英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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〜古戦場〜

 

「…………なるほどな。つまりお前は魔法が失敗ばかりしていた当時、”そちらの俺”が”娼館”に売って切り捨てる事を決めたユリーシャか。」

「ジェダル、何もそんな言い方をしなくても…………というか、”娼館”に売るなんて幾ら何でも酷いじゃないですか、ジェダル!」

説明を聞き終えた後に答えたジェダルの答えに気まずそうな表情で指摘したリリカはすぐに真剣な表情を浮かべてジェダルを睨み

「それは”そちらの俺”の話だから俺自身とは関係のない話だろうが。」

「……………………その、貴女は今も以前のこの身のように魔法が失敗するのでしょうか?」

リリカの言葉に対してジェダルは軽く流し、守護天使ユリーシャは辛そうな表情でユリーシャに訊ねた。

 

「いえ、新たなる主であるリィン様がこの身の為にリィン様と”契約”しているアイドス様自らがこの身に魔法が再び使えるようにしてくださったお陰で、もう魔法が失敗するような事はありません。」

「へ…………ア、”アイドス”って………まさかリィン君、アイドスさん――――――”慈悲の大女神アイドス”と契約しているの!?」

ユリーシャの説明を聞いたある事が気になったエステルは信じられない表情でリィンに訊ね

「ええ。――――――アイドス。」

「フフ、久しぶりね、エステル、ヨシュア、ミント。」

訊ねられたリィンはアイドスを召喚し、召喚されたアイドスはエステル達に微笑んだ。

「……………………」

「アイドスさんがフェミリンスさんみたいに、リィンさんの武器から…………!」

「まさか”碧の大樹”の件が終わった後、エステルのようにアイドスさんがリィンと”契約”していたなんて…………」

アイドスの登場にエステルは口をパクパクさせ、ミントとヨシュアは驚きの表情でアイドスを見つめた。

 

「え、えっと………そっちのアイドスだっけ?さっきエステルが”慈悲の大女神”って言っていたけど、もしかして貴女もフェミリンスや私と同じディル=リフィーナの”女神”なの…………?」

「ええ。――――――とはいっても私は現神(うつつかみ)の貴女やフェミリンスと違って、”古神(いにしえがみ)”だけどね。」

「ア、アハハ…………こうも次々と、”神”と出会えるなんて”神”の価値観がおかしくなりそうですね…………」

「そう?フィアがジェダル達の仲間になっている時点で”今更”だと思うけどね。」

フィアの質問に答えたアイドスの答えにリリカは苦笑し、フルーレティは静かな笑みを浮かべてリリカに指摘した。

 

「アイドス様のお陰でそちらのこの身も魔法が失敗しなくなったという事は…………まさかそちらのこの身はアイドス様に直接仕える天使に!?」

「ええ、改めてアイドス様に仕える天使として認めて頂いたお陰で、魔法が失敗しなくなる事に加えて、リィン様という新たなる主に仕える事になりました。フフッ、ちなみに”我が主”は既にこちらの世界で”英雄”として有名で、更に今回の戦争で活躍する事で”英雄”としての”箔”をつけて更なる飛躍を目指し、この身はそんな”我が主”を支える守護天使にして”英雄”たる我が主と一生を共にする女の一人としても認められていますし、更に”女神”であられるアイドス様にも直接仕えています。羨ましいでしょう?」

驚いている様子の守護天使ユリーシャの問いかけに答えたユリーシャは自慢げに胸を張って守護天使ユリーシャを挑発し

「うぐっ…………フッ、フフッ…………!それはこちらのセリフです。こちらの方のこの身は”我が主”に切り捨てられることなく、この身が再び魔法が使えるようになるまで待って頂いた上その為の協力までして頂きました。そして正式に生涯を共にする”守護天使”としての”契約”も結んでいる上、我が主が侍らせる女の一人として時折寵愛を頂いております。――――――”我が主”の慈悲深さを受ける事ができた上”娼婦”に落ちる事もなかったこの身の方がそちらにとって羨ましいのでは?」

対する守護天使ユリーシャは一瞬唸り声を上げた後すぐに気を取り直してユリーシャのように自慢げに胸を張ってユリーシャを挑発した。

「つまりそれは”今の我が主”を遠回しに侮辱している事になっていますよね…………!?」

「その言葉そっくりそのまま、お返し致します…………!」

二人のユリーシャは互いに睨み合い、その様子を見ていたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「ユ、ユリーシャ、そこまでにしておいてくれ。」

「お前もだ、ユリーシャ。」

そしてそれぞれの主であるリィンとジェダルは二人のユリーシャを宥め

「その…………何か色々とすみません。」

リィンはジェダルに謝罪した。

「それについてはお互い様だから謝罪する必要はない。――――――それよりも魔法の件を除いても色々と手間がかかる”ユリーシャ”をよく引き取る事にしたものだな?」

「わ、我が主!?それはそちらのこの身の話であって、この身自身の事ではありませんよね!?」

リィンに対して静かな表情で答えたジェダルの言葉を聞いた守護天使ユリーシャは焦った様子でジェダルに訊ねたが、ジェダルは無視していた。

 

「ハハ、俺からしたら天使のユリーシャと”契約”できるなんて光栄だと今でも思っていますよ?」

「我が主…………!フフッ、これが”前の我が主”にはなかった”今の我が主”の魅力の一つである謙虚な所です。羨ましいですか?」

「うぐぐぐ…………っ!」

ジェダルの指摘に苦笑しながら答えたリィンの答えに目を輝かせた後ユリーシャは再び守護天使ユリーシャを挑発し、挑発された守護天使ユリーシャは唸り声をあげながらユリーシャを睨み、その様子にその場にいる全員は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

(何で同じ存在なのに、あんなに仲悪そうな感じに見えるのかしら?もしかしてあれが”同族嫌悪”ってやつなのかしら?)

(彼女達の場合はそれはちょっと違うような気がするんだけど…………)

エステルの推測にヨシュアは冷や汗をかきながら指摘した。

「――――――エステル、リィン、少しいいか!?」

するとその時ロイドが仲間達と共に駆け寄ってエステルとリィンに声をかけた。

 

「そんなに慌てた様子でどうしたんだ、ロイド?」

「確かロイド君達はフェミリンスと一緒に念の為に”太陽の砦”に猟兵達が残っていないか、調べていたんじゃ…………」

「…………その”太陽の砦”自体に問題が発生したのよ…………」

「――――――現在”太陽の砦”が何らかの異空間と繋がった為、”太陽の砦”の中は”異界”と化しているのです。」

「な――――――」

「あ、あんですって〜!?」

そしてエリィとティオの説明を聞いて仲間達と共に血相を変えたリィンは絶句し、エステルは驚きの声を上げた。その後リィン達が急いで”太陽の砦”の中に入るとそこは完全に”異界”と化していた!

 

〜太陽の砦・異空間〜

 

「な、なんなの、これ!?」

「ミント達が以前”太陽の砦”に来た時と景色が全然違うよね!?」

「ああ…………どちらかというと”四輪の塔”の異空間や”影の国”に近いように見えるけど…………」

異界と化している太陽の砦の中を見回したエステルとミントは困惑し、ヨシュアは真剣な表情で考え込み

「お、お兄様、この景色ってなんだか”旧校舎”の最下層の時と似ていませんか…………?」

「それは俺も思った。まさかとは思うが――――――」

一方心当たりがあるセレーネの言葉に頷いたリィンが真剣な表情を浮かべたその時

 

―――『起動者』候補ノ来訪ヲ感知―――

 

「この声は…………」

「な、何なの今の声!?」

「恐らくはこの異空間を維持している”主”の声だと思うのですが…………」

謎の声が聞こえ、声を聞いたリィン達がそれぞれ驚いている中エリスは呆け、ユウナは驚きの声を上げ、セティは考え込んでいた。

 

――刻ハ至レリ―――コレヨリ『第二ノ試シ』ヲ執行スル―――

 

そして何もなかった場所に光の橋が現れて異空間に浮く足場へと渡れるようになった。

「さっきまで何もなかったのに、橋が…………!」

「ったく、さっきの声といい、この空間といい、マジでどうなってんだよ…………」

それを見たノエルは驚き、ランディは疲れた表情で溜息を吐き

「それよりもさっきの声は『起動者』と言っていたけど、まさかその『起動者』とは――――――」

ある推測をしたロイドはリィンに視線を向けた。

「ああ…………間違いなく『騎神』の『起動者』の事だと思う。」

「ヴァリマールさんを手に入れた時もこの空間のような異空間を攻略して、奥に待ち受けているこの空間の”主”を倒したのですわ。」

「つまりはこの異空間の奥に”主”と”騎神”が待っているという事ですか…………」

「でも、どうしてエレボニアの伝承の存在であった”騎神”がクロスベルに…………」

リィンとセレーネの説明を聞いたティオは真剣な表情で呟き、エリィは不安そうな表情で呟いた。

 

「…………そんな…………でも、どうして私なんかが…………」

「エリス?どうしたの?」

一方リィン達の話を聞いて信じられない表情で呟いたエリスの様子が気になったアルフィンはエリスに訊ね

「その…………実は兄様達が”黒の工房”の使い手達が撤退する様子を見て無念を感じている所を遠目で見えた時にも先程と同じ声が聞こえてきたんです…………」

「え…………」

「何だって!?それは本当なのか、エリス!?」

エリスの答えにエリゼは呆けた声を出し、リィンは血相を変えてエリスに訊ねた。

「は、はい…………『新”起動者”候補の波形を100アージュ以内に確認。これより”試しの場”を展開する』という内容の声が私の頭の中に響いたんです。」

「「な――――――」」

「おいおい、どう考えても”ただの偶然”とはとても思えないぜ?」

「ええ…………恐らくですがエリスさんがこの異空間の奥に待ち受けている”騎神”の…………」

「”起動者”の可能性が非常に高いかと。」

エリスの説明を聞いたリィンとエリゼはそれぞれ絶句し、疲れた表情で呟いたフォルデの言葉に頷いたステラは真剣な表情でエリスを見つめ、アルティナは静かな表情で呟いた。

 

「――――――ま、何はともあれ、早急にこの異空間を何とかする必要があるのだから、アルスターの民達の為にもさっさと攻略した方がいいんじゃないのか?」

「ヴァイスさん!それにリウイ達やセリカ達も…………!」

「どうして陛下達までこちらに…………」

するとその時リィン達の背後からヴァイス達が現れ、ヴァイス達に続くようにリウイ達とセリカ達も現れ、それを見たエステルは声を上げ、リィンは驚きの表情で呟いた。

「リアンヌが”太陽の砦”から”気になる気配”が感じると聞き、先程報告にあった”太陽の砦”に起こった”異変”を確認する意味でも来てみたのだが…………」

「この異空間は一体…………何となくですが”影の国”を思い返すような空間に見えますが…………」

「理由はわかりませんが、何らかの要因によって”太陽の砦”が”異界”と化したかと思われるのですが、一体何が要因で…………」

リウイの説明に続くように呟いたイリーナは困惑の表情で周囲を見回し、ペテレーネは考え込んでいた。

 

「――――――恐らくですが、”碧の大樹”――――――いえ、クロスベルが”零の至宝”による加護を受けられるようになった事でクロスベル一帯が霊力の高い一帯と化した事に加えて”起動者”現れた事で、”試練の場”をクロスベルに呼び寄せてしまったのでしょう。」

「しかも”太陽の砦”はクロスベルの霊力が高い場所の一つでもあるから、それもこの”異界化”の要因の一つかもしれないわね。」

「それは…………」

リアンヌとサティアの推測を聞いたロイドは複雑そうな表情をし

「それで肝心の”起動者”が誰なのか心当たりはあるのか?」

「…………それなのですが…………」

リウイの問いかけにリィンが複雑そうな表情を浮かべてエリスから聞いた話を説明した。

 

「まさかエリスさんが”起動者”に選ばれるなんて…………正直、信じられませんが…………」

「――――――だが状況から考えて、間違いなくこの異界の奥に眠る”騎神”の”起動者”はエリスなのだろう。その”声”とやらを最初に聞いたのはエリスとの事だしな。」

リィンの話を聞き終えたシグルーンは信じられない表情でエリスを見つめ、ゼルギウスは静かな表情で呟き

「それでこれからどうするつもりだ?」

「どうするも何も、この異界を攻略して新たなる”騎神”を手に入れればいいだけではないか!幸いにもこの場にはかつて”影の国”を攻略したメンフィル、クロスベルメンバーの一部やセリカ達が揃っている事に加えて、”影の国”の時と違ってゼルギウス達やロイド達、そしてリィン達もいる!なので、全員で協力してさっさと攻略すればいいだけじゃろ!」

「ま、リフィアならそう言うとだろうと思ったよ、キャハッ♪」

「予想はしていたがやはり、俺達も巻き込むつもりか…………」

「お姉様…………そんな簡単に言いますけど、”異界”の攻略をそんな手軽に攻略できるとは思えないのですが…………」

ジェダルの質問に答えたリフィアの答えにエヴリーヌが暢気に笑っている中セリカとプリネは呆れた表情で溜息を吐いた。

「そ、そうでしょうか?何気にこの場にはとんでもないメンバーが揃っていますから、案外あっさり攻略できるような気がしなくもないのですが…………」

「フッ、しかも結社最強の一人である”鋼の聖女”に加えて”鉄機隊”まで加勢すれば、正直この異界の”主”が”哀れ”に思えてくる気がするぞ。」

「フフン、珍しく意見が合いましたわね、No.U。私達に加えてマスターがいれば、”たかが異界如き”の攻略等朝飯前ですわ!」

一方冷や汗をかいて苦笑しながら答えたツーヤの推測に静かな笑みを浮かべて同意したレーヴェの言葉を聞いて自慢げに胸を張ったデュバリィの発言にその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。

 

「…………まあ、早急にこの異界を攻略せねばならない事については同意しますわ。」

「そうですね…………アルスターの民達の件がなくても、この異界化による影響がクロスベルの領土に何らかの影響を及ぼす可能性も十分に考えられるのですから、それが起こる前にこの”異界”を何とかしなければなりませんね。」

「そういう事だ。という訳でリウイ、悪いがこの異界の攻略にお前達の力も貸してもらってもいいか?」

気を取り直して答えたフェミリンスの意見にリセルは頷いて考え込み、ヴァイスはリウイに協力を頼み

「別に頼まれなくても元々そのつもりだ。この状況の打破の為には我が国の民であるエリスが必要不可欠の上、新たなる騎神を手に入れる事で我らメンフィルの戦力を増強する機会でもあるのだからな。」

「陛下…………」

「私のような者の為だけに、陛下達まで加勢してくださる事、心より感謝致します。」

ヴァイスの頼みに頷いて答えたリウイの説明にリィンは驚き、エリスはリウイに会釈をした。

 

「――――――ジェダル、早速で悪いがこの異空間の攻略に手を貸してもらうという内容の”依頼”を請けてもらえないか?戦力は多いに限るしな。”報酬”はそうだな…………一人10万ミラとして、お前達は5人いるから50万ミラでどうだ?」

「…………いいだろう。」

ヴァイスの依頼にジェダルは頷き

「ロイド、エステル。今この場でアルスターの民達の護送に続いて”緊急支援要請”並びに遊撃士協会に対する”依頼”を出そうと思うのだが、構わないか?」

「ええ、勿論構いません。」

「内容はアルスターの人達を匿う場所である”太陽の砦”に起こった”異変”の解決よね?そんなの依頼を出されなくても最初からそのつもりよ!」

ヴァイスに確認されたロイドは頷き、エステルは胸を張って答えた。

「よし…………――――――これより”太陽の砦”の異空間攻略を開始する!」

「ここにいる者達はいずれも精鋭揃い…………互いに協力し、早急の解決を目指すぞ!」

「おおっ!!」

そしてヴァイスとリウイはその場にいる全員に号令をかけ、二人の号令に力強く頷いた仲間達は異空間の攻略を開始した。

 

異界と化した太陽の砦内を徘徊する魔物や魔獣達はかつてリィン達が攻略した”煌魔城”を徘徊していた魔物達に匹敵、もしくはそれ以上の強さだったが、”煌魔城”の時とは比べ物にならないくらいの精鋭が揃っていた事に加えてメンフィル・クロスベル連合軍による支援もあった為、リィン達は凄まじい早さで攻略を進め、最奥に待ち構えていた”起動者”にとって”最後の試し”にして異空間の”主”である巨大な”影”も余裕をもって対処する事ができ、”止め”はエリスが刺した。

 

〜最奥〜

 

「今だ、エリス!」

「はい!氷の魔剣よ、私に力を!ハッ!ヤッ!ハァァァァァァ…………ッ!咲き誇れ――――――クリミナルブランド!!」

巨大な”影”にSクラフトを放って怯ませたリィンに呼びかけられたエリスは頷いた後レイピアに氷の魔力を纏わせた後一気に”影”に詰め寄って乱舞攻撃を叩き込み、止めに跳躍して氷の魔剣を解き放ち氷の華を”影”を中心に咲かせた。

「――――――!?」

エリスのSクラフトが”止め”となった事で”影”は咆哮を上げた!

 

コレニテ『最後ノ試シ』ヲ終了スル――――――”起動者”ヨ、心セヨ――――――コレナルハ”巨イナルチカラ”ノ欠片―――世界ヲ呑ミ込ム”焔(ホノオ)”ニシテ”顎(アギト)”ナリ――――――

 

そして咆哮を上げ終えた”影”が消滅すると、異空間も消え始め、異空間が消える最中にエリスの目の前に一瞬何かの文字が現れた後文字がエリスの身体へと入っていくと異空間は完全に消滅し、周囲の景色は最奥の元の場所である祭壇に戻った!

 

 

「ここは…………太陽の砦の最下層の最奥の”祭壇”か…………」

「え…………という事はここがロイド先輩達とヨアヒム・ギュンターとの決戦の地となった場所ですか………――――――え。」

「どうやら戻ってこれたようだな…………」

「ええ…………それに想定通りの存在もいるみたいね。」

ロイドが呟いた言葉を聞いたユウナは興味ありげな表情で周囲を見回した後ある物を見つけると呆けた声を出し、静かな表情で呟いたアイネスの言葉に頷いたエンネアがある方向に視線を向けると、そこにはユウナが思わず呆けた声を出す原因となった物――――――金色の機体が地面に膝をついていた!

「金色の…………騎神…………」

「…………エリス、”彼”の名前は知っているはずだよな?」

金色の機体を見つめたセレーネは呆けた表情で呟き、リィンはエリスに確認し

「…………はい。応えて――――――”金の騎神”エル・プラドー!!」

「応!!」

リィンの確認に頷いたエリスが金色の機体――――――”金の騎神”エル・プラドーの名を呼ぶと、エル・プラドーはエリスを自身の操縦席へと入れ、操縦席に入ったエリスがエル・プラドーを操作するとエル・プラドーは立ち上がった!

 

「エ、エリス!?もう、操縦ができるようになったの!?」

「は、はい。まるで身体が覚えてるみたいに動かせるのです…………」

その様子を見て驚いたアルフィンの問いかけにエリスは戸惑いの表情で答え

「俺の時と一緒だな…………ちなみにエリゼはどうだったんだ?」

「私もエリスの時のように、ヴァイスリッターの中に入った瞬間まるで自分の身体のように動かせるようになったのです。」

静かな表情で呟いたリィンに訊ねられたエリゼは頷いて答えた。

 

「ま、何はともあれメンフィルにとっては更なる戦力増強ができたようだな?」

「ああ。…………本格的に戦力とする為にはヴァリマールのように、エル・プラドー専用の武装も早急に用意する必要があるが…………――――――エリス、エル・プラドーに武装は搭載されているか?」

ヴァイスの言葉に頷いたリウイは考え込んだ後エリスに訊ね

「はい、どうやら最初から搭載されているみたいです。今お見せしますので少々お待ちください。」

訊ねられたエリスはエル・プラドーを操縦してエル・プラドーに最初から搭載されている騎士剣を構えた。

 

「あの形態は…………”騎士剣”か。」

「私やお父様と同じ細剣(レイピア)を得物としているエリスさんには少し合わない武装ね。」

「…………やはり、ヴァリマールのように武装の強化、改造が必要のようだな。――――――頼めるか、ディオン三姉妹。勿論報酬はヴァリマールの時のように相応の額を用意するつもりだ。」

レーヴェとプリネはエル・プラドーの武装を確認すると静かな表情で呟き、リウイは考え込んだ後セティ達に視線を向け、視線を向けられた三人は互いの視線を交わして頷いた後答えた。

「”工匠”としてその依頼、謹んで受けさせて頂きます。」

「ま、ヴァリマールの”太刀”を強化しておいて、エル・プラドーの武装を断る訳にはいかないもんね〜。」

「…………口を謹んでください、シャマーラ。…………支援課に帰ったらゼムリアストーンもそうですけど、改造の際に必要な他の鉱石の合成も早急にする必要がありそうですね…………」

「へ…………ちょ、ちょっと待ってくれ。エリナの口ぶりだと、まるでゼムリアストーンも人為的に作れるように聞こえたんだが…………もしかして、”工匠”って”ゼムリアストーンも作れるのか?”」

シャマーラに注意した後疲れた表情で溜息を吐いたエリナの言葉が気になったリィンはエリナに訊ねた。

 

「ええ、”ゼムリアストーンのレシピ”はお父様が”影の国”に巻き込まれた際に思いついてくれましたから、”匠貴”である私達でしたらお父様が思いついた合成技術で”ゼムリアストーンを人為的に作る事は可能です。”」

「ま、最低でも”匠範”クラスの”工匠”でないと作る事が許可されない難しい技術だから、それを簡単にする為の課題は残っているけどね〜。」

「”現在のゼムリア大陸の技術ではゼムリアストーンを人為的に作り出す事は不可能なはずのゼムリアストーンを人為的に作っている時点”で十分非常識だと思われるのですが。」

「ううっ、”精霊窟”でゼムリアストーンを集めていたわたくし達の苦労は何だったのでしょうね…………?」

「頼むから、それだけは言わないでくれ、セレーネ…………考えるだけでも虚しくなってくるから…………」

エリナとシャマーラの答えを聞いたアルティナはジト目で指摘し、セレーネとリィンは冷や汗をかいた後疲れた表情で肩を落とした。

 

「ア、アハハ…………それよりも”起動者”でしたか?それの基準は一体どういうものを基準にしているのでしょうね?」

リィン達の様子を見て冷や汗をかいて苦笑していたノエルはある疑問を口にし

「”神機”の”起動者”であるエリゼさんを除くとして、現在判明している”騎神”の”起動者”はリィンさん、エリスさん、黒の工房の”蒼のジークフリード”、西風の旅団の”猟兵王”…………確かにノエルさんの言う通り、一体何を基準にしているのかわかりませんね。」

「ああ…………4人には何の共通点も見当たらないしな…………」

ノエルの疑問を聞いたティオとロイドはそれぞれ考え込んだ。

 

「あの…………そこに付け加えさせて頂きますが実は内戦でその4体以外の”騎神”が存在している事が判明していますわ。ちなみにその騎神は”紅の騎神テスタロッサ”という名前で、”起動者”はわたくしの弟との事です。最も”紅の騎神”は他の”騎神”と違い、アルノール家の血を引く者が”起動者”の為、わたくしやお兄様も”紅の騎神”の”起動者”の可能性もあると思われますが…………」

「アルフィン殿下の弟君という事はセドリック皇太子殿下ですか………」

「しかもシャーリィの得物の名前と一緒とか、一体どうなってんだ?」

「単なる偶然とは思えませんよね…………?」

アルフィンの申し出を聞いたエリィは驚き、ランディは疲れた表情で呟き、ユウナは不安そうな表情で呟いた。

 

「…………――――――”騎神”は”紅”、”蒼”、”紫”、”灰”、”銀”、”金”、そして”黒”と全て合わせて7体存在しています。」

「”騎神”は7体…………”七の至宝(セプト=テリオン)”と同じ数であることを考えると、ひょっとしたら”至宝”と何か関係があるかもしれないね…………」

「そうですわね。特にエイドスあたりだったら、何か知っている可能性はありそうですわ。」

「ハア…………こりゃ一端リベールに戻ってエイドスを問い質す必要があるみたいね。――――――って、そういえば何でリアンヌさんが”騎神”が7体ある事を知っているの?」

リアンヌの答えを聞いたヨシュアとフェミリンスは考え込み、溜息を吐いたエステルはある事が気になり、リアンヌに訊ねた。

「――――――”シルフィアとしての意思が目覚める前の私”――――――つまり、”リアンヌ・サンドロッド”も”起動者”の一人だからです。顕現せよ――――――”銀の騎神”アルグレオン。」

「応!!」

エステルの問いかけに答えたリアンヌは自身の背後に銀色の機体――――――”銀の騎神”アルグレオンを現わさせた!

 

「な――――――」

「サ、サンドロッド卿も”起動者”の一人だなんて…………!」

「あれがマスターの”騎神”…………」

「話には聞いていたけど、こうして実際に見るのは初めてね…………」

「ああ…………まさにマスターに相応しい機体だな。」

アルグレオンの登場にリィンは絶句し、セレーネは信じられない表情で呟き、デュバリィは呆け、エンネアとアイネスは興味ありげな表情でアルグレオンを見つめた。

 

「そしてエリス嬢が”起動者”に選ばれた理由にも心当たりはあります。」

「え…………」

「…………サンドロッド卿、何故エリスは”起動者”に選ばれたのでしょうか?」

静かな表情で呟いたリアンヌの答えにその場にいる多くの者達が驚いている中エリスは呆け、エリゼは真剣な表情で訊ねた。

「恐らくですが彼女はあの”戦場”にいた人物の中で、誰よりも”力”を欲していたからかと。――――――実際にリアンヌ・サンドロッドやドライケルス皇帝が”騎神”の”起動者”として選ばれた理由は”獅子戦役”――――――いえ、エンド・オブ・ヴァーミリオンに勝てる”力”を心から願ったからでもあります。」

「”力”を…………」

「エ、エリスが”力”を…………!?その…………何かの間違いなのでは…………?」

「……………………いえ、姫様…………恐らくサンドロッド卿の仰る通りだと思います…………」

リアンヌの推測を聞いたリィンが考え込んでいる中アルフィンが戸惑いの表情で指摘したその時、光に包まれてエル・プラドーから降りたエリスが複雑そうな表情で答え

「え…………」

「…………今の話を聞いてどうしてそう思ったのかしら?」

エリスの答えを聞いたアルフィンは呆け、エリゼは真剣な表情で訊ねた。

 

「…………兄様が道を定めた時から、妹として兄様の背中を護る事が私の務めだと覚悟を決めたのですが…………私は”無力”でした。ユミルが襲撃された時は”蒼の深淵”の謀に気づかず姫様と共に拉致され、兄様達に助けられるまではずっとカレル離宮にユーゲント陛下達と共に幽閉され、内戦で辛い目に遭い続けながらも私の心配もして頂いた兄様に負担をかけてばかりでした。そんな無力な私に対して姉様は若輩でありながらもメンフィル帝国の時代の女帝であられるリフィア皇女殿下の専属侍女長として…………”剣聖”の一人として、クロスベルで起こった”異変”の解決に貢献し、そして私と兄様達がメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国との戦争勃発前にメンフィル帝国政府の判断でマルーダ城に待機させられた時も…………メンフィル皇家の方々の覚えめでたい姉様はご自身の人脈で、私達に色々と便宜を図る事ができる程の”力”がありますし…………セレーネは伝説上の存在――――――”竜”に秘められる”力”で内戦時は兄様を私と姉様の代わりに支え続けてくれました…………同じ”兄様の妹”として、私だけが無力だったのです…………」

「「エリス…………」」

「エリスお姉様…………」

「「………………………………」」

辛そうな表情で自身に秘めた心を口にしたエリスの話を聞いたリィンとエリゼ、セレーネはそれぞれ辛そうな表情でエリスを見つめ、エリスを誘拐した超本人であるアルティナやエリスとかつての自分が同じである事に気づいたデュバリィはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

「そしてアルスターの民達を護る為に、兄様達は”黒の工房”の使い手達と戦いましたが、逃がしてしまい…………その事に兄様が悔しがっているご様子を見て、私は改めて思ったんです…………私にも、姉様やセレーネのような険しい道を歩む兄様を支える事ができる”力”があれば…………と。そう思った時に、エル・プラドーの声が聞こえたんです…………」

「そうだったのか…………」

エリスの説明を聞いたリィンは静かな表情で呟き

「……………………エル・プラドー、こんな自分勝手で卑屈な私が貴方の”起動者”になって本当によかったのでしょうか…………?」

エリスは振り向いて辛そうな表情でエル・プラドーに問いかけた。

 

「我はエリスに”起動者”の”資格”があると判断し、”試練”を与え、エリスは”試練”を超えた為、エリスを我の”起動者”として認めた。そして”我自身”は例えどんな理由があろうとも、誰かを守りたいというエリスの気持ちは決して間違っているものではないと判断する。」

「エル・プラドー…………」

エル・プラドーの答えにエリスは目を丸くし

「――――――エリス。これは”鬼の力”に迷っていた俺に子爵閣下が向けた言葉なんだが…………――――――『力は所詮、力。使いこなせなければ意味はなく、ただ空しいだけのもの。だが――――在るものを否定するのもまた”欺瞞”でしかない。畏れと共に足を踏み出すがよい。迷ってこそ”人”――――立ち止まるより遥かにいいだろう。』…………それはエリスも同じなんだと思う。」

「ぁ…………」

リィンの言葉を聞くと呆けた表情を浮かべた。

 

「俺だって未だヴァリマールの”起動者”として相応しい事に自信が持てない。だから、これからはお互いの騎神にとって相応しい”起動者”になれるように、支え合い、時には迷ってくれないか?」

「兄様…………はい…………!」

リィンの言葉にエリスは呆けた後嬉しそうな表情で頷き

「貴女が抱えていた悩みに気づかなくて、ごめんね、エリス…………」

「わたくしもエリスお姉様と同じお兄様の妹として、エリスお姉様の悩みに気づけなくて、申し訳ございません…………」

「姉様…………セレーネ…………どうか、謝らないでください。お二人に相談しなかった私にも否があるのですから…………」

エリゼとセレーネにそれぞれ謝罪され、抱き締められたエリスは呆けた後二人の気遣いに感謝しつつ二人を抱き締め返した。

 

「やれやれ…………フム…………それにしても、”騎神”か。機会があれば――――――いや、今の内にせめてデータだけでも取っておくべきか?」

「エイダ様…………今の言葉で雰囲気がぶち壊しですの。」

「まあ、エイフェリアが壊さなくてもリセルが壊す可能性も十分考えられましたが。」

「アルちゃん!?私は”魔導巧殻”や”魔導操殻”の技術に興味があるのであって、エイフェリア元帥閣下と違って”騎神”の技術にはそれほど興味はありませんよ!?」

リィン達の様子を苦笑しながら見守った後興味ありげな表情でアルグレオンやエル・プラドーに視線を向けて呟いたエイフェリアの言葉にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中リューンはジト目で指摘し、静かな表情で呟いたアルの推測に驚いたリセルは反論し、その様子にその場にいる多くの者達が再び冷や汗をかいて脱力した。

 

「クク…………それにしても、これで7体中6体の”騎神”と”起動者”が判明した事になるが、残り一体はどういう状況なんだろうな?」

「残りの騎神…………”黒の騎神”ですか。既に6体の”騎神”が目覚めている以上、残り一体の騎神も目覚めて”起動者”がいる可能性は十分に考えられますよね。」

「フフ、鋭いですね。そちらの二人の仰る通り”黒の騎神”も既に目覚めていて、”起動者”も存在しています。」

エイフェリア達の様子を面白そうに見つめた後気を取り直してある疑問を口にしたフォルデの言葉を聞いたステラが考え込んでいるとリアンヌが答えを口にし、その答えを聞いたその場にいる多くの者達は驚いた。

「その口ぶりだと、”黒の騎神”の”起動者”も知っているのか?」

「はい。”黒の騎神”の名は”イシュメルガ”。”獅子戦役”、”ハーメルの惨劇”を始めとしたエレボニアの多くの人々の運命を狂わせた全ての”元凶”にして他の6騎とは別格の力を誇る”最強の騎神”。そして”起動者”はエレボニア稀代の宰相――――――”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンです。」

「!!」

そしてリウイに訊ねられたリアンヌは重々しい口調で驚愕の事実を口にし、その事実を知ったその場にいる多くの者達は驚愕の表情を浮かべた。その後リアンヌは”黒の騎神”について自身が知る限りの情報をその場にいる全員に伝えた。

 

こうして…………アルスターの民達は多くの英雄達の活躍によって、”第二のハーメル”の犠牲者になる運命から逃れる事ができ…………エリスは”黒の工房”や”結社”どころか、オズボーン宰相すらも予想できず、未だ把握していない”想定外の起動者”となった――――――

 

-2ページ-

 

という訳で予想通り?エリスがエル・プラドーの起動者になり、リィンパーティーが更に強化されちゃいましたwしかも、エル・プラドーの試練は哀れ、リィン達に加えて空、零・碧の主人公勢、幻燐陣営、魔導巧殻陣営、戦女神陣営、グラセスタ陣営という超過剰戦力によってさっさとクリアされ、ボスも3rd篇のフェミリンスの時も超える超過剰戦力によるタコ殴りの後にエリスに止めを刺されました(笑)それとお察しの通り端折ってはいますが、今回の話の最後でリィン達は本来なら閃4の終盤で知る事実を全て知る事になった為、リィン達はZ組と違って”全て知っている事になっています”。なお、エル・プラドーの試練の場のBGMは東亰ザナドゥのラストダンジョンのBGMである”Liberation Drive”だと思ってください♪次回からはZ組視点になり、しばらくZ組の話になる予定で、リィン達の視点になるのはメンフィル・クロスベル連合によるエレボニア征伐が本格的になる頃からです。リィンが主人公の話のはずなのに、Z組視点が多くなっている現状ですが、エレボニア征伐が始まれば逆にZ組視点の話は少なくなりますので、Z組視点の話が多いのは序盤である今の間だけの予定です。

説明
外伝〜想定外の起動者〜 後篇
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コメント
ジン様 認識を変えたのかもしれませんが、殺す気満々なのは変わっていないと思いますww(sorano)
リィンがオズパパについて知ったってことはオズパパにたいしての認識を変えたのかな? 実際は捨てたわけではなく守るための行動なわけだし(ジン)
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