連載小説14 |
数学の時間が終わった。
数学は今日の最後の時間だったから、これで終わりって事になる。
問題の数学の時間はと言えば、
温厚そうなおじいさん先生で、内容も定番の自己紹介から。
「数学は難しく、挫折してしまう生徒も多いのですが、
二人三脚、分かりやすく教えるよう努力しますから、みなさんも頑張ってくださいね」
とか言っちゃうような先生だから、きっといい先生なんだと思う。
一同がほっとした中、一人沈んでる人が。
「はぁぁぁ〜〜〜〜」
盛大なため息をついているのは、自称「数学が大の苦手」な木谷さん。
「ちょっと、あの先生良さそうじゃん。ちゃんと授業聞いてたら、
理解できるようになるんじゃないの?」
「さあ、どうかしら。何せ、私の数学の苦手っぷりはそんなもんじゃないんだから」
豪語されても困る。けど、そこまでなら、逆に伸びしろはたくさん、て事だ。
「とりあえず、やる前から諦めてないで、努力だけはしてみようよ」
「まさか、倉橋さんに応援されるとはねー。でも、その応援、やっぱり
生徒会役員向きだわー。そうやって生徒を応援する態度は、武器だよ!」
げ。なんだか元気を取り戻した?
「ま、まぁ、その話はともかく、数学、頑張ろうよ。私も国語がんばるから」
「そーね。未来の生徒会役員様に応援されたんじゃ、やらないわけにはいかないか」
生徒会役員の事は引っかかるけど、やる気になってくれたんなら、まぁいいか。
「よし、頑張ろー!」
「おー」
今一歩、木谷さんに気迫がないのは、気になったけど。
「さて、それじゃあ帰りますか」
「だねー。そうだ倉橋さん」
?
「何?」
「今日、一緒に帰っていい? もちろん、楓さんと三人で」
え?
「ほら、近くまで一緒に帰らせてよ」
「いいけど…遠回りになるでしょ?」
そうまでして付いてくる価値なんて、あるのか? 友達と一緒に帰る価値は理解できても、わざわざ遠回りをする価値が理解できない。
「ふむ、遠回りか。私の価値観だと、気にならんね」
「えぇ? でも、電車賃だって…」
これもどうやら愚問だったようだ。
「私をそこまで貧乏だとは、思わないように!」
「は、はぁ。そうですか…」
こっちとしては、断る理由は無いんだけど…妙に引っかかる。
「それじゃ、楓さんを誘って帰りましょうか!」
「お、おー」
私はただ、やる気無く拳を突き上げた…
〜つづく〜
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第14回 | ||
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