う〜ん………今更だけど、将軍さんは他の領邦軍の人達とは色々違うよね?ミント達がエレボニアで活動していた頃の領邦軍の人達はミント達を凄く邪魔な存在扱いしていたし、内戦でも民間人の人達を凄く苦しめていたのに…………」
「ちょ、ちょっと、ミント。」
エステルの頼みに応じたオーレリア将軍の答えにヨシュアが感謝の言葉を述べた後ミントは首を傾げて疑問を口にし、ミントの疑問を聞いたエステルは冷や汗をかいた。
「ふふっ、内戦の件に関しては耳の痛い話ではあるが、少なくても私の部下達にはそのような愚かな事をする事は断じてさせていなかった事は女神達にも誓って断言できる。そして私自身は遊撃士協会はエレボニアの民達―――いや、エレボニアにとっても必要な存在である事は理解しているし、少なくても私の考えが浸透している部下達は其方達に対して邪険な態度は取らないから、安心するといい。」
ミントの疑問に対してオーレリア将軍は苦笑しながら答えた。
「ああ、それと…………―――我らに代わり、アルスターの民達を”第二のハーメル”の犠牲者にしないように守ってくれたこと…………心より感謝する。」
そしてすぐに表情を戻したオーレリア将軍はエステル達に頭を下げて感謝の言葉を述べた。
その後エステル達はオーレリア将軍の実家である”ルグィン伯爵家”が所有しているオーレリア将軍専用飛行艇―――”バルクルーサ号”でクロスベルへと護送するラマール領邦軍と共にクロスベルに向かう事となり、”バルクルーサ号”がクロスベルへと向かい始めるとエステル達はジェダル達と対面して互いに自己紹介をした後ゼムリア大陸と”ディル=リフィーナ”の関係について説明した。
〜バルクルーサ号・ブリーフィングルーム〜
「い、異世界と私達の世界―――”ディル=リフィーナ”が繋がっていたって………ううっ、案の定私の嫌な予感が的中しちゃったよ〜…………これじゃあ、”英傑人形”探しどころじゃないよ〜…………」
「ふふっ、しかもその世界を繋ぐ”門”を管理しているのはよりにもよって”メンフィル”とはね。光陣営のリリカからしたら、グラセスタに帰るためにメンフィルに頼らなければならない事に”色々”と思う所はあるんじゃないの?」
「別に私は”メンフィル”については知識として知っている程度で、思う所等はないのですが…………」
「二人はその”メンフィル”とやらを知っているのか?」
エステル達から事情を聞き終えたフィアは疲れた表情で溜息を吐き、興味ありげな表情を浮かべたフルーレティに話を振られたリリカは困った表情で答え、二人の会話内容が気になったジェダルは二人に”メンフィル”の事について訊ねた。
「知っているも何も”メンフィル”はサマラとも親交があった国だから、リクシュマ様に仕えていた私も”メンフィル”の存在くらいは知っているよ。」
「サマラと親交があった国という事は”闇陣営”の国か?」
「いえ、メンフィル帝国は少々特殊な国でして…………先程フルーレティさんも言ったようにサマラ魔族国に加えて”闇陣営”の国家であるベルガラード王国とも親交がある事から”闇陣営”の国家と見られがちですが…………メンフィル帝国は”光と闇の共存”を掲げていて、遥か昔から”光”と”闇”に分かれて争っている世界である”ディル=リフィーナ”にとってはとても珍しい大国なんです。」
「”光と闇の共存”という事は例えば、この身のような天使が魔族と共存しているのでしょうか?」
フルーレティの話を聞いてある事を推測したジェダルの推測を否定したリリカの説明を聞いたユリーシャは疑問を口にした。
「うん、天使族の人達は数は少ないらしいけどメンフィルに所属している人達はいるらしいし、”光陣営”の宗教―――例えば”癒しの女神(イーリュン)”や”交易の神(セーナル)”の聖堂もメンフィルにあるわよ。」
「ちなみにメンフィル帝国の皇族の一人―――ティア皇女殿下は母親が”癒しの女神(イーリュン)”教の司祭だった方でご自身も”癒しの女神(イーリュン)”の司祭を務めていますし、現メンフィル皇帝であるシルヴァン皇帝陛下の母君は”軍神(マーズテリア)”教の”神格者”です。」
「それにメンフィル帝国には”闇夜の眷属”の人達と人間の人達だけじゃなく、色んな種族の人達も一緒に住んでいるよ!」
「な―――光陣営の神に”神核”を与える者として選ばれた者がその光と闇の陣営が共存するメンフィル帝国とやらの皇帝の母君なのですか!?」
「”軍神(マーズテリア)”…………光陣営の中でも強大な軍事力を持つ教会か。しかも、そのメンフィルとやらの皇帝の母が”軍神(マーズテリア)”の”神格者”とはな…………」
「へ〜…………何だかグアラクーナみたいだね!私の住んでいる所―――グアラクーナ城砦にも種族関係なくたくさんの人達が住んでいるもの!」
エステルとヨシュア、ミントの話を聞いたユリーシャは驚き、ジェダルは考え込み、フィアは興味ありげな表情を浮かべた。
「あれ…………?あの〜…………私が知っているメンフィル帝国についての知識ですと、確かに”シルヴァン・マーシルン皇帝はメンフィル帝国の皇帝だった方”ですけど、”今のメンフィル帝国の皇帝はリフィア・イリーナ・マーシルンという名前の女性の皇帝―――女帝”のはずですが…………」
「へっ!?リ、リフィアがメンフィル帝国の皇帝って………!」
「…………どうやら、彼らはゼムリア大陸どころかこの時代の人達ですらないみたいだね。」
(ハア…………並行世界のキーアは何を考えて西ゼムリア大陸全土が動乱の時代になりつつあるこの時期に―――いえ、”この時期だからこそ”何らかの意図があって彼らをこの時代に呼び寄せたかもしれませんわね…………)
「ううっ、ただでさえ本来だったらこの時代に留まっているべきじゃないエイドスさん達までいるのに、更に増えるなんて………しかも、サティアさんやエイドスさん達と違って、ジェダルさん達は何年後の未来の人達かの手がかりとかもないから、ジェダルさん達を元の時代に送り届けるのも相当苦労する事になるよ〜…………」
リリカの指摘を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは表情を引き攣らせ、フェミリンスは呆れた表情で溜息を吐いてある人物を思い浮かべ、ミントは疲れた表情で頭を抱えた。
「”この身や我が主達が貴方達の時代の者達ではないという事”は…………」
「嘘でしょう〜!?異世界移動に加えて、時間移動とか、本当にどうなっているの〜!?」
「だから、それは俺達のセリフだ。―――それよりも、ミントだったか。ミントの口ぶりだと、俺達を元の時代と場所―――”迎撃都市グラセスタ”に送れるような口ぶりだったが、本当にそんな事ができるのか?」
エステル達の話を聞いてある事に気づいたユリーシャは目を丸くし、フィアは信じられない表情で声を上げ、フィアに呆れた表情で指摘したジェダルはエステル達に問いかけた。
「う、う〜ん…………本当だったら、ミントの正体については身内以外の人達にあんまり話したくはないけど、状況が状況だから仕方ないわよね?」
「うん…………えっとね、ミントは―――」
ジェダルの問いかけを聞いて疲れた表情を浮かべたエステルに判断を委ねられたミントも疲れた表情で頷いた後自身の正体について説明した。
「じ、”時間を自由自在に移動できる竜”って、まさか本物の”女神”のフェミリンス様以上に驚く存在がいるとは思いませんでしたよ…………」
「何はともあれ、ミントちゃん―――”真竜”の役目は私達みたいに何らかの事故で別の時間軸に飛ばされた人達を元の時代に戻す事もその役目の一つだそうだから、私達が”白い災怨”に突入する前のグラセスタまで送ってもらえる目途がついたのは何よりだね〜♪」
ミントの正体について知ったリリカは表情を引き攣らせ、フィアは安堵の表情を浮かべた。
「えっと…………その事なんだけど、ジェダルさん達を元の時代のその”グラセスタ”って所に送り届けるのは今すぐは無理で、早くても半年後になるんだけど…………」
「何?一体どういう事だ?」
気まずそうな表情を浮かべたミントの答えにジェダルは眉を顰めて訊ねた。
「えっとね?話し出すと長くなるから凄く簡単に説明するけど、以前ミント達が戦った”敵”の人達が死に際に時空間を滅茶苦茶にしちゃった事で時空間移動が凄く危険になっている状況だから、その滅茶苦茶になった時空間が落ち着く半年後までは時空間移動ができないんだ…………」
「つまりこの身達は少なくても半年はこの時代に留まらなければならないのですか…………」
「ううっ、私達が突然いなくなった事でグラセスタの人達が私達が”黒の杭”で死亡したか、”不明体”になってしまったと勘違いしていないとよいのですが…………」
ミントの答えを聞いたユリーシャは表情を引き攣らせ、リリカは疲れた表情で呟き
「ま、元の時代―――要するに私達が”白い災怨”に入る前の時間軸に送ってもらえば、問題ないんだから、そんなに気にする必要はないんじゃない?」
「それもそうだな…………―――それよりも、元の時代に戻るまでの半年をどう行動するかだな…………―――まず最優先に確保すべきは拠点と金だな。」
「あ”。そ、そういえば私達って世界も時間も違うここだと泊まる所は当然として、この世界で使えるお金も持っていないよね…………?」
フルーレティの意見に同意して考え込み始めたジェダルの言葉を聞いたフィアは表情を引き攣らせた。
「あ、それだったら遊撃士(あたし達)の手伝いとかしない?ジェダル達の実力だったら、ミシェルさん達も歓迎すると思うし。」
「エステルさん達の手伝いというと…………」
「遊撃士―――力無き民達を護る為に存在する正義の傭兵ですか。確かに我が主は元々傭兵であるのですから、ちょうどいいかもしれませんね。それに我が主が善行を重ねる機会でもありますね…………!」
「それ以前に”正義の傭兵”って何か、色々とおかしい気がするんだけど…………」
エステルの提案を聞いたリリカは目を丸くし、ユリーシャは目を輝かせ、フィアは冷や汗をかいて指摘した。
「―――必要ない。先程も説明したように俺は今、リリカを”黒の抗”の最奥まで護衛するという契約―――”約束”を結んでいる。俺は既に一人の人物と”約束”している間は、他の人物達との”約束”は引き受けない事にしている。」
「ジェ、ジェダル…………」
「うーん、セリカ達の時みたいにいい提案だと思ったんだけどな〜。」
「エステル、ジェダルさん達の場合はセリカさん達と違って、既に傭兵としての仕事を請けている状況なんだから、さすがに遊撃士としての仕事を手伝ってもらう事は無理だと思うよ?」
ジェダルの答えを聞いたリリカが頬を赤らめている中、考え込んでいるエステルにヨシュアは静かな表情で指摘した。
「それ以前に”遊撃士”とやらは”対価”も無しに、民間人を護る事が義務付けられているとの事だから、俺はそんなお人好しな真似をするつもりは毛頭ない。」
「というか私からすれば、何で女神がたった一人の人間と契約している上、そのお人好しな集団に所属しているとか、意味不明なんだけど?」
「…………その言葉そっくりそのまま、お返ししますわ。―――貴女こそ”魔神”―――それも”契約”している訳でもないにも関わらず、その者達の仲間である事が不思議なくらいですわ。―――って、そこの”縁結びの女神”とやらのフィアでしたか?先程から何度も私に視線を向けていたようでしたが、そちらの魔神のように私に何か言いたい事があるのですか?」
ジェダルがエステルの誘いを断った理由を更に口にした後、フルーレティはフェミリンスに視線を向けて嘲笑し、フルーレティの嘲笑に対して静かな表情で答えたフェミリンスだったが、すぐにフィアが何度も自分に視線を向けている事に気づいていた為フィアに問いかけた。
「ああ、いや、えっと…………私以外の女神に会うなんて初めてだから、色々と興味があるだけなんです、えへへ………(おっかしいな〜…………?”英傑人形”の中に”幻燐の姫将軍”のラスボスの”姫神フェミリンス”もあるけど、全然姿が違うし…………)」
フェミリンスに問いかけられたフィアは内心を隠しながら苦笑しながら答え
「ジェダル、その”遊撃士協会”という組織が出している”依頼”は聞いた限りですと、”迎撃匠合”が出している”依頼”とも似たような内容もあるようですから、エステルさん達を手伝う事についても私の護衛にそれ程支障はないと思いますけど…………実際、ジェダルとの”約束”の中にはジェダルは”黒の抗”を探索する私と共に”迎撃匠合”が出している依頼を引き受けて実行していい事も”約束”の中に入っていますし。」
「……………………確かに言われてみればそうだな。」
「それじゃあ…………!」
リリカに指摘されて少しの間考え込んだジェダルがリリカの意見に同意する様子を見せるとエステルは明るい表情を浮かべたが
「―――勘違いするな。俺達はその”遊撃士”とやらになるつもりはない。あくまで”傭兵”としてその遊撃士協会とやらが用意する”依頼”を引き受けるだけだ。遊撃士(お前達)のように無条件で民間人を護るような事をするつもりはない。」
「ちょっ、それってどっちかというと”猟兵”に近いじゃない…………!?」
「待って、エステル。…………逆に言えば”対価”―――具体的に言うとこの世界の通貨である”ミラ”、もしくは”ミラ”に換金できる”セピス”さえ用意すれば、民間人を護る事も考慮して頂けるのでしょうか?」
ジェダルが答えたジェダル達の意志を知ると信じられない表情をして反論しようとしたが、ヨシュアが制止してジェダルに問いかけた。
「ああ。それと当然だが、半年経って時間移動ができるようになればそこのミントとやらに俺達を元の時代のグラセスタに送ってもらう。」
「別にミントはわざわざ約束しなくても、元々そのつもりだけど…………」
「誠に申し訳ございません…………我が主は人の好意を素直に受け止める事が中々できない方でして。」
ジェダルの要求に対してミントが困った表情を浮かべている中、ユリーシャは申し訳なさそうな表情で謝罪し
「ああ、ユリーシャさんがわざわざ謝らなくてもいいわよ。ジェダルみたいに口や態度が悪い人はあたし達の知り合いの中にもいるから慣れているし。―――そういう事なら早速ジェダル達に”依頼”したい事があるんだけど―――」
ユリーシャの謝罪に対してエステルは出会った当初のアガットの事を思い浮かべながら疲れた表情で答えた後気を取り直してジェダル達にジェダル達の拠点の確保と1週間分の生活費を”対価”に自分達と共にアルスターの民達をクロスベルが用意したアルスターの民達を匿う場所へと護送する”依頼”をし、その依頼を引き受ける事にしたジェダル達はエステル達と共に”バルクルーサ号”でクロスベルに向かう事となった――――――
ようやく暁、ログインできるようになりました…………それと暁の軌跡はエリゼ実装で、テンションあがりまくっていますww(まあ実際ゲットできるのは来月末でしょうけど)
次回は予告通りエステル達に加えてロイド達、リィン達、そして様々なエウシュリー陣営のキャラ達が共闘する戦いになる予定です。なおジェダル達は今後、エステル達に限らず、様々な陣営の協力者として活躍させる予定です。まあ、様々な陣営とはいっても幾ら何でも敵側であるエレボニア陣営(Z組含む)には協力しませんが(苦笑)そしてジェダル達の登場によって、碧編の”戦鬼”対決のようにある呼び名同士の対決としてジェダルと軌跡シリーズのあるキャラとの夢の対決が実現可能な事に…………!なお、今回のヘクトル戦のBGMはグラセスタの”閃光交わり轟く戦場”、オーレリア達登場のBGMは零の”揺るぎない強さ”、エステル達とジェダル達の会話のBGMはグラセスタの”迎撃都市グラセスタ”、グラセスタ陣営のフィールド移動の際のBGMはグラセスタの”自由を掴むその日まで”で通常戦闘はグラセスタの”生死の狭間を生きる者たち”だと思ってください♪
説明 | ||
外伝〜アルスター襲撃〜 後篇 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1739 | 1463 | 3 |
タグ | ||
他エウシュリーキャラも登場 他作品技あり 幻燐の姫将軍 空を仰ぎて雲高くキャラ特別出演 軌跡シリーズ 閃の軌跡 | ||
soranoさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |