とある小さな恋の話
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   そこにいる君

 

 ミハイ・ア・シラージは、エルジア貴族の令嬢と政略結婚をした。

 当時の旧エルジア王国は貪欲で、周辺の小国を次々とのみ込み、領土を拡張していた。

 シラージは外交戦略の一環として、エルジア貴族の娘との結婚を受け入れた。世継ぎであるミハイも王族として、その役目を受け入れた。

 その貴族の地位はそこそこで、権力からは距離があった。その貴族になにかあってもエルジア側には痛手にならないが、他国と縁を作るには打ってつけの位置にいる。

 さらに令嬢は、ある王族の血を引いていた。彼女の母親がエルジアに併呑された小国の王女だった。その王女はエルジア貴族と政略結婚することで、なんとか祖国を穏便に併合させる目的があったらしい。

 そういう経緯もあり、令嬢はエルジアが送り込んだ尖兵と見なされたが、結婚生活は可もなく不可もなく、そのうち娘が生まれた。

 何年かは平穏に過ごしたとミハイは思っていたが、革命が起きた。ミハイは親友と思っていた相手に銃で撃たれ、左頬に二度と消えない傷跡が残った。

 革命は達成され、王族は住み慣れた城や屋敷を追い出されて国外に脱出し、ミハイの妻の実家を頼ってエルジアへと逃れる。

 シラージは共和制に移行したが、まだ政治基盤が脆弱な隙を突いてエルジアが侵攻し、シラージをのみ込んだ。

 王族といえば、革命の過程でシラージ大公は亡くなり、家長はミハイとなった。

 すべてが予定調和のようで、ミハイは最初、妻とその実家を疑った。

 が、中央からは遠い彼らが知るわけもなく、彼らもまた、いいように使われたのだとミハイは悟った。

 結果的にエルジアはシラージの王族の亡命先となり、保護する形となった。

 エルジア貴族の令嬢と結婚した縁もあり、エルジア王はミハイとその一族に王族に準じる地位、エルジア貴族としての身分を用意したが、ミハイは拒否した。一平民となることを選び、妻は夫の決断を支持した。

 だが家長の決定に一族内で紛糾が起こり、ミハイたちから離れ、エルジア貴族の末席に加わる者もいた。シラージの王族はバラバラになり、これもまたエルジア側の思惑通りなのだろうとミハイは思った。

 民間のパイロット免許を持っていたミハイは、エルジア王から空軍士官学校に入るよう命じられた。入学条件がある士官学校に入るには、ミハイはいささか年齢オーバーしているため、最初は戸惑った。

 エルジア王の温情を蹴った自分に対する制裁を兼ねた見せしめだと頭で分かっていても、心がまだ追いつかない。

 商売に向く気質でもなく、かといって学者になる熱意はなく、ただ君主となるための教育をほどこされ、引かれたレール以外歩むことを許されず、それ以外の道はないと思っていた。

 それなのに、革命によってすべてがひっくり返された。

 自分が守るはずの民から追われ、失った故郷。父の死。一族の離散。なにより親友と思っていた人間からの裏切り。

 短期間に立て続けに起きた強烈な出来事に、ミハイは愚痴をこぼさなかったが、体には現れていた。まだ若いのに、髪は老人のようにすっかり白くなったのだ。

「ねえミハイ。空を飛ぶの。空はあなたを裏切らない」

 からっぽ同然になったミハイに新しい道を与えたのは、妻。

「あなた、空を飛ぶのは楽しいって言ったでしょう? 飛び続けるの。だから今度は、私を戦闘機に乗せて? 初めてのデートで飛行機に乗せてくれた時みたいに」

 エルジア王の命令を受け入れたミハイは家族と離れ、士官学校で寮生活を送ることとなった。

「大丈夫。実家の助けがあるのは心強いわ」

 実際そうだった。妻子の生活や養育に心配がなかったのは、裕福で安定している妻の実家があったからこそ。

 そしてエルジアもかつてのシラージと同じように王族は降ろされ、共和国となった。

 その頃には、ミハイは戦闘機パイロットして認められていた。エースとも呼ばれ、生活は安定した。

 妻の実家もほかの貴族たちと同じように、土地や屋敷の大部分を失ったが、一族は医師、弁護士、銀行家、外交官と、上流階級の人間ならではの職業に就いている者が多く、大きく身を持ち崩す人間は少なかった。

 妻の両親はそれまで住んでいた屋敷よりはせまい、だが一般人にとっては十分過ぎるほどに広い別荘に移り住み、余生を過ごした。

 妻といえば、かねてからの望み通り、一線をしりぞいて教官となったミハイが操縦する戦闘機に体験搭乗をし、大空を飛んだ。

 軽飛行機とは違う音速の世界に妻ははしゃぎ、Gにも耐え、酔うことも吐くこともなく戦闘機から降りてきた時は、整備兵から「奥様すごいですね」と感嘆の声を上げられた。

「ミハイ! 空は本当にいいわね!」

 それからほどなくして、妻は病に倒れた。すでに手のほどこしようがなかった。

 ずっとミハイを支え続け、弱音らしい弱音を吐いたことのない女性だったが、それまでの生活でミハイに見せたことのない一面を病床で見せた。

「ねえ、私たちが初めて会った時のこと、覚えてる?」

「飛行場のことか?」

「そう。あなた、自家用機からパイロットの格好で降りてきて、とても格好良かったの。まるで映画スターみたいだった」

「そうかな」

「そうよ。あの時私、あなたに恋をしたの」

「そうか」

「私をエルジアに身売りした王女の娘と見なかったのは、あなたが初めてだった」

 とっさにミハイは受け答えができなかった。

 なに不自由なく、傷一つなく、血に汚れず、蝶よ花よと育ったように見えて、彼女もまた、深い傷をかかえていた。

 貴族の娘が上級将校ならまだしも、一平民の、兵士の妻として生きるのは苦労の連続だったろうに、それも一切見せなかった。

 ミハイは自分のことばかり見ていて、妻の深い部分を見ていなかったことを思い知る。

 親友と思っていた相手もそう。彼にとって自分はおそらく親友ではなかったと、銃で撃たれてから気づく。

 妻は、死ぬ間際になって。

「母とその親族は、自分たちの祖国と民を平穏に残すために、王女の母が政略結婚をして、エルジアに服従の意を示したの。幸い父はいい人で、結婚生活は子供の私から見ても良かったと思うわ。でも、身売りをしたって聞こえるように陰口を言う人もいたの」

 どこか遠くを見ながら語る妻の手に、ミハイは己の手を重ねた。記憶していたよりも、細く小さくなった手。

「あなたとの結婚もそう。身売りをした女の娘だから選ばれたと言う人がいて、私は私の意思で選んだのに、相手にはそう見えなかったみたい」

 妻はふふっと笑うと、「不思議ね」と言う。

「私を傷つけようとして、相手はなにもない所を切っているの。ああいう人たちは、私を通してなにを見ていたのかしら?」

「その人間が見たいものだろう」

「そこに私はいないのね」

「いるさ」

「そう?」

「いるから、傷ついたから、今君は泣いているんだろう?」

 妻の目尻からは涙がこぼれ落ちていた。

「君は、怒っていたんだ」

 次々と流れ落ちる涙を、ミハイの武骨な指がぬぐう。

「貴族の娘は人前で泣いたり、大声を出してはいけませんと教えらえるの」

「私もそう教えられた」

「怒って良かったのね」

「ああ、そうだ」

「あなたが平民になると言って、私がそれに従った時、あなたの親族から反対しろと怒られたことがあったの」

 妻はミハイの手に己の手をそっと重ねる。

「あなた、怒ったから平民になると言ったんでしょ?」

「多分、そうだ」

「私もよ。私たちを踏みにじったエルジアに、腹が立ったの」

 妻は泣きながら笑い、つられてミハイも微笑む。

「私たち馬鹿ね。気づくの、ちょっと遅かったわ」

 併呑された国の王女を母に持つ女と、革命を起こされ、国を追われ、その国はエルジアに併呑された元王族の男。

 けして同じではない。同じではないが、繋がってはいた。

「ねえミハイ。私、やっぱり今もあなたに恋してる」

 それが、意識があるうちに妻が言った最後の言葉だった。

 妻が亡くなったあとも、ミハイは空を飛び続けた。

 大陸戦争で戦友やかつての教え子たちが亡くなり、失ったものはあるものの、結婚した娘は孫娘を二人生み、まだなにもなくなってはいないことを実感させた。

 それも、娘夫婦の死という形で奪われた。またなくなっていく。

 孫娘たちはまだ保護者を必要とする年齢であり、今度はミハイ自身の手で子供の面倒を見なければならない。

 さすがのミハイも一抹の不安を覚えた時、無人機開発の話が舞い込んできた。説明に来たのは硬い風貌の、シュローデルという眼鏡をかけたベルカ人科学者。

「人工知能……?」

「ええ。無人機に人工知能を乗せるプロジェクトです。そのため、人工知能に学習させる戦闘データが欲しいのです。エルジア空軍からは、あなたが良いのではと推薦されました」

「無人機とは、時代が変わったな」

 ミハイはタブレットを操作して資料を見る。自由に拡大できるタブレットは、老眼には便利だった。

「ゼット、オー、イー…?」

「はい。我々は人工知能を((Z.O.E.|ゾーイ))という名で呼んでいます」

 ??ミハイ。

 亡き妻の声が聞こえた気がして、わずかにミハイの口元がゆるみ、「そうか」とつぶやく。

 その後もシュローデルは淡々と説明し、最後に「なにか質問はありますか?」と聞いた。ミハイは「ない」と簡潔に答えると、「テストパイロットの件、引き受けよう」と言う。

 あまりにも早い判断に、シュローデルの眉がわずかに動いた。

「そうなると実験基地へと移動になりますが、ご家族はどうしますか? 書類では、まだ就学中のお孫さんが二人いるそうですが…」

「それはこちらでなんとかする。君は心配しなくていい」

 強く言われたシュローデルはちらりとミハイを見たあと、「そうですか」とすぐに引き下がった。

「必要事項を書いた文書を、紙でもメールでもいい。あとで送ってくれたまえ」

 そう言うと、ミハイはシュローデルの言葉を待たずに部屋を出る。

 残されたシュローデルは、ミハイがまるで王のようだと感じた。元王族だけに、そういう振る舞いがにじみ出るというべきか。

 疲労が色濃いため息をついたあと、あることに気づいた。自分たちがゾーイと呼ぶ人工知能。

 ではエルジアの公用語での読み方は??。

 シュローデルは((弾|はじ))かれたように顔を上げ、閉ざされたドアを見る。今度は大いなるもの、たとえば運命と呼ばれるものへのため息をついた。

 一方ミハイは、ドアの向こうで大きく深呼吸をした。妻と名前が似ている。ただそれだけの話。

 あちらはゾーイと呼ぶ。妻のほうは、ゾエ。

 妻の名はあらかじめ知っていたものの、彼女の口から直接名前を聞いた時、「珍しい名前だと顔に出ています」と笑われた。名付け親が、遥か昔にいたという女帝の名前をつけたのだという。

 ゾーイという人工知能はゾエではなく、ゾエは人工知能ではない。

 まったく違うが、なんの因果か。運命か。

 ミハイはゾエが亡くなって以来、結婚指輪を((外|はず))している左手の薬指に触れる。

 空を飛べと、また君が言うのか。

 死してなお、まだ導いてくれるというのか。

 娘を生み、空を飛べと言って人生に新たな目的を与え、心の拠り所を与えてくれた人は、自分より先に亡くなった。

 ミハイは窓越しに空を見上げ、太陽のまぶしさに目を細める。

 ゾエ。君は今、そこにいるのか。

 

END

 

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   不可視の慕い

 

 爪痕のパイロットに会ってみたい。

 イオネラ・ア・シラージは学友のエルジア王女ローザ・コゼット・ド・エルーゼに、そうもらしたことがある。

 停戦したとはいえ、戦争中は敵国であったオーシアのパイロットに会えるはずもないと思っていたイオネラにとって、コゼットの「会えることになったの」という一言は、天地がひっくり返る思いだった。

 爪痕のパイロットはオーシア兵だが、終戦後に本国へと帰還せず、今もユージア大陸にいるという。彼の所属する部隊が、イオネラたちがいる地域に近い基地に訓練で降り立つことになり、そこに無理を言ったようだった。

 国境や民族を超えてすべてを同胞と見なす、コスモポリタリズムという世界規模の思想。そのオピニオンリーダーになりつつある若きコゼットに対して、IUN国際停戦監視軍が恩を売る形になった。

「先に会っておいたほうが、あとあと好都合かもしれないから」

 コゼットは少しずつ、文字通り王女として行動し始めているのだとイオネラは分かった。周囲に言われるがまま、必死に王女としての役目を果たしていた頃のコゼットではない。自分が持つ力を自覚し始めている。

 とはいえ、個人的な政治判断も含まれているだろうが、なによりコゼットが一目会いたかったようで、このへんはまだ年相応なのだとイオネラは察した。

 あくまで王女のプライベートとはいえ、会う場所はセッティングされ、まずは基地の応接室で会うことになり、イオネラと妹のアルマは王女の友人として同行した。

 期待と不安が混ざる中で待っていると、トリガーが所属する部隊の面々が部屋に招かれた。彼らはフライトスーツを着ていて、ふと、イオネラは祖母の話を思い出した。

 祖母が祖父と初めて出会ったのは飛行場で、祖父はまるで銀幕から抜け出てきたスターのような、ハンサムな紳士だったという。

 しかし今の状況は祖母の時と比べると、かなり遠い。

 仕切り役の基地司令が名前を順番に紹介すると、型通りの会話が始まる。

 イオネラたちのほうは主にコゼットが喋り、部隊で最初に発言するのは隊長であるトリガーだったが、話を広げたり盛り上げたりするのは年長者のイェーガーと、フランクな雰囲気のあるカウントの二人だった。

 次は基地の案内となり、そこで部隊はお役御免となったが、隊長であるトリガーともう一人、カウントが付き合うことになった。

 どちらかというとカウントはアルマの相手をしてやり、簡単な手品を披露して、市販のお菓子をプレゼントしてあげた。

 手品といっても、アルマの視線を違う方向に誘導させ、その間になにもなかったはずの手にお菓子を持ち、視線が戻ってきた時に手の中を見せるというもの。

 それでも、まだ幼さの残るアルマにとっては魔法に見えた。

 イオネラは「初対面の人にあんなに懐くなんて……」とつぶやくと、「彼、意外に面倒見がいいんですよ」とトリガーが返した。

 カウントとアルマの二人を柔らかい表情で見守るトリガーは、祖父のように威厳があるわけではない。ソル隊の隊員たちのように、強い輝きがあるわけでもない。

 まるで隣近所のお兄さん。

 少女の視線に気づいたトリガーは、「どうかしましたか?」と聞く。

「すみません。その、おじい様が…」

 そこまで言って言葉を濁らせたあと、イオネラは思い切って「祖父が言っていたイメージと違ったもので……」と続けた。

「どんな感じですか?」

「まるで狼のようだと」

「狼、ですか」

「集団を統率し、獲物を諦めずに追い続け、仕留める」

「過大評価ですよ」

「ですが、祖父を撃墜したのはあなただと聞いています」

「それを言われると……」

 さすがのトリガーも笑ってごまかした。

「責めているわけではないのです。祖父を地上に降ろしてくれたこと、感謝しています」

「地上に降ろした、ですか?」

「はい。祖父は飛び方を知っていても、降り方は知らなかったのです」

 トリガーは無言を返す。

「部隊の隊員たちは祖父のことをキングと呼んでいましたが、たった一人の王国なんて、まるで空に尽くすようで……」

 言い終える前にイオネラはハッとして、顔を上げた。

「すみません。なにも知らない方に込み入ったことを言って」

「いえ。他人だから言えるのでしょう。そういうこともあります」

 やんわりとトリガーは肯定する。

「ありがとうございます」

 老いて科学の力を借りたとはいえ、それでもエルジアでは並ぶ者がいないほど強かったミハイに、見所があるとさえ言わせたオーシアのパイロット。

 大空を自由に飛びたい。最初はそこから始まったものが、いつしか空にとらわれた騎士であった祖父を解放した異国の戦士。

 祖父のコピーともいえる無人機を撃墜して量産化を防ぎ、人間に空を取り戻させることに成功した新たなる空の王。

 そんなトリガーと実際に会ってみれば、どこにでもいる青年だった。たとえるなら、記憶の中の父親に近い。

「あの、トリガーさんも空がお好きなんですか?」

「好きですよ」

「でも降り方を知っている」

「親戚の飛行機乗りに、そう教えられましたから。帰る場所がなければ、鳥は飛べない」

 手を鳥の形に見立てて、ひらひらと動かす。

「空を守ることは、地上を守ることと同じなんです」

 イオネラは初めてトリガーの顔をまじまじと見た。ダークブルーの瞳。深淵の底に横たわる輝き。宇宙に繋がる始まりと終わりの黒い青。

「すみません。変なことを言いましたね」

 ??お父さんも空が好きな人だけど、あの人は降り方を知っていて、ちゃんと地上に帰ってくるの。

 母親の言葉が脳裏に鮮やかに甦る。

「……いえ、いえ。変ではありません」

 イオネラにとって、爪痕のパイロットは家庭に平穏をもたらすきっかけになった存在で、恩人の側面もあった。

 強制的に地上に降ろされた祖父は、生きようとする力が弱かった。

 が、かつてのソル隊の面々から、オンラインのシューティングゲームを勧められたら、いくらか気が晴れたらしい。日々の楽しみとなっていた。

 この向こうに強い誰かがいる、ネットとは広大だとミハイは感心していた。今ではランキングの常連になるほどの腕前になっている。

 生きる気力を取り戻し始めたミハイはイオネラに、「お前も私や難民たちの世話だけでなく、誰かに会えるといいな」ともらしたことがあった。

 イオネラは「ボランティアもいろいろな出会いがあります」とささやかな反論をしたが、ミハイは分かりにくい微笑を浮かべたあと、それ以上はなにも言わなかった。

 だが、おそらくそういうことではなかった。ミハイが言いたかったのは、もっと個人的なもの。人生の繊細な部分のこと。

「イオネラ、アルマ!」

 基地司令との会話が終わったコゼットが、姉妹の名前を呼びながら軽やかに駆け寄ってくる。

 戦後のコゼットの服装はパンツスーツ、靴はローファーを愛用していた。戦時中まではスタイリストの指示通り、皆が望む王女の姿、スカートにパンプスという、いわゆる女性らしい格好だったが、今の彼女は動きやすいことを第一にしている。

「次は戦闘機に乗せてくれるんだって! ああでも、座席に座るだけね」

 コゼットもこの時だけはいつもの調子でシラージ姉妹に話しかけ、姉妹は「ほんと?」と反応した。姉妹は実験基地にいたこともあり、戦闘機は見慣れているが、ほかの軍が使用している戦闘機を間近で見るのは初めてだった。

 そのやり取りをトリガーとカウントは「尊いな…」と言いながら微笑ましく見守り、二人の視線に気づいたコゼットは軽く咳払いをする。

「乗るのは私が使用する戦闘機になりますが、よろしいですか?」

 トリガーが微笑みながら言うと、コゼットはにっこりと微笑み返し、「はい。よろしくお願いします」と王女の態度を取った。

 格納庫はすぐそこだったので、皆で連れ立って歩き、軽い説明を受けたあと、最初にコゼットが乗ることになった。

「足元にお気をつけて」

 コゼットがタラップに近づくと、トリガーは当たり前のように手を差し出す。コゼットも当たり前のようにその手を取る。無駄のない優美な一連の動作。

 王女としての振る舞いと周囲の人々の動きは見慣れているはずなのに、なぜか今回のトリガーに限って、イオネラは胸のあたりを締め付けられるなにかがあった。

 今はエルジアの自治領となっているシラージが一つの独立国だった頃、祖父と祖母は政略結婚をしたのだと、姉妹は母親から聞かされたことがある。

 それは姉妹にとってルーツとなる話だったが、寝る前に聞くおとぎ話という側面が強かった。

 中には曾祖母の話もあった。エルジアにのみ込まれた小さな国の最後の王女もまた、エルジア貴族と政略結婚をしたという。亡国の王女は貴族と結婚して娘、姉妹から見れば祖母を生んだ。

 曾祖母は国が消えたのちも歴史の波にさらされることなく、静かに一生を終えた。

 旧エルジア王国の文化で生まれ育った祖母にとって、亡くなった国への望郷の念はなく、ルーツの一つであったが、己の母のにじみ出る嘆きは覚えていた。

 貴族は曾祖母を政略結婚の駒としてではなく、敬意を持って丁重に扱い、孤立させることはなかったが、それでも曾祖母の中で時折湧き上がる望郷の念は消しがたく、娘におとぎ話のように聞かせた。

 太陽が沈む中、二人だけで大地を駆け抜ける恋の儚さ。星降る夜に((永久|とわ))の約束を誓う、愛の気高さ。

 精霊たちが住む森と、鱗の主が住む湖。羊の鳴き声と、土を蹴る馬のひづめ。

 果実の酒と大地の実り。風の匂いと草原のきらめき。

 娘たちの歌声と、吟遊詩人が奏でる弦の響き。今は亡き王国の物語。

 それらは娘の娘へと語り継がれ、さらにその娘、イオネラとアルマの姉妹にも語り継がれた。

 曾祖母も祖母も姉妹が生まれる前に亡くなったため、顔は写真だけでしか知らない。曾祖母の国も亡くなり、祖母の国も亡くなり、母の国も亡くなり、それでも人は生き続ける。

 姉妹が住んでいた国の名前はエルジア共和国。それもまた亡くなろうとしていたことに、当時の姉妹は気づかなかった。

「おばあ様はね、おじい様に最後まで恋をしていたんですって」

 イオネラは「恋ってどうやったら分かるの?」と母親に聞いてみた。

「その時になったら分かるのもあるし、ずっとあとになってから分かることもある」

 母親が真摯に答えてくれていたと分かったのは亡くなってからだったが、当時幼かったイオネラには曖昧過ぎる答えだった。

「よく分からない」

「そうね……相手をずっと見る、かな」

「それが恋? ジャンをずーっと見てるのも?」

 ジャンとは隣の家の犬のこと。人懐っこい雑種の犬だった。

「うーん、それは少し違うかも」

 イオネラは「えー?」とぐずったが、そのあとに父親が帰ってきたので、話はうやむやになった。

「??!」

 昔のことを思い出していると、アルマがイオネラのキュロットスカートのすそを引っ張ってきた。「次はお姉様ね」と楽し気な表情で言われる。

 見ればコゼットの番が終わり、タラップを降りてくるところだった。

「ううん、次はアルマ」

「いいの?」

「もちろん!」

 トリガーが「次はどちらですか?」と聞いてきたので、イオネラは即座に「アルマです」と答え、妹を前に押し出す。

 アルマがタラップに近づくと、トリガーはコゼットの時と同じように「足元に気をつけて」と言い、手を差し出した。イオネラはその光景を見守り、トリガーの穏やかな横顔を注視する。

 ああこれはと、イオネラはなにかを確信する。

 けして劇的ではない。ただほんの少し。わずかな心の引っかかりが、抜けない棘のようで。

 今ならお母様が言ったことが分かる。おじい様が言ったことも。

 これは、多分??。

 

END

 

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   背中の仲

 

 灯台戦争終結後もユージア大陸に残ったトリガーとカウントは、黙々と書類仕事をしていた。塵も積もれば山となる。空を飛ぶこと以外にも、定期的に書類の処理をしなければいけなかった。

 手を休めることなく、トリガーが「あのさあ」と隣の席のカウントに声をかける。

「そういう聞き方をする時は、たいていロクでもないことだな」

 カウントも書類から目を離さずに答える。

「よし分かった。ストレートに聞こう。フーシェンとはどうなってるの」

 結局手を休め、トリガーは顔をカウントのほうに向ける。

「どうって?」

 カウントも書類から目を離し、なにを言っているのか分からないという表情をした。

「要するに、一部で噂になっているので、隊長が代表で聞いてこいと突っつかれてる。オーケー?」

「なにもない。仲間。同僚。それ以上でもそれ以下でもない。オーケー?」

「あ、はい」

 カウントは「素直でよろしい」と一人うなずく。

「でも伯爵殿、回答としてはいまいちです」

 「そこな、そこ!」とカウントはトリガーを指差す。

「そういう一言をポロッと言っちゃうから、無実なのに懲罰部隊行きになったんじゃないのか?」

「でも、どこでそういう一言を言ったか覚えてない……」

 真剣にトリガーは悩み、腕を組んで天を仰いだ。

「だからだよ!」

 トリガーは「あー……」と顔をしかめる。

「政治で足を取られたんだから、気をつけろよ?」

 冤罪で懲罰部隊に放り込まれてもトリガーは腐ることなく、かといって周囲に喧嘩を売るわけでも、機械のようになるわけでもなく、普通にやっていたので、メンタルはしぶとい。カウントはそう思っていた。

 というより、空が大好きな大馬鹿野郎なので、むしろさまざまな状況をこなせる懲罰部隊での任務を楽しんでいるふうでもあった。仲間たちの死に直面しても、激しく動揺することはなかった。

 そういうところで力量の差を思い知らされ、感情のコントロールを徹底的にするトリガーが一番機であり、隊長になる適性があるのはもちろん、生き延びるために仲間以外の相手を倒し続けたサバイバル精神は、雑草とも言えた。

 正義と悪、敵と味方ではなく、主眼が生き残るかどうか。

「でも、それはそれ、これはこれで、メディア向きな公式回答を一つ……」

 あきれ顔で、カウントは「なんだよ。賭けの対象にでもなってるのか?」と聞く。

「それもあるし」

「あんのかよ!」

「聞いてこいと突っついてくるのが女性たちだったりするので」

 今度はカウントが「あー……」と顔をしかめた。心当たりはあった。一度気まぐれで、ずっと生やしていた髭を剃ったら、基地の一部の女性たちの反応が分かりやすいほどに変わった。

「で、隊長としてはどんな答えがご所望なのよ」

「白黒はっきりした答えがいいけど、そうじゃないんだろ?」

「戦友ってやつだよ。フーシェンなら背中を預けられる。戦場では大事なことだ。こういう答えなら納得するか?」

「……まあ、それなら引き下がってくれると思う」

 ようやく隊長から許しが出て、カウントは「やれやれだぜ」とため息をつく。

「恋するなら、直接聞いてくる度胸がないとな」

「そういう一言をポロッと言っちゃうから、懲罰部隊に行かされたんじゃないの?」

「余計な一言だって?」

「いやいや。女性を泣かせる罪作りな男ってこと」

 トリガーはフッと鼻で笑い、カウントも鼻で笑い返すと、書類の処理を再開した。しばらくたってから「あのさあ」と今度はカウントが言い、意味深な溜息をつく。

「ここに来て、思わせぶりな振りはやめない? 書類、まだ溜まってるんだし」

 少々嫌味の入ったトリガーの言葉を無視して、カウントは「キスしたことならある」と唐突に告白した。

「誰と」

「フーシェン」

 ガッと首を急激に横に振ると、トリガーは「いつ」と詰め寄る。

「退院する時」

「うっそ!」

「ほんと」

 最後の無人機との戦いで、国際軌道エレベーター内で胴体着陸したカウントは、重傷とはいわないが怪我をしたため、入院生活を送った。

 フーシェンがカウントの見舞いに足繁く((通|かよ))ったのはトリガーも知っていたが、関係が発展していたということまでは知らなかった。

 が、カウントからはそのあとの言葉がまったくなかったので、「で?」とトリガーは机を軽く叩きながら続きをうながした。

「お前、違和感満載のキスってしたことある?」

「なにそれ」

「ほら、もしかしたら恋したかもって思って、ムードが高まっていざキスしたら、すごく、身内だった時」

 適当な言葉が見つからず、トリガーは距離を置くと、「身内」とオウム返しをする。

「ストレートに言うなら、アソコが反応しない」

「それはストレート過ぎるな。意味分かるけど」

 そこで話が途切れたので、「で、お前はあるのか?」とカウントが聞く。

「それって、つまり……恋人とのキスじゃなくて、家族とのキスってこと?」

 オーシアでは地域にもよるが、家族間で口に軽いキス、あるいはキスの真似をすることもある。

「そう! 試しにキスしたら家族とのキスそのまんまだったから、恋愛に発展しなかったってわけ。それ言って通じると思うか?」

 トリガーは「思わない」と即答した。

「お、経験ある?」

「アビーとキスしたことならある」

 アビーことエイブリル・ミードは戦時中に廃棄同然の機体を復活させ、スクラップ・クイーンの異名を取った懲罰部隊の凄腕整備士。

 一瞬だけ((間|ま))があいたあと、「マジかよ!」と今度はカウントが驚く番だった。隣席という距離だが、慌ててカウントは椅子ごと近寄り、声を潜めて「それで!? どうなったんだよ!」と追及する。

「お前と同じ。すごく家族だった」

 トリガーはその時のことを思い出し、不可解という表情をする。

「妹がいたらあんな感じっていうの? すごく変だった」

「心と体のバランスが変?」

「そう! 相手を恋人と見なして準備万端でいったら、受け取った感覚が家族だったみたいな」

「それ!」

 二人は「分かるー!」と意気投合したあと、ハッと我に返る。

「これ、オフレコがいいよな?」

「それがいい」

 小声でこそこそと喋っていると、そこにタイミングよくイェーガーが「書類は終わったのか?」と現れる。

「まだです」

「見りゃ分かる」

「今日中とは言わんが、早くしろ。こういうのは溜まるとロクなことがない」

「了解」

「めんどくせえ…」

 トリガーとカウントは、ようやく書類仕事を再開した。

「それから、あまり大きな声で喋るなよ? 廊下に響いてたぞ」

 カウントが「イェーガー!?」と、自分たちの話を聞いたのかと遠回しに聞く。

「俺は恋の話はなにも聞いてない。いいな?」

 二人は声なき悲鳴を上げたあと、トリガーは顔をおおって天を仰ぎ、カウントは机に突っ伏した。

 

END

 

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   微妙な曖昧

 

「なあ、トリガーとはどうなっているんだ」

 戦闘機を整備している真っ最中のエイブリル・ミードことアビーのところに突然フーシェンが来て、ストレートに聞いてくる。さすがのエイブリルも整備の手が止まった。

「どうって、なにが」

「男女の仲かってこと」

「なにもない。パイロットと整備士。それだけだ」

 エイブリルは灯台戦争後、正式に軍属の整備士となった。

 戦時中にオーシア空軍に徴用された形とはいえ、一般人であるはずのエイブリルがどうやって軍の整備士になったのか。

 それはいろいろとあの手この手、エイブリル個人の人脈と、戦争中の経緯を取引材料にして駆け引きをした。

 彼女に相当有利に働いたらしい経緯を、フーシェンはイェーガーから知らないほうがいいと言われた。さらに「思った以上に政治ができるようだ」とささやかれる。

 エイブリルの亡くなった祖父が空軍中将だったこともあり、息を吸うように政治のやり取りを分かっているらしく、「いわば二世だよ」ということらしい。

 とにもかくにも軍属になったことで、オーシア軍は安堵のため息をついた。

 なにせ戦争中に、一般人を限りなくブラックに近いグレーの部署でこき使ったようなもので、十分過ぎるほどにスキャンダルだった。それが外に出ないだけでも((御|おん))の字。

「どうした。誰かに聞けってせっつかれたのか?」

「戦後のトリガーは人気があるからな。独身で英雄とくればいい物件だから、基地でも狙っている子たちがいる」

「ああ、そういう……」

 エイブリルは盛大なため息をついた。

「大馬鹿野郎の機体はあたしが整備するから、話す機会が多いってだけだ」

「そうか」

 あっさりとフーシェンは納得する。

 エイブリルはトリガーの機体の専属といっても良かった。今、整備している機体もトリガーの物だった。

 トリガーは機体の微妙なチューニングは、必ずエイブリルに相談する。

 エイブリルも声に出して言うわけではないが、無茶な飛び方をするトリガーの機体を整備できるのは自分だけ、という自負がにじみ出ている。

 そんな無言の信頼と特別さが、周囲の一部からは噂の的となった。

「あいつ、あれで結構無茶な要望を出してくるからな。聞いてやるこっちも大変だ」

 そう言うエイブリルの顔は優しい。そういうところなんだがとフーシェンは思ったが、口には出さない。

「それで? そういうそっちこそ、どうなってるんだ」

 今度はフーシェンが「どうって?」と聞き返した。

「カウントとの仲だよ。あたしと大馬鹿野郎より、そっちのほうが噂になってる」

「恋バナってやつか?」

「要は、こっちも聞けってせっつかれってるってこと」

 フーシェンは「なんだ」と笑う。

「おたがい大変だな」

「そっちがストレートに聞いてきたから、こっちもストレートに聞き返す。そういうことさ」

「こっちも、なにもない。背中を任せられる優秀な仲間。それだけだ」

「へぇ、そうかい」

 さっぱりと会話が終わり、切り上げどきと判断したフーシェンは「仕事中、邪魔したな」と、きびすを返そうとした。

「あのさっ」

 今までの余裕のある態度とは違い、エイブリルの口調は少しあせりを感じるもので、フーシェンは足を止めた。

「間違って、キス、したこともなかったのか?」

 フーシェンは内心驚くが、できるだけ表情には出さないよう努める。

「どうして」

「いや、その……」

 普段はすっぱりした物言いをするエイブリルだが、珍しく言葉を濁らせた。

「キスされた?」

「されたっていうか、したっていうか……」

 話の方向が急速に切り替わったので、フーシェンは音もなく、すすっとエイブリルの横に来る。

「一度だけあったんだよ」

「なにが」

「……キス」

「いつ」

「夜に整備してる時」

「それで?」

 エイブリルは苦み潰したような顔をする。結果はあまりよろしくないのは、フーシェンも察することができた。

「すごく、家族だった」

「家族、とは」

「……とは」

「うん」

 二人はしばしの間見つめ合うと、エイブリルは「じいちゃんや父さんとするみたいなやつ」と答える。

「家族」

「そう、家族」

 フーシェンは「ああ……」とようやく納得する。年上の男性との淡い恋かと思って、性的な意味を込めて触れ合ったら、まったく違うというギャップ。

「お互い馬鹿みたいな顔してさ。口直しにブラックコーヒー飲みながら、苦い苦い言って、機体のチューニングの話だ。ほら、あんたたちは今やアーセナルバードの代わりにあちこち飛んで、抑止力みたいになっているだろ? そういう話のほうがしっくり来る」

 エイブリルがずいぶんと饒舌になったので、トリガーとのキスの件は相当に動揺したのが、手に取るように分かった。

「一度恋人みたいなキスして戻りましたなんて、どうせ嘘だって言われる」

「言わないさ」

「あんたはな」

「……経験あるし」

「ほんとか!?」

 フーシェンはエイブリルより年上。

 とはいえ、恋愛経験があるかといえば、豊富ではないがそこそこ。数える程度にはある。

「カウントとな。一度」

「してたのか!」

「仲のいい弟とする感じだったよ」

「弟」

「……ああ」

 確かカウントのほうがフーシェンより年上のはず。

 エイブリルはそう記憶していたが、どうやらフーシェンの中では弟という位置付けだと分かり、一人納得する。

「カウントは昔の私を見ているようで、放っておけないんだ」

 ふわりとフーシェンの眼差しがやわらぐ。

「実力と理想をうまく処理できなくて、もがいて、ようやく分かって、今は飛べている。だから弟みたいってことだ」

 普段は姉御肌で強いフーシェンの過去がなんとなく垣間見え、さらに優しい表情で語る。

 噂になるのはそういうところなんだけどなとエイブリルは思うが、口に出たのは「そうか」という言葉だけだった。

「でも、弟みたいって言ったけど、やっぱりどっちかというと……親戚かな。だけど恋する相手でもなくて、一番信用できて??」

 言葉が途切れ、フーシェンが少し迷っていると、エイブリルが「キスしたくない」と引き継ぐ。

「そう、それ。説明が難しいな」

 友人以上だが恋人とも言えず、家族に近いがそれとはまた別で、とても曖昧。今のところ、戦友という単語が近いが、それもまた微妙に違うのでしっくりこない、不可思議な関係。

「ほんと、おたがい大変だな」

「そうだな」

 二人はしばし無言になる。

「休憩するか? コーヒーおごる」

 先にフーシェンが提案すると、エイブリルは「する」と乗った。

「でもコーヒーより紅茶がいいな。濃くて渋いやつ」

「それ紅茶って言うのか?」

「言うね」

 二人は笑いながら、一緒に歩き始めた。

 

END

 

-5ページ-

   後書き

 

ゾエの名前の元ネタは、実在した東ローマ帝国の女帝です。英語ではゾーイと呼ぶそうです。シラージはゲーム本編では大公国、公式サイトでは王国で、謎。

説明
ツイッターに投稿していた恋愛関係の小話を加筆修正してまとめた掌編集です。4本目は書き下ろし。それぞれの話の主人公はミハイ、イオネラ、トリガーとカウント、アビーとフーシェン。カップリングは男女で、ネタバレと捏造だらけなのでお気をつけて。10代のカウフー→http://www.tinami.com/view/1010218 イオネラの続きのようなもの→http://www.tinami.com/view/1041743 トリアビとカウフーの続きのようなもの→http://www.tinami.com/view/1055880
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