連載小説20
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「そいじゃ、また明日ねー」

 

私達は、駅で木谷さんと別れた。

木谷さんはこのまま終点まで行って、そこで別の路線に乗り換えるルート。

 

 

「木谷さんて、結構勢いのある子だねぇ」

「だね。いきなり『付いて来ていい?』とか言われた時は驚いたけど」

 ホームを降りてからは、二人だけのおなじみタイムだ。

「まぁ、私達が何年も付き合いがある分、追いつきたいんじゃない?」

「うーん、それはあるか…区別したり分け隔てしたりはないけど…」

 でも、同じくらいに、ていうのはあるよなぁ〜。

「でも、この段階で仲良くなれたんだし、気にしなくていいと思うんだけどねー」

「確かに、三年間続くと思えばね。といっても、人それぞれか、そこは」

 人それぞれ、この言葉は最強だと思う。という持論はともかく、

木谷さん的には色々気になるんだろうな。

「んじゃ、また明日ねー」

 改札をくぐって、別れの挨拶を。

「ん? 楓じゃん」

「ん?」

 不意に声を掛けられた楓。男の子の声?

「なんだ、雪じゃん」

「なんだってなんだよ。俺がいちゃ悪いのか?」

「雪君、お久〜」

 そこにいたのは学ラン姿の中学生。

「えりかサン、お久〜」

 軽く手を挙げて挨拶してくれたのは雪君。楓の弟だ。

「あんた、今帰り?」

「一応」

「一応って…寄り道したでしょ」

 一応。今まで雪君がそう言った時は、大体どっかで寄り道した時だ。

「ったく、早く帰りなさいっていつも言ってるでしょ…」

「中二にもなって姉貴の言いつけ守ってる奴なんていねーって。それより、

楓も帰りだろ? 護衛代、くれよな」

「…一緒に帰っただけで姉に護衛代と称してお小遣いをせびる弟…」

 すごい姉弟関係だ…

「言ってるだけで、渡した事はないけどね。こっちがお目付役みたいなもんだし。

んじゃ、また明日ね〜」

「おう、また明日〜。雪君も、道を踏み外すなよ〜」

「当然だろ? えりかサンこそ、変な男に引っかかるなよ〜」

 手短な会話と軽快な挨拶を交わして、楓姉弟と別れた。

 

「さて、帰りますか」

 

夕暮れ時の街並を、私はてくてく歩いて行った。

 

〜つづく〜

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第20回
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